【R18】悪魔な幼馴染から逃げ切る方法。

すめらぎかなめ

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第4章

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 対する先輩は、にこりと笑って片手を挙げる。人の好さそうな笑みだった。

「上月は有名人だからね。キミのことを知らない人間は、学内にいない」
「……そうですか」

 納得したような声をあげるけど、亜玲は先輩をにらんでいる。

 そして、亜玲の視線は先輩の腕に移動した。先輩の腕は、俺の腰に回ったままだ。

「祈に触るな」

 地を這うような低い声で、亜玲が先輩に命じる。

 俺ははっとして亜玲をなだめようとした。でも、ほかでもない先輩が俺を止めた。

「キミは祈のなにかな? 彼氏面、やめたほうがいいんじゃない?」

 明らかな挑発だった。

 亜玲が人の挑発に乗ることはめったにない。飄々と躱してしまう……はずだった。

「……なに? あんたが祈の次の恋人?」

 顔をしかめ、亜玲が先輩をにらむ。先輩は余裕たっぷりの笑みを浮かべていた。

「もし、正解だったらどうするの?」
「あんたを引きはがす」
「だけど、僕はなにがあっても祈を裏切らないよ。――歴代の恋人みたいに、ね」

 先輩がすっと目を細めた。亜玲が息を呑んで、先輩から顔を逸らす。

 その後、小さく舌打ち。いつもの亜玲らしくない態度に、俺の心臓が嫌な音を鳴らす。

 亜玲は逃げるように先輩に背中を向ける。

「しっかり考えたほうがよかったよ。……キミがしていることは、なんの解決策にもなってないってね」

 背中に強く告げた先輩は、俺の腰を抱き寄せる。なんだか、普段より先輩と俺の距離が近い。

「キミは賢いから、本当はわかっているはずだ。――こんなことをしても、自分が幸せになることはないってさ」

 言葉を背中にかけられ、亜玲は逃げ出すように駆けていく。小さくなっていく背中は、どこかさみしそうで。

(――亜玲)

 胸がきゅうっと締め付けられるみたいだ。

 俺は、どうするべきなんだろう。何度も何度も、思考が同じところをループしている。答えが、見つからない。

 亜玲がいなくなった場所を見つめていると、一人の男がこちらに近づいてきた。……あ、城川だ。

「……亜玲先輩、どこか行っちゃったんだけど」

 上目遣いになりながら、城川は俺をにらむ。愛らしい顔立ちにこれでもかと敵意がこもっていた。

「亜玲先輩と一緒にお茶をする予定だったのに、どうしてくれるんだよ!」

 俺にぐっと詰め寄って、城川が耳元で叫ぶ。そんなこと、俺に言われても……という感じだ。

(というか、これ俺のせいじゃないだろ――!)

 駄々っ子のようなことを言い続ける城川に、俺はあきれていた。話を聞き流しつつ、場が収まるを待つ。

 しかし、その態度が余計に城川をイラつかせたらしい。城川は思い切り手を振り上げて――俺の頬を叩いた。

 パシンっ! ――という小気味よい音が、あたりに響く。頬をぶたれた俺は、呆然とたたかれた頬に触れる。

 瞬きを繰り返す。城川を見ると、あいつ自身もなにをしたのかわかっていないみたいだった。

 そして、見る見るうちに城川の目に涙がたまった。愛らしい双眸で俺をにらんだかと思うと、踵を返して駆けていく。

「し、ろかわ!」

 名前を呼んで、追いかけようとした。

 でも、肩をつかまれた。俺を止めたのは先輩だった。

「行かないほうがいい」
「ですけど、放っておくなんて」
「祈が行っても逆効果だ。だから、ここは僕に任せて」

 先輩は俺の肩をぽんと軽くたたくと、城川を追いかける。

(俺、迷惑ばっかりかけてるな)

 こうやって先輩にたくさんの迷惑をかけて。亜玲や城川を振り回している。

 自分の気持ちがわからないだけで、こんなにたくさんの人を振り回している。

(俺、きちんと亜玲に向き合うって決めたはずなのに)

 まだ、中途半端な気持ちでいたのだろう。今更、実感した。
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