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第4章
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縫い付けられたみたいに、脚が動かなくなった。
どうしてここにいるんだろうとか。やばいところを見られたとか。
思うことはいろいろあるけど、なに一つとして言葉にはならない。
呆然とする俺を現実に引き戻したのは、奏輔だ。奏輔は俺に自身の身体を密着させる。しかし、伝わってくる体温は安心ではなく、恐怖を与えてくる。
「祈?」
奏輔の言葉に反応することもできず、じっともめているところを見つめていた。
「だから、言ってるだろ――」
声を荒げたその男の目がこちらを向いた。大きく見開かれた瞳には、驚愕の色が宿っている。
心臓が大きく音を鳴らした。嫌な汗が背中を伝う。
足音を立てながら、近づいてくる男。俺は動けない。
「あ、れい」
口が勝手にそいつの名前を呼んだ。
同時に男――亜玲の手が、俺の両肩をつかんだ。
指が食い込むほど強い力に、顔をしかめる。
「――ちょっと、こっち来て」
亜玲は俺の腕をつかんで、引っ張っていく。強引にレストランから連れ出され、たどり着いたのはエレベーターホール。
「……なんで、奏輔といるの」
迫力のある声で問われた。
どう、答えたらいいのだろう。というか、そもそも――。
「お前こそ、どうしてここにいるんだよ」
手を振り払って、亜玲に尋ねる。亜玲のペースに巻き込まれないように、強気な態度を徹底しなくては。
「俺のあとつけてきたの? だったら、趣味悪いよ、お前」
亜玲をにらみつける。対する亜玲は、上着のポケットからスマホを取り出した。
少し操作して、俺に画面を見せてくる。液晶に映っていたのは――俺だった。
(これって、隠し撮り?)
俺の目線はよそを向いていた。完全に隠し撮りだ。
そして、背景に映っているのは――今日訪れたファミレスだ。
「祈ってほんと不用心。もっとあたりを警戒したほうがいいよ」
ため息交じりの言葉に、カチンとくる。
だって、隠し撮りするほうが悪いのに。自分を棚に上げて、俺を責めるなんて。
「言っとくけど、これ、俺が撮ったわけじゃないよ。俺に送られてきたものだから」
「……は? 一体だれが」
――と思ったけど、心当たりはあった。たぶん、この写真の送信主は。
「写真と、このホテルの住所が送られてきた。ご丁寧に『楽しんでくるね』ってメッセージ付きでね」
亜玲の視線が俺の後ろに向いた。振り返ると、壁にもたれかかって一人の男が立っている。奏輔だ。
「……どういうつもり」
亜玲が奏輔に向けた声は、低かった。
「こんなの送ってきて、本当に気分悪い」
「でも、俺についてくるって決めたのは祈だし。俺は丁寧に教えてあげたんだから、感謝してよ」
奏輔はにこにこと笑みを浮かべて、こちらに近づいてくる。俺の肩に腕を回して、顔を近づけてきた。
「っていうか、亜玲と祈って付き合ってるの? 恋人でも番でもないなら、束縛する理由なくない?」
その言葉に亜玲の肩が跳ねた。
「祈がだれとどこで過ごそうが、勝手だよね。いちいち亜玲に報告する義務なんてない」
明らかな挑発だ。普段の亜玲なら、見え見えの挑発には引っ掛からない。
ただ、亜玲は奏輔にはめっぽう弱い。この男のことになると、いつもの亜玲は消えてしまう。
感情のストッパーが壊れたみたいに、奏輔に突っかかっていく。
「だったとしても、祈は俺のだから」
亜玲が奏輔と俺を引きはがす。そのまま、奏輔の胸倉をつかんだ。
「祈は俺のなの。俺と一緒にいてくれないと――」
「いてくれないと、なに?」
一瞬、亜玲が言葉に詰まった。その隙を見逃すような奏輔ではない。
「それはしょせん、亜玲の都合でしょ。祈の意思はどこにあるの? 人には自由がある。自分勝手に縛り付けるなんて、よくないよね」
冷静さを欠いた亜玲と、淡々と言葉をつむぐ奏輔は対象的だ。
感情をあらわにする亜玲と、感情を一切見せない奏輔。
苦しそうな亜玲と、楽しそうな奏輔。
余裕のなさそうな亜玲と、余裕たっぷりの奏輔。
真逆の異母兄弟は、じっとにらみ合っていた。
どうしてここにいるんだろうとか。やばいところを見られたとか。
思うことはいろいろあるけど、なに一つとして言葉にはならない。
呆然とする俺を現実に引き戻したのは、奏輔だ。奏輔は俺に自身の身体を密着させる。しかし、伝わってくる体温は安心ではなく、恐怖を与えてくる。
「祈?」
奏輔の言葉に反応することもできず、じっともめているところを見つめていた。
「だから、言ってるだろ――」
声を荒げたその男の目がこちらを向いた。大きく見開かれた瞳には、驚愕の色が宿っている。
心臓が大きく音を鳴らした。嫌な汗が背中を伝う。
足音を立てながら、近づいてくる男。俺は動けない。
「あ、れい」
口が勝手にそいつの名前を呼んだ。
同時に男――亜玲の手が、俺の両肩をつかんだ。
指が食い込むほど強い力に、顔をしかめる。
「――ちょっと、こっち来て」
亜玲は俺の腕をつかんで、引っ張っていく。強引にレストランから連れ出され、たどり着いたのはエレベーターホール。
「……なんで、奏輔といるの」
迫力のある声で問われた。
どう、答えたらいいのだろう。というか、そもそも――。
「お前こそ、どうしてここにいるんだよ」
手を振り払って、亜玲に尋ねる。亜玲のペースに巻き込まれないように、強気な態度を徹底しなくては。
「俺のあとつけてきたの? だったら、趣味悪いよ、お前」
亜玲をにらみつける。対する亜玲は、上着のポケットからスマホを取り出した。
少し操作して、俺に画面を見せてくる。液晶に映っていたのは――俺だった。
(これって、隠し撮り?)
俺の目線はよそを向いていた。完全に隠し撮りだ。
そして、背景に映っているのは――今日訪れたファミレスだ。
「祈ってほんと不用心。もっとあたりを警戒したほうがいいよ」
ため息交じりの言葉に、カチンとくる。
だって、隠し撮りするほうが悪いのに。自分を棚に上げて、俺を責めるなんて。
「言っとくけど、これ、俺が撮ったわけじゃないよ。俺に送られてきたものだから」
「……は? 一体だれが」
――と思ったけど、心当たりはあった。たぶん、この写真の送信主は。
「写真と、このホテルの住所が送られてきた。ご丁寧に『楽しんでくるね』ってメッセージ付きでね」
亜玲の視線が俺の後ろに向いた。振り返ると、壁にもたれかかって一人の男が立っている。奏輔だ。
「……どういうつもり」
亜玲が奏輔に向けた声は、低かった。
「こんなの送ってきて、本当に気分悪い」
「でも、俺についてくるって決めたのは祈だし。俺は丁寧に教えてあげたんだから、感謝してよ」
奏輔はにこにこと笑みを浮かべて、こちらに近づいてくる。俺の肩に腕を回して、顔を近づけてきた。
「っていうか、亜玲と祈って付き合ってるの? 恋人でも番でもないなら、束縛する理由なくない?」
その言葉に亜玲の肩が跳ねた。
「祈がだれとどこで過ごそうが、勝手だよね。いちいち亜玲に報告する義務なんてない」
明らかな挑発だ。普段の亜玲なら、見え見えの挑発には引っ掛からない。
ただ、亜玲は奏輔にはめっぽう弱い。この男のことになると、いつもの亜玲は消えてしまう。
感情のストッパーが壊れたみたいに、奏輔に突っかかっていく。
「だったとしても、祈は俺のだから」
亜玲が奏輔と俺を引きはがす。そのまま、奏輔の胸倉をつかんだ。
「祈は俺のなの。俺と一緒にいてくれないと――」
「いてくれないと、なに?」
一瞬、亜玲が言葉に詰まった。その隙を見逃すような奏輔ではない。
「それはしょせん、亜玲の都合でしょ。祈の意思はどこにあるの? 人には自由がある。自分勝手に縛り付けるなんて、よくないよね」
冷静さを欠いた亜玲と、淡々と言葉をつむぐ奏輔は対象的だ。
感情をあらわにする亜玲と、感情を一切見せない奏輔。
苦しそうな亜玲と、楽しそうな奏輔。
余裕のなさそうな亜玲と、余裕たっぷりの奏輔。
真逆の異母兄弟は、じっとにらみ合っていた。
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