31 / 44
第4章
確信、説得
しおりを挟む
「それは、本当なのですか?」
一人の男性が、ジョナスにそう問いかける。その言葉を聞いたシャノンはハッとしてジョナスを見つめた。
彼は、ただ無言でうなずいた。
(……ということは、まさか――)
シャノンの中で、一つの仮説が生まれる。
もしかしたら――いや、間違いない。
ニール・スレイドはフェリクス・ジェフリーなのだ。
(そうよ。いくらそっくりとは言っても、あそこまでそっくりなわけがないのよ……!)
彼の顔だけじゃない。背丈も、声も。それこそ――すべてが。彼を構成するすべてがフェリクスだった。
ただ唯一、目の色が違うだけ。
(目の色が違うのは、きっと何かがあったのだわ。そう、信じるしかない)
そう思い、シャノンがぎゅっと手のひらを握る。
そんなシャノンをキースがそっと見つめる。……彼の表情は、何処となくやるせなさのようなものが宿っているようだった。
「というわけだ。フェリクス殿下が何処にいらっしゃるかは、現状不明だ。だが、我々にとっての希望になることは、間違いない」
ジョナスのその宣言に、革命軍の面々が頷いた。
フェリクスは、唯一まともな王族だった。つまり、彼が生きていればこの国はまだ建て直すことが出来るのだ。
完全な崩壊を前にして、建て直す。それが出来るのならば、ゼロから国を作り上げるよりも、労力は少ない。
「全力でフェリクス殿下の捜索に当たれ。……それが、我々にできる唯一のことだ」
ジョナスはそう言って言葉を打ち切った。
だからこそ、シャノンはニールのことを進言しようとする。……だけど。
(でも、お父様が、信じてくださるとは限らないわ)
ニールがフェリクスだなんて。目の色が違うのだから、違う人物だと思うのが当然なのだ。
それに、証拠がない。シャノンの記憶だけでは、頼りないのは間違いない。
(……ニール様、いいえ、フェリクス殿下っ……)
どうすれば、どうすれば彼を救えるのだろうか?
頭の中がぐるぐると回って、必死に考える。けれど、答えは何一つとして出てこない。
「シャノン……」
ぐっと唇をかみしめていれば、ふと隣でキースが名前を呼んだのがわかった。
そのため、キースの方に視線を向ける。彼は、その目に不安を宿していた。
「……マレット伯」
かと思えば、キースはジョナスを呼ぶ。その言葉を聞いたためか、ジョナスがキースに視線を向けた。
「シャノンが、何か言いたいことがあるようです」
「……キース」
ジョナスの視線がシャノンに注がれる。
なので、シャノンはキースを恨みがましく見つめた。まだ、覚悟が決まっていなかったというのに。
「シャノン。言わなくちゃ、何も始まらないよ。大丈夫だよ。……僕は、何があってもシャノンを信じるから」
彼の力強い眼差しが、シャノンを射貫く。その所為なのか、シャノンは無意識のうちにごくりと息を呑んだ。
キースの目が、語れと言っている。
(そうよ。私には、真実を知る権利があるはずだわ)
それは、間違いないはずなのだ。だって、シャノンはいわば被害者なのだから。
「お父様」
そう思うからこそ、真剣な声音でジョナスのことを呼ぶ。彼は、眉間にしわを寄せていた。が、その目はシャノンに続けろと語っていた。
「先ほど申し上げました、ニール・スレイドという男性のことなのですが」
「……あぁ」
「私の予測が正しければ、彼がフェリクス・ジェフリー殿下だと思われます」
ジョナスをまっすぐに見つめて、シャノンが言い切る。
すると、ジョナスが目を見開いた。ジョナスだけではない、キースも。それこそ、ここにいる全員が目を見開いているはずだ。
「証拠は」
やはり、求められると思った。しかし、証拠などない。
「証拠は、ありません」
はっきりと、しっかりと。そう言い切る。だからなのだろうか、ジョナスが額を押さえる。
「話にならん。証拠がないと――」
そりゃそうだ。それは、わかる。そもそも、ジョナスはシャノンの父である以上に革命軍のリーダーなのだ。娘の意見を優先することは許されない立場である。
「それは、重々承知の上です」
だけど、今は引いちゃダメだ。引いてしまったら――もう二度と、ニールに。フェリクスに、会えなくなってしまうだろうから。
「ですが、私はそう思います。……ニール様とフェリクス殿下の容姿は、目の色以外そっくりなのです」
「……では、その目の色についてはどう説明をする」
ジョナスの鋭い視線がシャノンを射貫く。
この世に目の色を変える術などない。それすなわち――目の色とは生まれ持ったままということ。
「それは……その。なにかがあったとしか、答えられません」
視線を下げて、シャノンはそう言う。その声は徐々にしぼんでいく。
周囲の視線が、シャノンに集中している。それを理解しつつも、シャノンはぐっと手のひらを握った。
「でも、ですが」
「……シャノン」
「私は、彼とかかわって確信しました。あのお方は、フェリクス殿下です。……私が、私が保証します!」
もう、そう言うことしか出来なかった。
これで信じてもらえなければ、どうやっても信じてもらえないだろう。
(信じてもらえないのならば、私だけでも、フェリクス殿下をお救いする)
きっと彼が王国軍に身を置いているのも、名前を偽っているのも。訳があるのだ。
そう、シャノンは信じている。
一人の男性が、ジョナスにそう問いかける。その言葉を聞いたシャノンはハッとしてジョナスを見つめた。
彼は、ただ無言でうなずいた。
(……ということは、まさか――)
シャノンの中で、一つの仮説が生まれる。
もしかしたら――いや、間違いない。
ニール・スレイドはフェリクス・ジェフリーなのだ。
(そうよ。いくらそっくりとは言っても、あそこまでそっくりなわけがないのよ……!)
彼の顔だけじゃない。背丈も、声も。それこそ――すべてが。彼を構成するすべてがフェリクスだった。
ただ唯一、目の色が違うだけ。
(目の色が違うのは、きっと何かがあったのだわ。そう、信じるしかない)
そう思い、シャノンがぎゅっと手のひらを握る。
そんなシャノンをキースがそっと見つめる。……彼の表情は、何処となくやるせなさのようなものが宿っているようだった。
「というわけだ。フェリクス殿下が何処にいらっしゃるかは、現状不明だ。だが、我々にとっての希望になることは、間違いない」
ジョナスのその宣言に、革命軍の面々が頷いた。
フェリクスは、唯一まともな王族だった。つまり、彼が生きていればこの国はまだ建て直すことが出来るのだ。
完全な崩壊を前にして、建て直す。それが出来るのならば、ゼロから国を作り上げるよりも、労力は少ない。
「全力でフェリクス殿下の捜索に当たれ。……それが、我々にできる唯一のことだ」
ジョナスはそう言って言葉を打ち切った。
だからこそ、シャノンはニールのことを進言しようとする。……だけど。
(でも、お父様が、信じてくださるとは限らないわ)
ニールがフェリクスだなんて。目の色が違うのだから、違う人物だと思うのが当然なのだ。
それに、証拠がない。シャノンの記憶だけでは、頼りないのは間違いない。
(……ニール様、いいえ、フェリクス殿下っ……)
どうすれば、どうすれば彼を救えるのだろうか?
頭の中がぐるぐると回って、必死に考える。けれど、答えは何一つとして出てこない。
「シャノン……」
ぐっと唇をかみしめていれば、ふと隣でキースが名前を呼んだのがわかった。
そのため、キースの方に視線を向ける。彼は、その目に不安を宿していた。
「……マレット伯」
かと思えば、キースはジョナスを呼ぶ。その言葉を聞いたためか、ジョナスがキースに視線を向けた。
「シャノンが、何か言いたいことがあるようです」
「……キース」
ジョナスの視線がシャノンに注がれる。
なので、シャノンはキースを恨みがましく見つめた。まだ、覚悟が決まっていなかったというのに。
「シャノン。言わなくちゃ、何も始まらないよ。大丈夫だよ。……僕は、何があってもシャノンを信じるから」
彼の力強い眼差しが、シャノンを射貫く。その所為なのか、シャノンは無意識のうちにごくりと息を呑んだ。
キースの目が、語れと言っている。
(そうよ。私には、真実を知る権利があるはずだわ)
それは、間違いないはずなのだ。だって、シャノンはいわば被害者なのだから。
「お父様」
そう思うからこそ、真剣な声音でジョナスのことを呼ぶ。彼は、眉間にしわを寄せていた。が、その目はシャノンに続けろと語っていた。
「先ほど申し上げました、ニール・スレイドという男性のことなのですが」
「……あぁ」
「私の予測が正しければ、彼がフェリクス・ジェフリー殿下だと思われます」
ジョナスをまっすぐに見つめて、シャノンが言い切る。
すると、ジョナスが目を見開いた。ジョナスだけではない、キースも。それこそ、ここにいる全員が目を見開いているはずだ。
「証拠は」
やはり、求められると思った。しかし、証拠などない。
「証拠は、ありません」
はっきりと、しっかりと。そう言い切る。だからなのだろうか、ジョナスが額を押さえる。
「話にならん。証拠がないと――」
そりゃそうだ。それは、わかる。そもそも、ジョナスはシャノンの父である以上に革命軍のリーダーなのだ。娘の意見を優先することは許されない立場である。
「それは、重々承知の上です」
だけど、今は引いちゃダメだ。引いてしまったら――もう二度と、ニールに。フェリクスに、会えなくなってしまうだろうから。
「ですが、私はそう思います。……ニール様とフェリクス殿下の容姿は、目の色以外そっくりなのです」
「……では、その目の色についてはどう説明をする」
ジョナスの鋭い視線がシャノンを射貫く。
この世に目の色を変える術などない。それすなわち――目の色とは生まれ持ったままということ。
「それは……その。なにかがあったとしか、答えられません」
視線を下げて、シャノンはそう言う。その声は徐々にしぼんでいく。
周囲の視線が、シャノンに集中している。それを理解しつつも、シャノンはぐっと手のひらを握った。
「でも、ですが」
「……シャノン」
「私は、彼とかかわって確信しました。あのお方は、フェリクス殿下です。……私が、私が保証します!」
もう、そう言うことしか出来なかった。
これで信じてもらえなければ、どうやっても信じてもらえないだろう。
(信じてもらえないのならば、私だけでも、フェリクス殿下をお救いする)
きっと彼が王国軍に身を置いているのも、名前を偽っているのも。訳があるのだ。
そう、シャノンは信じている。
0
あなたにおすすめの小説
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる
奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。
両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。
それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。
夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる