【完結】【R18】囚われの令嬢は秘匿の王弟殿下に愛でられる

すめらぎかなめ

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第4章

確信、説得

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「それは、本当なのですか?」

 一人の男性が、ジョナスにそう問いかける。その言葉を聞いたシャノンはハッとしてジョナスを見つめた。

 彼は、ただ無言でうなずいた。

(……ということは、まさか――)

 シャノンの中で、一つの仮説が生まれる。

 もしかしたら――いや、間違いない。

 ニール・スレイドはフェリクス・ジェフリーなのだ。

(そうよ。いくらそっくりとは言っても、あそこまでそっくりなわけがないのよ……!)

 彼の顔だけじゃない。背丈も、声も。それこそ――すべてが。彼を構成するすべてがフェリクスだった。

 ただ唯一、目の色が違うだけ。

(目の色が違うのは、きっと何かがあったのだわ。そう、信じるしかない)

 そう思い、シャノンがぎゅっと手のひらを握る。

 そんなシャノンをキースがそっと見つめる。……彼の表情は、何処となくやるせなさのようなものが宿っているようだった。

「というわけだ。フェリクス殿下が何処にいらっしゃるかは、現状不明だ。だが、我々にとっての希望になることは、間違いない」

 ジョナスのその宣言に、革命軍の面々が頷いた。

 フェリクスは、唯一まともな王族だった。つまり、彼が生きていればこの国はまだ建て直すことが出来るのだ。

 完全な崩壊を前にして、建て直す。それが出来るのならば、ゼロから国を作り上げるよりも、労力は少ない。

「全力でフェリクス殿下の捜索に当たれ。……それが、我々にできる唯一のことだ」

 ジョナスはそう言って言葉を打ち切った。

 だからこそ、シャノンはニールのことを進言しようとする。……だけど。

(でも、お父様が、信じてくださるとは限らないわ)

 ニールがフェリクスだなんて。目の色が違うのだから、違う人物だと思うのが当然なのだ。

 それに、証拠がない。シャノンの記憶だけでは、頼りないのは間違いない。

(……ニール様、いいえ、フェリクス殿下っ……)

 どうすれば、どうすれば彼を救えるのだろうか?

 頭の中がぐるぐると回って、必死に考える。けれど、答えは何一つとして出てこない。

「シャノン……」

 ぐっと唇をかみしめていれば、ふと隣でキースが名前を呼んだのがわかった。

 そのため、キースの方に視線を向ける。彼は、その目に不安を宿していた。

「……マレット伯」

 かと思えば、キースはジョナスを呼ぶ。その言葉を聞いたためか、ジョナスがキースに視線を向けた。

「シャノンが、何か言いたいことがあるようです」
「……キース」

 ジョナスの視線がシャノンに注がれる。

 なので、シャノンはキースを恨みがましく見つめた。まだ、覚悟が決まっていなかったというのに。

「シャノン。言わなくちゃ、何も始まらないよ。大丈夫だよ。……僕は、何があってもシャノンを信じるから」

 彼の力強い眼差しが、シャノンを射貫く。その所為なのか、シャノンは無意識のうちにごくりと息を呑んだ。

 キースの目が、語れと言っている。

(そうよ。私には、真実を知る権利があるはずだわ)

 それは、間違いないはずなのだ。だって、シャノンはいわば被害者なのだから。

「お父様」

 そう思うからこそ、真剣な声音でジョナスのことを呼ぶ。彼は、眉間にしわを寄せていた。が、その目はシャノンに続けろと語っていた。

「先ほど申し上げました、ニール・スレイドという男性のことなのですが」
「……あぁ」
「私の予測が正しければ、彼がフェリクス・ジェフリー殿下だと思われます」

 ジョナスをまっすぐに見つめて、シャノンが言い切る。

 すると、ジョナスが目を見開いた。ジョナスだけではない、キースも。それこそ、ここにいる全員が目を見開いているはずだ。

「証拠は」

 やはり、求められると思った。しかし、証拠などない。

「証拠は、ありません」

 はっきりと、しっかりと。そう言い切る。だからなのだろうか、ジョナスが額を押さえる。

「話にならん。証拠がないと――」

 そりゃそうだ。それは、わかる。そもそも、ジョナスはシャノンの父である以上に革命軍のリーダーなのだ。娘の意見を優先することは許されない立場である。

「それは、重々承知の上です」

 だけど、今は引いちゃダメだ。引いてしまったら――もう二度と、ニールに。フェリクスに、会えなくなってしまうだろうから。

「ですが、私はそう思います。……ニール様とフェリクス殿下の容姿は、目の色以外そっくりなのです」
「……では、その目の色についてはどう説明をする」

 ジョナスの鋭い視線がシャノンを射貫く。

 この世に目の色を変える術などない。それすなわち――目の色とは生まれ持ったままということ。

「それは……その。なにかがあったとしか、答えられません」

 視線を下げて、シャノンはそう言う。その声は徐々にしぼんでいく。

 周囲の視線が、シャノンに集中している。それを理解しつつも、シャノンはぐっと手のひらを握った。

「でも、ですが」
「……シャノン」
「私は、彼とかかわって確信しました。あのお方は、フェリクス殿下です。……私が、私が保証します!」

 もう、そう言うことしか出来なかった。

 これで信じてもらえなければ、どうやっても信じてもらえないだろう。

(信じてもらえないのならば、私だけでも、フェリクス殿下をお救いする)

 きっと彼が王国軍に身を置いているのも、名前を偽っているのも。訳があるのだ。

 そう、シャノンは信じている。
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