【R18】悪魔な幼馴染から逃げ切る方法。

すめらぎかなめ

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第4章

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 ――上月 奏輔。

 亜玲の異母兄で、上月の正当な後継者である男。

 奏輔の母は、奏輔を産んで半年後に亡くなったらしい。そして、新しく上月家に嫁いできたのが亜玲の母だった。

 世間一般の異母兄弟はどんな関係なのか。俺は知らないけど、上月家に関しては昔は悪くなかったと思う。

 小さなころは亜玲と俺と奏輔で遊んでいた。しかし、成長するにつれ、亜玲は奏輔を疎むようになった。

 気づくと遊ぶのはいつだって俺と亜玲だけ。そして――俺と亜玲も、疎遠になった。

 幼少のころ仲が良かった三人は、いつの間にかバラバラになっていた。


 運転する奏輔の横顔を眺める。真剣な面持ちの奏輔は、見る人が見たらとてもかっこいいんだろう。モテるはずだ。

 けど、俺にとって奏輔は――。

「祈、俺のことじっと見て、なに?」
「……あ」

 信号が赤になったタイミングで、奏輔が俺に視線を向けてくる。

 慌てて窓のほうに顔を向けた。

「別に、今話さなくてもいいよ。今日はたくさん時間があるわけだし」

 余裕たっぷりの奏輔は、なにを考えているのだろうか。

 今も昔も、俺には奏輔の考えがなに一つわからなかった。

(奏輔はすごく優しかった。理想のお兄ちゃんだった)

 俺にとっても、奏輔は『お兄ちゃん』だった。優しくて、頼もしくて。それが変わったのは、いつからだろう。

『――俺は奏輔を兄だなんて思ったことは一度もない!』

 頭の中でいつかの亜玲の叫び声がこだまする。

 瞳に憎しみを込めて、奏輔をにらんでいる。俺は二人の光景をどこか遠くから眺めていた。

『お前にとって俺は、相手にもならないレベルなんだよな。……いつも余裕たっぷりで、俺のこと見下してる』

 亜玲のこぶしが震えている。唇をわなわなと震わせた亜玲が、吐き捨てる。

『――お前なんて、大嫌いだ』

 地を這うような低い声だった。

 あれはいったい――いつだったっけ。

(あのときの俺は、頭のどこかで楽観的に考えていて。どうせすぐに仲直りするって思ってた)

 でも、数日経っても数週間経っても、数カ月経っても。なんなら何年経っても。二人の仲はこじれたまま。

 その間に大学まで卒業した奏輔は、事業を手伝うために海外を転々とする暮らしになったのだ。

 雨が降ってきたみたいだ。ぽつぽつと落ちてくる雨粒は、窓ガラスに落ちて視界を歪ませていく。

 その光景をぼうっと見つめていると、頬になにかが触れた。

「奏輔」
「なにか考え事?」

 奏輔がにこりと笑う。

「なにかあるなら、お兄さんに話してごらん。解決するかもよ?」
「……奏輔にだけは、話さない」

 突き放すように冷たく言い放つと、奏輔は「ちぇ」と声をあげて、また運転に戻った。

 先ほどまで奏輔の指が触れていた頬に触れる。感触を消すように軽く揉むと、運転席から笑い声が聞こえた。

「そんなに俺に触られるのがいや?」
「嫌っていうわけじゃない」
「嘘言うなって。思い切り顔に『いやです』って書いてあるから」

 眉間にしわを寄せた。いやだってわかっているなら、触れなくてもいいじゃないか――という意味だ。

「そんな風に拒絶されたら、寂しいな。俺と祈の仲なのに」
「……どういう仲だよ」

 なんてつぶやくと、車が右折し、コンビニの駐車場に止まった。

「深い意味はないよ。俺たちは幼馴染、それだけだろ?」

 意味ありげに笑った奏輔が、ブレーキをかけてエンジンを切った。

 そして、俺のほうに乗り出してくる。

「本当、お前ってバカだよねぇ」
「いきなり罵倒かよ」
「ごめんね。……けど、本当にバカだなって思って」

 頭のどこかでこの状況が危険だと警告音が鳴っている。

 それだけうるさく鳴らさなくてもわかっている。わかっているが……逃げる方法はわからない。

「俺がなにかするって思わなかったの?」

 可愛らしく小首をかしげられた。しかし、全然可愛くない。むしろ、悪寒がするほど不気味だ。
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