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第4章
⑪
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この場合、俺はどうするべきなのだろう。
亜玲の味方をするべきなのか。はたまた、奏輔の味方をするべきなのか。
もしくは――中立を保つべきなのか。悩んだ末に出した答えは――。
「……ごめん」
小さく謝ることだった。
俺の言葉を聞いた二人は、同時に視線をこちらに向けた。こういうところ、本当にそっくりだ。
「俺の行動が軽率だった。喧嘩の原因を生んで、ごめん」
静かに頭を下げる。ごくりと息を呑んだのは、一体どちらなのだろう。
頭を下げ続ける俺の肩をだれかがたたく。恐る恐る顔をあげると、俺の肩をたたいたのは奏輔だ。
「祈が謝ることじゃない。これは俺たち兄弟の問題だから」
首を横に振った奏輔の言葉は、俺を突き放しているみたいだ。
だって、『兄弟の問題』ということは、部外者である俺は黙っていろということ。
俺が喧嘩の原因なのにな。
「ま、いいよ。祈に免じて許してあげる」
軽く手を振った奏輔は、俺の手を取った。手のひらの上に置いたのは、カードキーだ。
「用事を思い出したから、帰るね」
「は?」
「祈は泊まっていきなよ。あと、亜玲もね」
奏輔がちらりと亜玲に視線を送る。亜玲は驚きを隠せないのか、目を見開いていた。
俺だって、亜玲と一緒だ。驚きを隠せないでいる。
「フロントには俺が連絡しておくから、気にしなくていい。じゃ、また今度」
ひらひらと手を振って俺たちの側から離れようとする奏輔。
あっけにとられる俺に対し、亜玲はすぐに現実に戻ってきたらしい。奏輔を呼び止める。
「なんのつもり? 俺のこと、馬鹿にしてる?」
目を吊り上げる亜玲だが、視線の先にいる奏輔は気にした様子もない。唇の端をあげる。わざとらしく肩をすくめた。
「そんなわけない。ただ、そうだな。なにかを企んではいる」
言葉を残した奏輔は場を立ち去る。
俺と亜玲は奏輔を見送って、次に顔を見合わせた。
(企みはあるって、どういうことだよ)
奏輔の目的がわからない。あいつは昔からそうだ。すべて自己完結してしまい、人に自分の考えを話すことはない。なぜなら、自分一人で全部できてしまうから。
人並み外れて優秀な奏輔は、だれかに頼ったりしない。だれかに相談するという考えがない。
「あいつはいつもそうだ」
亜玲がぽつりとつぶやいた。その表情は苦しそうなもので、俺の胸がぎゅっと締め付けられる。
「有能だからか、平気で他人を見下す。今だって、祈が俺を選ぶことはないって思ってるから、できるんだ」
俺には奏輔の考えなんてわからない。ただ、亜玲の言葉は違う気がした。
(亜玲は奏輔が嫌いだ。だから、なんでも悪く捉えてしまう)
そりゃあ、奏輔の態度が悪い部分もある。でもさ、ここまで悪く捉えなくてもいいだろって――。
(それにこの場合、選ぶのは俺だ。奏輔じゃない)
いくら奏輔でも、俺の気持ちをコントロールすることなんてできないはず。
もし、できたとしたら。俺はもう、奏輔とかかわりたくない。
手の中にあるカードキーを見る。『615』と書かれているのは、部屋番号ってことだよな。
「……亜玲、行くぞ」
俺は亜玲の手首をつかんで、歩き出す。突然のことに驚いたのか、亜玲がバランスを崩しかける。
普段のこいつなら想像できないやらかしだ。
「いきなり歩き出して、ごめん」
振り返って謝る。亜玲はなにも言わずにただ首を縦に振る。
「……いいよ。行こ」
今度は亜玲が俺の手をつかんで歩き出した。エレベーターに乗り込んで、用意された部屋を目指す。
奏輔の考えが一体どういうことなのか。俺たちには想像もつかなかった。
亜玲の味方をするべきなのか。はたまた、奏輔の味方をするべきなのか。
もしくは――中立を保つべきなのか。悩んだ末に出した答えは――。
「……ごめん」
小さく謝ることだった。
俺の言葉を聞いた二人は、同時に視線をこちらに向けた。こういうところ、本当にそっくりだ。
「俺の行動が軽率だった。喧嘩の原因を生んで、ごめん」
静かに頭を下げる。ごくりと息を呑んだのは、一体どちらなのだろう。
頭を下げ続ける俺の肩をだれかがたたく。恐る恐る顔をあげると、俺の肩をたたいたのは奏輔だ。
「祈が謝ることじゃない。これは俺たち兄弟の問題だから」
首を横に振った奏輔の言葉は、俺を突き放しているみたいだ。
だって、『兄弟の問題』ということは、部外者である俺は黙っていろということ。
俺が喧嘩の原因なのにな。
「ま、いいよ。祈に免じて許してあげる」
軽く手を振った奏輔は、俺の手を取った。手のひらの上に置いたのは、カードキーだ。
「用事を思い出したから、帰るね」
「は?」
「祈は泊まっていきなよ。あと、亜玲もね」
奏輔がちらりと亜玲に視線を送る。亜玲は驚きを隠せないのか、目を見開いていた。
俺だって、亜玲と一緒だ。驚きを隠せないでいる。
「フロントには俺が連絡しておくから、気にしなくていい。じゃ、また今度」
ひらひらと手を振って俺たちの側から離れようとする奏輔。
あっけにとられる俺に対し、亜玲はすぐに現実に戻ってきたらしい。奏輔を呼び止める。
「なんのつもり? 俺のこと、馬鹿にしてる?」
目を吊り上げる亜玲だが、視線の先にいる奏輔は気にした様子もない。唇の端をあげる。わざとらしく肩をすくめた。
「そんなわけない。ただ、そうだな。なにかを企んではいる」
言葉を残した奏輔は場を立ち去る。
俺と亜玲は奏輔を見送って、次に顔を見合わせた。
(企みはあるって、どういうことだよ)
奏輔の目的がわからない。あいつは昔からそうだ。すべて自己完結してしまい、人に自分の考えを話すことはない。なぜなら、自分一人で全部できてしまうから。
人並み外れて優秀な奏輔は、だれかに頼ったりしない。だれかに相談するという考えがない。
「あいつはいつもそうだ」
亜玲がぽつりとつぶやいた。その表情は苦しそうなもので、俺の胸がぎゅっと締め付けられる。
「有能だからか、平気で他人を見下す。今だって、祈が俺を選ぶことはないって思ってるから、できるんだ」
俺には奏輔の考えなんてわからない。ただ、亜玲の言葉は違う気がした。
(亜玲は奏輔が嫌いだ。だから、なんでも悪く捉えてしまう)
そりゃあ、奏輔の態度が悪い部分もある。でもさ、ここまで悪く捉えなくてもいいだろって――。
(それにこの場合、選ぶのは俺だ。奏輔じゃない)
いくら奏輔でも、俺の気持ちをコントロールすることなんてできないはず。
もし、できたとしたら。俺はもう、奏輔とかかわりたくない。
手の中にあるカードキーを見る。『615』と書かれているのは、部屋番号ってことだよな。
「……亜玲、行くぞ」
俺は亜玲の手首をつかんで、歩き出す。突然のことに驚いたのか、亜玲がバランスを崩しかける。
普段のこいつなら想像できないやらかしだ。
「いきなり歩き出して、ごめん」
振り返って謝る。亜玲はなにも言わずにただ首を縦に振る。
「……いいよ。行こ」
今度は亜玲が俺の手をつかんで歩き出した。エレベーターに乗り込んで、用意された部屋を目指す。
奏輔の考えが一体どういうことなのか。俺たちには想像もつかなかった。
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