【R18】悪魔な幼馴染から逃げ切る方法。

すめらぎかなめ

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第4章

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 縫い付けられたみたいに、脚が動かなくなった。

 どうしてここにいるんだろうとか。やばいところを見られたとか。

 思うことはいろいろあるけど、なに一つとして言葉にはならない。

 呆然とする俺を現実に引き戻したのは、奏輔だ。奏輔は俺に自身の身体を密着させる。しかし、伝わってくる体温は安心ではなく、恐怖を与えてくる。

「祈?」

 奏輔の言葉に反応することもできず、じっともめているところを見つめていた。

「だから、言ってるだろ――」

 声を荒げたその男の目がこちらを向いた。大きく見開かれた瞳には、驚愕の色が宿っている。

 心臓が大きく音を鳴らした。嫌な汗が背中を伝う。

 足音を立てながら、近づいてくる男。俺は動けない。

「あ、れい」

 口が勝手にそいつの名前を呼んだ。

 同時に男――亜玲の手が、俺の両肩をつかんだ。

 指が食い込むほど強い力に、顔をしかめる。

「――ちょっと、こっち来て」

 亜玲は俺の腕をつかんで、引っ張っていく。強引にレストランから連れ出され、たどり着いたのはエレベーターホール。

「……なんで、奏輔といるの」

 迫力のある声で問われた。

 どう、答えたらいいのだろう。というか、そもそも――。

「お前こそ、どうしてここにいるんだよ」

 手を振り払って、亜玲に尋ねる。亜玲のペースに巻き込まれないように、強気な態度を徹底しなくては。

「俺のあとつけてきたの? だったら、趣味悪いよ、お前」

 亜玲をにらみつける。対する亜玲は、上着のポケットからスマホを取り出した。

 少し操作して、俺に画面を見せてくる。液晶に映っていたのは――俺だった。

(これって、隠し撮り?)

 俺の目線はよそを向いていた。完全に隠し撮りだ。

 そして、背景に映っているのは――今日訪れたファミレスだ。

「祈ってほんと不用心。もっとあたりを警戒したほうがいいよ」

 ため息交じりの言葉に、カチンとくる。

 だって、隠し撮りするほうが悪いのに。自分を棚に上げて、俺を責めるなんて。

「言っとくけど、これ、俺が撮ったわけじゃないよ。俺に送られてきたものだから」
「……は? 一体だれが」

 ――と思ったけど、心当たりはあった。たぶん、この写真の送信主は。

「写真と、このホテルの住所が送られてきた。ご丁寧に『楽しんでくるね』ってメッセージ付きでね」

 亜玲の視線が俺の後ろに向いた。振り返ると、壁にもたれかかって一人の男が立っている。奏輔だ。

「……どういうつもり」

 亜玲が奏輔に向けた声は、低かった。

「こんなの送ってきて、本当に気分悪い」
「でも、俺についてくるって決めたのは祈だし。俺は丁寧に教えてあげたんだから、感謝してよ」

 奏輔はにこにこと笑みを浮かべて、こちらに近づいてくる。俺の肩に腕を回して、顔を近づけてきた。

「っていうか、亜玲と祈って付き合ってるの? 恋人でも番でもないなら、束縛する理由なくない?」

 その言葉に亜玲の肩が跳ねた。

「祈がだれとどこで過ごそうが、勝手だよね。いちいち亜玲に報告する義務なんてない」

 明らかな挑発だ。普段の亜玲なら、見え見えの挑発には引っ掛からない。

 ただ、亜玲は奏輔にはめっぽう弱い。この男のことになると、いつもの亜玲は消えてしまう。

 感情のストッパーが壊れたみたいに、奏輔に突っかかっていく。

「だったとしても、祈は俺のだから」

 亜玲が奏輔と俺を引きはがす。そのまま、奏輔の胸倉をつかんだ。

「祈は俺のなの。俺と一緒にいてくれないと――」
「いてくれないと、なに?」

 一瞬、亜玲が言葉に詰まった。その隙を見逃すような奏輔ではない。

「それはしょせん、亜玲の都合でしょ。祈の意思はどこにあるの? 人には自由がある。自分勝手に縛り付けるなんて、よくないよね」

 冷静さを欠いた亜玲と、淡々と言葉をつむぐ奏輔は対象的だ。

 感情をあらわにする亜玲と、感情を一切見せない奏輔。

 苦しそうな亜玲と、楽しそうな奏輔。

 余裕のなさそうな亜玲と、余裕たっぷりの奏輔。

 真逆の異母兄弟は、じっとにらみ合っていた。
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