あなたの隣

ひろの

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LINEで連絡しておこうと、スマホを取り出したが、出入りの激しさを見れば、この混み具合も分かるだろうと判断し、再びスマホを鞄に入れようとした。

そのとき、画面に新着メッセージの文字に気づき、再びスマホを手に取った。

誰だからだろう。

『由香さん、こんにちは。薫です』

薫・・・。一カ月程前の飲み会にいた人だ。見た目も悪くなく、どちらかいうとイケメンで、トークもうまい。
あの飲み会の日以来、時々飲み会の誘いがくる。

『こんにちは、薫さん』
『まだ、薫さん?薫でいいよ』
『うん、分かった。それより、どうしたの?また飲み会とかかな』
『いや、今日は俺だけなんだけど、由香さん時間空いてないかなと思って』

二人?急にどうしたんだろう。
今まで二人で会ったことはない。それどころか、私は彼が誘ってくる飲み会も全てキャンセルしている。



『ごめん、今、外なの』
『そっか、残念。もしかして、デートだったり?』

うん、と返信しかけて、文字を打ち直した。

『さあ、どうかな。ちょっと急ぐからまたね』

送信ボタン押した私は、薫の返事を待たず、スマホを直した。

行列はいつの間に前に進んでいて空いた扉に足を運ぶ。




薫・・・かあ。雰囲気いい感じの人だったけどな。小さなため息を漏らし、全てを忘れるがの如く首を振った。

それでも頭から離れないのは「デート」という言葉。
私たちいつまでこうしていられるんだろう。


痺れを切らせたのだろうか。次の客が荒くドアを叩いた音で我にかえった私は急いでトイレのドアを開けた。

「すみません!」
「早くしてよねっ」

キツく私を睨んだ長い髪の女性は、とても美人で、私が憧れるような人だった。見た目だけは・・・。

あれで性格もよければ完璧なのになあ、なんて不必要なことを考えてしまう。



鏡に映る自分の残念な顔立ちに軽く化粧直しをする。ブサイクというほどではないが、何かが違う。

彼の好きな女優さんのメイクを見て練習もした。だけど、そんなふうにはうまくいかない。もし、そんな簡単に顔を変えられるなら、整形というものがこの世からなくなるじゃないか。


隣に立ったさっきの美女が、私をチラリと見た気がした。余裕のある目つきに敗北感を感じながらも、頬に当たった毛先のボブが、私を少し励ましてくれているようにも思え、意味のないお辞儀を美女に向けると、私は再び彼の元に戻った。
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