【R18】悪魔な幼馴染から逃げ切る方法。

すめらぎかなめ

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第4章

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 黙り込んだ俺の肩を、礼音がぱんっとたたく。いい音が鳴ったな、なんて頭の片隅で思った。

「あいつの中心にいるのは、今も昔も祈だよ」

 静かに淡々と言われると、さすがの俺も信じるしかできない。

 それに、礼音はこんな場面で嘘をつくようなやつじゃない。幼馴染として、理解しているつもりだ。

「亜玲と真剣に向き合ってやれよ」

 今度はぽんぽんと肩をたたかれた。

 励ますような手つきに、ちょっとだけイラっとする。お前はそういうキャラじゃないだろ。

「……ありがと」

 けど、こういう相談をできるのは結局礼音だけだ。

 小さく礼を言った俺に向かって、礼音は「おう」と返してきた。

「お前らがくっついたら、俺の肩の荷も下りるしな」
「別に俺らのことなんて気にしなくていいだろ」
「気にするって。……俺、これでもお前らのこと大切に思ってるんだぞ?」

 正面から「大切」って言われると、胸がむずむずする。照れたように視線を逸らした俺を見て、礼音が声をあげて笑う。

「――というわけで、アドバイス代として女の子紹介して!」


 キャンパス内を苛立ちながら歩く。

 礼音はどこまで行っても礼音だった。結局、紹介が目当てだった。

(いや、まぁ。うん。あれでこそ礼音だけど)

 むしろ、最後の言葉がくっついていなかったら、あいつが本当に礼音なのか疑ったレベルだ。

 けど、さすがに今言うことじゃないだろう。そもそも、俺に女の子の知り合いなんてほとんどいない。

(はぁ、礼音って本当に役に立たないな)

 俺と違って恋愛経験豊富なくせに――と心で悪態をついた。

 キャンパス内ではいろんな人が歩いている。楽しそうに歩いている人もいたら、神妙な面持ちの人もいる。

「――あ」

 そんな人ごみの中、俺は見つけた。違う、見つけてしまった。

「――亜玲」

 ここのところよく口にしているためか、その名前はやたらと口に馴染んでいる。

 すぐに見つけられるほど、亜玲は目立っていた。高い背丈と美しい顔立ち。ふわりとした触り心地のいい髪。

 心臓がきゅうっと締め付けられた。

(本当、俺、亜玲に心乱されっぱなしだ)

 ついつい立ち止まった。亜玲はこちらに背中を向けていて、俺のことを認識していない。

 どんどん遠のいて、人の中に紛れていく亜玲。俺の心に焦燥感が生まれる。

 焦燥感はどんどん膨らんで、俺を急かす。

 早く追いかけろ。早く――行け。

 頭の中で鳴り響く声から逃れるように、俺は首を横に振る。

(違う。俺は、亜玲のことなんて――)

 強く強くこぶしを握る。

 頭の中で、先ほどの礼音の言葉がループした。

『亜玲と真剣に向き合ってやれよ』

 本当に俺は、このまま亜玲から逃げっぱなしでいいのだろうか――?

 結局、考えるより早く身体は動いていた。人ごみの中を駆け足で移動して、亜玲の背中を追いかける。

 一度は遠くなった背中が、どんどん大きくなる。

(――亜玲)

 あと、ちょっとだった。

 そのとき、人にぶつかった。驚いてふらついた俺の身体を、ぶつかってしまった人が支える。

「おっと」

 たくましい腕が腰に回った。

「大丈夫――って、祈?」

 聞き覚えのある声に顔をあげると、そこにはほかでもない先輩がいた。

「前方不注意、危ないよ」
「は、はい」

 先輩がにこりと笑って、注意を口にする。俺は反論することもなくうなずく。

「というか、だれか追いかけて――」
「祈」

 先輩の声に重なるように、名前を呼ばれた。

 声の聞こえたほうに先輩が視線を移す。小さく「上月か」と先輩がつぶやいたのが、俺の耳にも届いた。

「……なんで、俺のこと知ってるんですか」

 亜玲が眉をひそめて、先輩を見つめている。まさに一触即発といった雰囲気だ。心なしか空気もぴりついている。
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