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第4章
⑤
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しばらくして、料理が届き始めた。
フライドポテトに三種類のピザ。明らかにおつまみ向けのベーコンとウィンナーのセット。
それから――城川のプリンアラモード。
「……いただきます」
城川は小さく手を合わせて、スプーンを手に取った。
生クリームがたっぷり添えられたプリンは、見るからに甘そうだった。
「美味しい?」
「……うん」
先輩の問いに、城川は素直にうなずいた。次に添えられていたキウイを口に運ぶ。
「今日は僕がおごるし、好きなだけ食べていいよ。嫌なことは、食べて忘れちゃえばいいんだ」
なんていう先輩はピザを頬張っていた。今食べているのはマルゲリータだ。
(二人の間に俺が口を出すと、なんか変だし、黙っておこう)
ピザカッターを持って、残りの二枚のピザをカットしていく。
残りの二種類はコーンマヨと、照り焼きマヨ。どれも王道で、絶対に美味しいラインナップ。
「城川はプリンが好きなんだな」
プリンを食べる城川の頬は、ちょっとだけ緩んでいた。そういう顔は、割と可愛い。
これが理想のオメガなのか――と思わせるほどだ。
(比べ、俺は可愛げなんてない)
どうしてこうも違うのだろうか。なんて頭の片隅で思っていると、城川が先輩からぷいっと顔を逸らした。
微かに赤くなった頬。ちらりと先輩を見て、城川はためらいがちに口を開く。
「こ、子供っぽいのはわかってます。けど、美味しいから……」
最後のほうは消え入りそうなほどに小さな声だ。
先輩は拗ねた様子の城川を気にすることなく、その頭の上に手を置く。
「別にいいんじゃない。僕もプリン好きだし。子供っぽいとか、大人っぽいとか。そういうの気にしなくていいよ」
「……ん」
なんだろう。城川はちょっぴり――嬉しそうだった。
「じゃ、じゃあ、一口あげる。……今日のお礼ってことで」
城川がプリンを掬って、先輩の口元に近づける。……待て待て待てって!
「いいの? じゃあ、遠慮なく」
なんの迷いもなく、先輩はプリンを口にした。
何度か咀嚼して、呑み込む。その後の先輩は――輝くほどに、美しい笑みを浮かべた。
「美味しいよ。ありがとう」
「ぼ、僕もそれ食べたい」
城川が先輩のピザに視線を向ける。
一体、俺はなにを見せられているんだろうか。
(三人で来たのに、一人だけ仲間外れってことなんだろうか……)
多分、二人は無自覚だ。そして、無自覚であるがゆえに、たちが悪い。
「祈、もうそれ切れてるよ」
皿の上を右往左往するピザカッターを見て、先輩がきょとんとしている。
……そこはいろいろと、察してほしい。
(気まずいからピザを切っているふりをしてたんだけどなぁ……)
城川はすっかり先輩に気を許したらしい。ちょっとしたスキンシップを取りつつ、距離を詰めている。
いっそ、俺は帰ったほうがいいのかもしれない。この場を二人きりにしたほうが、互いに幸せかもしれない。
「あー、俺、もう帰ろうかなって思います」
ピザを一切れ、フライドポテトをほんの少し食べて、席を立つ。
先輩は驚いたように瞬きをしていた。ただ、城川は俺の気遣いに気づいたようだ。
「……気を付けて」
ぼそっとつぶやかれた言葉に、俺は苦笑を浮かべる。
「じゃ、先輩、城川。また今度。……城川、先輩に迷惑かけるなよ」
「お前に言われるようなことじゃないし」
相変わらず、城川は俺には冷たい。いろいろと思うことはある。でも、城川の気持ちが浮上したのなら――これでよかったんだろう。
(明日もあるし、今日はまっすぐ帰ろうかなぁ)
軽く考えつつ、ファミレスの扉を開けた、その先。
駐車場に高級車が止まっていた。だけど、俺の目を引いたのは――その車にもたれかかっている一人の男。
「よぉ、祈。久しぶり」
男は片手をあげて、俺の名前を呼んだ。
ごくりと息を呑む。どうして、ここにいるんだろう。
「――奏輔」
「覚えていてくれたの? 嬉しいな」
目を細めて、男は手に持ったたばこを携帯灰皿に押し付けた。
フライドポテトに三種類のピザ。明らかにおつまみ向けのベーコンとウィンナーのセット。
それから――城川のプリンアラモード。
「……いただきます」
城川は小さく手を合わせて、スプーンを手に取った。
生クリームがたっぷり添えられたプリンは、見るからに甘そうだった。
「美味しい?」
「……うん」
先輩の問いに、城川は素直にうなずいた。次に添えられていたキウイを口に運ぶ。
「今日は僕がおごるし、好きなだけ食べていいよ。嫌なことは、食べて忘れちゃえばいいんだ」
なんていう先輩はピザを頬張っていた。今食べているのはマルゲリータだ。
(二人の間に俺が口を出すと、なんか変だし、黙っておこう)
ピザカッターを持って、残りの二枚のピザをカットしていく。
残りの二種類はコーンマヨと、照り焼きマヨ。どれも王道で、絶対に美味しいラインナップ。
「城川はプリンが好きなんだな」
プリンを食べる城川の頬は、ちょっとだけ緩んでいた。そういう顔は、割と可愛い。
これが理想のオメガなのか――と思わせるほどだ。
(比べ、俺は可愛げなんてない)
どうしてこうも違うのだろうか。なんて頭の片隅で思っていると、城川が先輩からぷいっと顔を逸らした。
微かに赤くなった頬。ちらりと先輩を見て、城川はためらいがちに口を開く。
「こ、子供っぽいのはわかってます。けど、美味しいから……」
最後のほうは消え入りそうなほどに小さな声だ。
先輩は拗ねた様子の城川を気にすることなく、その頭の上に手を置く。
「別にいいんじゃない。僕もプリン好きだし。子供っぽいとか、大人っぽいとか。そういうの気にしなくていいよ」
「……ん」
なんだろう。城川はちょっぴり――嬉しそうだった。
「じゃ、じゃあ、一口あげる。……今日のお礼ってことで」
城川がプリンを掬って、先輩の口元に近づける。……待て待て待てって!
「いいの? じゃあ、遠慮なく」
なんの迷いもなく、先輩はプリンを口にした。
何度か咀嚼して、呑み込む。その後の先輩は――輝くほどに、美しい笑みを浮かべた。
「美味しいよ。ありがとう」
「ぼ、僕もそれ食べたい」
城川が先輩のピザに視線を向ける。
一体、俺はなにを見せられているんだろうか。
(三人で来たのに、一人だけ仲間外れってことなんだろうか……)
多分、二人は無自覚だ。そして、無自覚であるがゆえに、たちが悪い。
「祈、もうそれ切れてるよ」
皿の上を右往左往するピザカッターを見て、先輩がきょとんとしている。
……そこはいろいろと、察してほしい。
(気まずいからピザを切っているふりをしてたんだけどなぁ……)
城川はすっかり先輩に気を許したらしい。ちょっとしたスキンシップを取りつつ、距離を詰めている。
いっそ、俺は帰ったほうがいいのかもしれない。この場を二人きりにしたほうが、互いに幸せかもしれない。
「あー、俺、もう帰ろうかなって思います」
ピザを一切れ、フライドポテトをほんの少し食べて、席を立つ。
先輩は驚いたように瞬きをしていた。ただ、城川は俺の気遣いに気づいたようだ。
「……気を付けて」
ぼそっとつぶやかれた言葉に、俺は苦笑を浮かべる。
「じゃ、先輩、城川。また今度。……城川、先輩に迷惑かけるなよ」
「お前に言われるようなことじゃないし」
相変わらず、城川は俺には冷たい。いろいろと思うことはある。でも、城川の気持ちが浮上したのなら――これでよかったんだろう。
(明日もあるし、今日はまっすぐ帰ろうかなぁ)
軽く考えつつ、ファミレスの扉を開けた、その先。
駐車場に高級車が止まっていた。だけど、俺の目を引いたのは――その車にもたれかかっている一人の男。
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「覚えていてくれたの? 嬉しいな」
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