39 / 44
第4章
プロポーズと宣言
しおりを挟む
「……え?」
シャノンの口から、素っ頓狂な声が漏れた。
その声を聞いたからなのか、フェリクスがくつくつと笑う。それに、無性に腹が立った。
「ど、どういうこと、ですか……?」
でも、今はそれよりも重要なことがある。
自分自身にそう言い聞かせ、シャノンはフェリクスをまっすぐに見つめる。彼は、その場に跪いた。
「ずっと、好きだったんだ」
「……え?」
「シャノンとかかわって、俺は今までにない感情を覚えた。……会えなくなって、生き返って、どれだけお前に会いたかったと思う?」
彼が唇の端を上げて、シャノンにそう問いかけてくる。……そんなもの、シャノンが知る由もない。
「し、知らない……」
「だろうな」
シャノンの回答に、フェリクスは異を唱えることはなかった。ただ、シャノンの手をぎゅっと握るだけだ。
かと思えば、シャノンのその傷だらけの手にちゅっと口づけを落としてきた。
その瞬間、シャノンの頬に熱が溜まる。
「ずっと、会いたかった。……ニールとして側に居たとき。本当は正体を明かしたくて仕方がなかったんだ」
「……それ、は」
「それに、シャノンにもっと触れたかった。……許されない立場だと、あきらめていたのにな」
肩をすくめたフェリクスがそう言って、シャノンの手を包み込む。彼の真っ赤な目が、シャノンを射貫く。
……返事を、待っている。
それは、シャノンにもわかった。
「わ、たしは……」
自分の声は、驚くほどに震えていた。
シャノンがフェリクスを見つめ返す。彼は、期待している。
それに気がついた瞬間……シャノンの目から、はらりと涙が零れた。
「わ、私も、好き……」
「……シャノン」
「フェリクス殿下が、好きですっ……!」
もう叶わないと思っていた恋。けれど、それは叶ってくれた。……あきらめざる終えないと思っていたのに。
「シャノン、嬉しい」
彼がはにかむ。その表情さえ愛おしくて、シャノンはまた涙を零した。
「ずっと、私も好きでした。……あきらめなくちゃって、思ってたのに」
「……あぁ」
「フェリクス殿下が亡くなったと聞いたとき、私はもう二度と恋をしないと決めたくらいに、好きだったんです」
はらはらと涙を零しながら、シャノンはそう告げる。革命が始まって以来、泣くことは滅多になかった。なのに、今は涙があふれて止まらない。……悲しいからじゃない。嬉しいからだ。
「けれど、ニール様に恋をしていました」
「……そうか」
「私は、二度あなたさまに恋に落ちたのです」
頬を伝う涙を拭うことなく、シャノンはフェリクスをじっと見つめ、そう言い切った。
そうしていれば、フェリクスの手がシャノンの頬に伸びる。彼の指が、シャノンの涙をすくい上げた。
「私で、よろしければ……あなたさまの、妃にしてくださいませんか?」
「あぁ。生涯、シャノンだけを愛すると誓う」
彼がはっきりとそう言ってくれる。それに、どうしようもない幸福感が胸を包んだ。
じぃんと胸が熱くなって、シャノンがまた涙を零す。
「ったく、泣き虫だな。……そんなんじゃ、今後大変だぞ」
フェリクスがほんの少しのからかいを含んだような声音で、そう言ってきた。
だからこそ、シャノンは涙を零しながら笑った。
「フェリクス殿下の前で、だけです。……あなたさまは、私にとって特別だから」
はにかみながらそう言い切れば、フェリクスの頬に微かに朱が差した。
……どうやら、彼は照れているらしい。
「あぁっ、もうっ! 本当に、シャノンは……」
フェリクスが自身の口元に手を当てながら、そう零す。
言葉や口調とは裏腹に、とても嬉しそうな表情だった。
(あぁ、好き。……私は、このお方が本当に愛おしい――)
心の中でそれを再認識していれば、フェリクスの視線が側に居たジョナスに向けられた。
ジョナスは、仏頂面だった。そして、フェリクスのことを睨みつけている。その姿は、大層怖い。
「マレット伯。……シャノンを、妻にもらう許可をいただけますか?」
フェリクスが真剣にジョナスにそう問いかける。そうすれば、ジョナスは露骨に舌打ちをした。
「あぁ、勝手にしろ。……ただし、シャノンを不幸にしたら許さないからな」
「……肝に銘じておきます」
フェリクスのその言葉を聞いたジョナスが、何処かに歩いていく。かと思えば、革命軍を集めた。側に居た市民は、何事かとこちらに集まってきている。
「今、ここに革命が成功したことを宣言する!」
高らかな声で、ジョナスがそう宣言する。その瞬間――革命軍や民たちが、湧いた。
「諸悪の根源となったアントニー・トゥーミー、さらには愚王ヘクター・ジェフリーの処遇に関しては、追々告知するが、今は革命が成功したことを祝おうじゃないか!」
ジョナスのその言葉に――また、大きな歓声が沸いた。
やはり、誰もがヘクターやアントニーに不満を抱いていたのだ。
それを、シャノンは実感する。……自分が頑張ってきたこの年月は、無駄じゃなかったのだ。
「……シャノン」
ふと声をかけられ、そちらに視線を向ける。フェリクスは、立ち上がりシャノンを見つめていた。本当に、愛おしいとばかりの表情で。眼差しで。シャノンを、見つめている。
「……はい」
「好きだ。……本当に、愛している」
彼が真剣な態度で、声音で。はっきりとそう告げてくる。
だからこそ――シャノンは、笑った。
「私も、好きです。愛しています」
「……あぁ」
「共に、この国を建て直しましょう」
つながれた手に力を込めて、シャノンがそう言い切る。フェリクスは、シャノンのその言葉を否定することはなかった。
どちらともなく視線を民たちに向ける。彼らは湧きたっていた。
きっと、もうじき国中に革命が成功したことが伝わるだろう。
(今後はもっと大変だわ。……でも、フェリクス殿下とならば、どうとでもなりそう)
ちらりと隣を見上げれば、彼は真剣な眼差しで湧きたつ民たちを見つめていた。
その目が、どうしようもないほどに好きだと。シャノンは、実感した。
シャノンの口から、素っ頓狂な声が漏れた。
その声を聞いたからなのか、フェリクスがくつくつと笑う。それに、無性に腹が立った。
「ど、どういうこと、ですか……?」
でも、今はそれよりも重要なことがある。
自分自身にそう言い聞かせ、シャノンはフェリクスをまっすぐに見つめる。彼は、その場に跪いた。
「ずっと、好きだったんだ」
「……え?」
「シャノンとかかわって、俺は今までにない感情を覚えた。……会えなくなって、生き返って、どれだけお前に会いたかったと思う?」
彼が唇の端を上げて、シャノンにそう問いかけてくる。……そんなもの、シャノンが知る由もない。
「し、知らない……」
「だろうな」
シャノンの回答に、フェリクスは異を唱えることはなかった。ただ、シャノンの手をぎゅっと握るだけだ。
かと思えば、シャノンのその傷だらけの手にちゅっと口づけを落としてきた。
その瞬間、シャノンの頬に熱が溜まる。
「ずっと、会いたかった。……ニールとして側に居たとき。本当は正体を明かしたくて仕方がなかったんだ」
「……それ、は」
「それに、シャノンにもっと触れたかった。……許されない立場だと、あきらめていたのにな」
肩をすくめたフェリクスがそう言って、シャノンの手を包み込む。彼の真っ赤な目が、シャノンを射貫く。
……返事を、待っている。
それは、シャノンにもわかった。
「わ、たしは……」
自分の声は、驚くほどに震えていた。
シャノンがフェリクスを見つめ返す。彼は、期待している。
それに気がついた瞬間……シャノンの目から、はらりと涙が零れた。
「わ、私も、好き……」
「……シャノン」
「フェリクス殿下が、好きですっ……!」
もう叶わないと思っていた恋。けれど、それは叶ってくれた。……あきらめざる終えないと思っていたのに。
「シャノン、嬉しい」
彼がはにかむ。その表情さえ愛おしくて、シャノンはまた涙を零した。
「ずっと、私も好きでした。……あきらめなくちゃって、思ってたのに」
「……あぁ」
「フェリクス殿下が亡くなったと聞いたとき、私はもう二度と恋をしないと決めたくらいに、好きだったんです」
はらはらと涙を零しながら、シャノンはそう告げる。革命が始まって以来、泣くことは滅多になかった。なのに、今は涙があふれて止まらない。……悲しいからじゃない。嬉しいからだ。
「けれど、ニール様に恋をしていました」
「……そうか」
「私は、二度あなたさまに恋に落ちたのです」
頬を伝う涙を拭うことなく、シャノンはフェリクスをじっと見つめ、そう言い切った。
そうしていれば、フェリクスの手がシャノンの頬に伸びる。彼の指が、シャノンの涙をすくい上げた。
「私で、よろしければ……あなたさまの、妃にしてくださいませんか?」
「あぁ。生涯、シャノンだけを愛すると誓う」
彼がはっきりとそう言ってくれる。それに、どうしようもない幸福感が胸を包んだ。
じぃんと胸が熱くなって、シャノンがまた涙を零す。
「ったく、泣き虫だな。……そんなんじゃ、今後大変だぞ」
フェリクスがほんの少しのからかいを含んだような声音で、そう言ってきた。
だからこそ、シャノンは涙を零しながら笑った。
「フェリクス殿下の前で、だけです。……あなたさまは、私にとって特別だから」
はにかみながらそう言い切れば、フェリクスの頬に微かに朱が差した。
……どうやら、彼は照れているらしい。
「あぁっ、もうっ! 本当に、シャノンは……」
フェリクスが自身の口元に手を当てながら、そう零す。
言葉や口調とは裏腹に、とても嬉しそうな表情だった。
(あぁ、好き。……私は、このお方が本当に愛おしい――)
心の中でそれを再認識していれば、フェリクスの視線が側に居たジョナスに向けられた。
ジョナスは、仏頂面だった。そして、フェリクスのことを睨みつけている。その姿は、大層怖い。
「マレット伯。……シャノンを、妻にもらう許可をいただけますか?」
フェリクスが真剣にジョナスにそう問いかける。そうすれば、ジョナスは露骨に舌打ちをした。
「あぁ、勝手にしろ。……ただし、シャノンを不幸にしたら許さないからな」
「……肝に銘じておきます」
フェリクスのその言葉を聞いたジョナスが、何処かに歩いていく。かと思えば、革命軍を集めた。側に居た市民は、何事かとこちらに集まってきている。
「今、ここに革命が成功したことを宣言する!」
高らかな声で、ジョナスがそう宣言する。その瞬間――革命軍や民たちが、湧いた。
「諸悪の根源となったアントニー・トゥーミー、さらには愚王ヘクター・ジェフリーの処遇に関しては、追々告知するが、今は革命が成功したことを祝おうじゃないか!」
ジョナスのその言葉に――また、大きな歓声が沸いた。
やはり、誰もがヘクターやアントニーに不満を抱いていたのだ。
それを、シャノンは実感する。……自分が頑張ってきたこの年月は、無駄じゃなかったのだ。
「……シャノン」
ふと声をかけられ、そちらに視線を向ける。フェリクスは、立ち上がりシャノンを見つめていた。本当に、愛おしいとばかりの表情で。眼差しで。シャノンを、見つめている。
「……はい」
「好きだ。……本当に、愛している」
彼が真剣な態度で、声音で。はっきりとそう告げてくる。
だからこそ――シャノンは、笑った。
「私も、好きです。愛しています」
「……あぁ」
「共に、この国を建て直しましょう」
つながれた手に力を込めて、シャノンがそう言い切る。フェリクスは、シャノンのその言葉を否定することはなかった。
どちらともなく視線を民たちに向ける。彼らは湧きたっていた。
きっと、もうじき国中に革命が成功したことが伝わるだろう。
(今後はもっと大変だわ。……でも、フェリクス殿下とならば、どうとでもなりそう)
ちらりと隣を見上げれば、彼は真剣な眼差しで湧きたつ民たちを見つめていた。
その目が、どうしようもないほどに好きだと。シャノンは、実感した。
1
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!!
打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる