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6話
しおりを挟むともあれ、支度は無事に終わって食事をしている。
若い頃は化粧品なんて使えるものでは無かったし(勿論結婚式はしたが)、人にされるということも殆ど経験が無く、緊張していたのだが…それはそれは驚いた。
(化粧でこんなに変わるなんて…技術もすごいが、たかが化粧品と舐めちゃいけないね)
孫達には「若いんだから化粧なんていらない」と言っていたが、こうなると拘る理由も必要性も非常によく分かる。
…しかし。
(ここの食事は美味しいねぇ…)
あまり食べ慣れない洋食ではあるものの絶品であることだけは間違いない。
しっかりと堪能し、満腹になったところでエマがやってきた。
「チヨ様、お食事中に失礼致します」
「もう頂いたので大丈夫よ。どうかした?」
「本日ですが、ルーカス様との面会のみのご予定でしたが…陛下がチヨ様にお会いになりたいそうなのですが…」
非常に急なことではあるが、特に予定があるわけでもないチヨは承諾をした。
「分かりました。時間はいつになるのかしら?」
「ルーカス様との面会終了後、2人で来るようにとのことです」
それなら少し安心である。
承諾はしたが、緊張をしないわけではない。
何を言えばいいか、作法なども全く分からないのだ。
(まぁ会えばどうにかなるかねぇ)
————————
「時間を頂いてしまって申し訳ございません。体調は如何でしょうか?」
「ありがとうございます。しっかり睡眠を取ったので身体がとても軽いです」
「それはようございました。…身体といえばやはり変化はあったのでしょうか?」
ルーカスが面会に来たのだが、相変わらず光っている、気がする。
これはまさしく金髪。目は…深い緑だろうか。造形も美しければ色も美しいなんて不公平さしか感じない。
「あの……チヨ様…?」
ついルーカスの顔を凝視してしまったチヨは素直に打ち明ける。
「すみません。私の国ではルーカスさんのような髪や目の色の方をあまりお見かけする機会が無くて…綺麗で見入ってしまいました」
というと、ルーカスは少々頬を染めて咳払いをした。
どうやら照れているようだ。
「いえ、大丈夫です…チヨ様のお身体の変化はいかがだったのでしょうか?」
チヨは昨日確認した身体を報告する。
体調もよく、羽のように軽いといえば安心したようだった。
「聖女様が世界を渡ってこられるときにこのような事態が起きることもあるのですね…」
「…世界を渡るってどういうことですか?」
——————
遅くなりましたが、説明させて頂きます。
我がルゥナ帝国は約2000年の歴史がございます。
ソンツァル神が創造し、存在する全てのものに命を与えたときに自分以外の女神も創りました。
そして二柱の間に1人の男の子供が産まれ、成長し、立派な青年になった頃には地上に人間も増えてきたので、ソンツァル神は息子をこの地の王としました。
王は良い治世をと必死でした。
しかし、それでも民からの嘆願や不満は増えていきます。
王は些細な声さえも逃さぬよう、叶えるよう必死でした。
しかし、民からの無理難題は増えていきます。
そして民は日々の不満は全て王に元凶があると言い始めたのです。
…勿論、そんなことはありません。
ありませんが、疲弊した王の心を挫くには充分でした。
王は精神を病み、呪詛を撒き散らすようになりました。
そして最期まで戻らぬままソンツァル神の元へと還られました。
次の王は宰相が就きました。
その後は平和な治世が500年続きます。
しかし、当時の王に異変が生じました。
500年前と同じように王が心を病んでしまったのです。
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