【R18】悪魔な幼馴染から逃げ切る方法。

すめらぎかなめ

文字の大きさ
45 / 50
第4章

しおりを挟む
「……覚えているもなにも、俺ら幼馴染だし」
「ははっ、それもそうだ」

 男――奏輔は軽やかに笑って、携帯灰皿を胸元のポケットにしまう。

 腕を組んで俺を見つめる奏輔は、ふっと口元を緩めた。

「最近、亜玲とはどうだ?」
「……奏輔には関係ない」
「関係ないもなにもないだろ。……だって、俺は亜玲の兄だし」

 にこりと人の好きそうな笑みを浮かべた奏輔の言葉が不快だった。

 俺の様子を気にすることなく、奏輔は車のボンネットをたたく。

「弟とその想い人の様子が気になるのは、兄として当然だろう?」

 革靴とアスファルトがぶつかる音がする。奏輔は俺のほうに一歩近づいて、目を細める。

 奏輔の手が伸びてきて、俺は慌ててその手を振り払った。

「なんのつもりだよ」
「えー、拒否されるなんて悲しいな。俺はこんなに祈のことを大切に思っているのに」

 わざとらしく肩をすくめた奏輔に、イライラが募っていく。

(奏輔とまともに会ったのは、三年ぶりくらいか)

 基本、奏輔は仕事で海外を飛び回っている。見分を含めるという意味も含まれているはずだ。

「日本に戻ってきたから、様子を見に来た健気な兄貴分を拒否しないでよ」
「……なにが健気だよ」

 この男に健気という言葉は似合わない。

 いつだって人を振り回し、楽しんでいる。人の嫌がる顔が大好きで、人を打ち負かすのが大好き。

 質が悪いのは、奏輔にはたくさんの才能があること。なにをしても、あっという間に人並み以上の実力を身に着ける。

 そんな奏輔のことが、俺は……。

「お前はただの腹黒男だろ。……健気なんて言葉からは程遠い」
「それもそうか」

 あっさり認め、奏輔は一歩下がった。

「せっかくだし、このあと一緒に夕飯を食べようよ。……いい店、知ってるんだ」
「……は?」

 突拍子もない誘いに、瞬きを繰り返す。奏輔は人の好きそうな笑みを浮かべ、助手席の扉を開けた。

「久々の再会だ。ちょっとくらい、語り合おう」
「俺にそのつもりはない」
「そんなこと言わないでよ。それとも――亜玲を呼ぶ?」

 出てきた名前に、眉がピクリと動いた。

 だって、亜玲は……。

(俺が奏輔を苦手な以上に、亜玲は奏輔を嫌っている)

 どうしてか、この兄弟は仲が悪い。異母兄弟という点を除いても、かなり仲が悪い。

 今、亜玲と奏輔を会わせてしまったらどうなるのだろうか。ただでさえ不安定な亜玲のメンタルバランスが崩れてしまう気がした。

「俺は別にどっちでもいいよ。三人での食事も楽しそうだしね」

 本当に、本当に奏輔は人が悪い。人の嫌がる顔を見て楽しんでいる。

 俺は小さく舌打ちをして、奏輔に近づく。助手席に乗り込むと、奏輔は嬉しそうに頬を緩めた。

 奏輔が助手席の扉を閉めて、運転席に回る。エンジンをかけて、シートベルトを着けた。

「こうやって祈と出かけるのなんて、何年振りだろうね」
「……どうでもいい」

 そっけない態度をとる。頬杖をついて、窓の外を見た。

「高速使って、一時間くらい走るからね。……疲れたら、いつでも言ってね」
「どうも」

 まさか、ここから一時間もこいつと二人きり。しかも密室なのか。

 自分の判断が軽率だったのではないかと思ったが、亜玲を呼ばれるよりずっといい。

(今の亜玲は不安定だ。だから、ちょっとでも守ってやりたい)

 俺の心境に変化があったのは、いつからだろうか。

 俺は亜玲を守りたい。強く見えるのに弱い亜玲を、守ってやりたい。

 オメガがアルファを守るなど、思いあがっているのかもしれない。でも、俺は――亜玲を、守りたい。

 この気持ちに嘘なんてない。俺の気持ちは、本心だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 【花言葉】 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです! 【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。 ◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果

SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。  そこで雪政がひらめいたのは 「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」  アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈  ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ! ※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。

叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。 幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。 大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。 幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

俺にだけ厳しい幼馴染とストーカー事件を調査した結果、結果、とんでもない事実が判明した

あと
BL
「また物が置かれてる!」 最近ポストやバイト先に物が贈られるなどストーカー行為に悩まされている主人公。物理的被害はないため、警察は動かないだろうから、自分にだけ厳しいチャラ男幼馴染を味方につけ、自分たちだけで調査することに。なんとかストーカーを捕まえるが、違和感は残り、物語は意外な方向に…? ⚠️ヤンデレ、ストーカー要素が含まれています。 攻めが重度のヤンデレです。自衛してください。 ちょっと怖い場面が含まれています。 ミステリー要素があります。 一応ハピエンです。 主人公:七瀬明 幼馴染:月城颯 ストーカー:不明 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

処理中です...