【完結】【R18】囚われの令嬢は秘匿の王弟殿下に愛でられる

すめらぎかなめ

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第4章

プロポーズと宣言

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「……え?」

 シャノンの口から、素っ頓狂な声が漏れた。

 その声を聞いたからなのか、フェリクスがくつくつと笑う。それに、無性に腹が立った。

「ど、どういうこと、ですか……?」

 でも、今はそれよりも重要なことがある。

 自分自身にそう言い聞かせ、シャノンはフェリクスをまっすぐに見つめる。彼は、その場に跪いた。

「ずっと、好きだったんだ」
「……え?」
「シャノンとかかわって、俺は今までにない感情を覚えた。……会えなくなって、生き返って、どれだけお前に会いたかったと思う?」

 彼が唇の端を上げて、シャノンにそう問いかけてくる。……そんなもの、シャノンが知る由もない。

「し、知らない……」
「だろうな」

 シャノンの回答に、フェリクスは異を唱えることはなかった。ただ、シャノンの手をぎゅっと握るだけだ。

 かと思えば、シャノンのその傷だらけの手にちゅっと口づけを落としてきた。

 その瞬間、シャノンの頬に熱が溜まる。

「ずっと、会いたかった。……ニールとして側に居たとき。本当は正体を明かしたくて仕方がなかったんだ」
「……それ、は」
「それに、シャノンにもっと触れたかった。……許されない立場だと、あきらめていたのにな」

 肩をすくめたフェリクスがそう言って、シャノンの手を包み込む。彼の真っ赤な目が、シャノンを射貫く。

 ……返事を、待っている。

 それは、シャノンにもわかった。

「わ、たしは……」

 自分の声は、驚くほどに震えていた。

 シャノンがフェリクスを見つめ返す。彼は、期待している。

 それに気がついた瞬間……シャノンの目から、はらりと涙が零れた。

「わ、私も、好き……」
「……シャノン」
「フェリクス殿下が、好きですっ……!」

 もう叶わないと思っていた恋。けれど、それは叶ってくれた。……あきらめざる終えないと思っていたのに。

「シャノン、嬉しい」

 彼がはにかむ。その表情さえ愛おしくて、シャノンはまた涙を零した。

「ずっと、私も好きでした。……あきらめなくちゃって、思ってたのに」
「……あぁ」
「フェリクス殿下が亡くなったと聞いたとき、私はもう二度と恋をしないと決めたくらいに、好きだったんです」

 はらはらと涙を零しながら、シャノンはそう告げる。革命が始まって以来、泣くことは滅多になかった。なのに、今は涙があふれて止まらない。……悲しいからじゃない。嬉しいからだ。

「けれど、ニール様に恋をしていました」
「……そうか」
「私は、二度あなたさまに恋に落ちたのです」

 頬を伝う涙を拭うことなく、シャノンはフェリクスをじっと見つめ、そう言い切った。

 そうしていれば、フェリクスの手がシャノンの頬に伸びる。彼の指が、シャノンの涙をすくい上げた。

「私で、よろしければ……あなたさまの、妃にしてくださいませんか?」
「あぁ。生涯、シャノンだけを愛すると誓う」

 彼がはっきりとそう言ってくれる。それに、どうしようもない幸福感が胸を包んだ。

 じぃんと胸が熱くなって、シャノンがまた涙を零す。

「ったく、泣き虫だな。……そんなんじゃ、今後大変だぞ」

 フェリクスがほんの少しのからかいを含んだような声音で、そう言ってきた。

 だからこそ、シャノンは涙を零しながら笑った。

「フェリクス殿下の前で、だけです。……あなたさまは、私にとって特別だから」

 はにかみながらそう言い切れば、フェリクスの頬に微かに朱が差した。

 ……どうやら、彼は照れているらしい。

「あぁっ、もうっ! 本当に、シャノンは……」

 フェリクスが自身の口元に手を当てながら、そう零す。

 言葉や口調とは裏腹に、とても嬉しそうな表情だった。

(あぁ、好き。……私は、このお方が本当に愛おしい――)

 心の中でそれを再認識していれば、フェリクスの視線が側に居たジョナスに向けられた。

 ジョナスは、仏頂面だった。そして、フェリクスのことを睨みつけている。その姿は、大層怖い。

「マレット伯。……シャノンを、妻にもらう許可をいただけますか?」

 フェリクスが真剣にジョナスにそう問いかける。そうすれば、ジョナスは露骨に舌打ちをした。

「あぁ、勝手にしろ。……ただし、シャノンを不幸にしたら許さないからな」
「……肝に銘じておきます」

 フェリクスのその言葉を聞いたジョナスが、何処かに歩いていく。かと思えば、革命軍を集めた。側に居た市民は、何事かとこちらに集まってきている。

「今、ここに革命が成功したことを宣言する!」

 高らかな声で、ジョナスがそう宣言する。その瞬間――革命軍や民たちが、湧いた。

「諸悪の根源となったアントニー・トゥーミー、さらには愚王ヘクター・ジェフリーの処遇に関しては、追々告知するが、今は革命が成功したことを祝おうじゃないか!」

 ジョナスのその言葉に――また、大きな歓声が沸いた。

 やはり、誰もがヘクターやアントニーに不満を抱いていたのだ。

 それを、シャノンは実感する。……自分が頑張ってきたこの年月は、無駄じゃなかったのだ。

「……シャノン」

 ふと声をかけられ、そちらに視線を向ける。フェリクスは、立ち上がりシャノンを見つめていた。本当に、愛おしいとばかりの表情で。眼差しで。シャノンを、見つめている。

「……はい」
「好きだ。……本当に、愛している」

 彼が真剣な態度で、声音で。はっきりとそう告げてくる。

 だからこそ――シャノンは、笑った。

「私も、好きです。愛しています」
「……あぁ」
「共に、この国を建て直しましょう」

 つながれた手に力を込めて、シャノンがそう言い切る。フェリクスは、シャノンのその言葉を否定することはなかった。

 どちらともなく視線を民たちに向ける。彼らは湧きたっていた。

 きっと、もうじき国中に革命が成功したことが伝わるだろう。

(今後はもっと大変だわ。……でも、フェリクス殿下とならば、どうとでもなりそう)

 ちらりと隣を見上げれば、彼は真剣な眼差しで湧きたつ民たちを見つめていた。

 その目が、どうしようもないほどに好きだと。シャノンは、実感した。
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