一匹狼と、たったひとりのラナ

揺木しっぽ

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【完結】最終話 月明かりの目覚め、二人の絆

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結局、ラナはいつ意識を手放したのかすら覚えていない。
気付いた時にはベッドの上で、隣には狼の姿のリゲルが眠っていた。意識を手放してからも抱かれたのか、お腹には違和感がある。まだ中に挿入されているような感覚だ。
正直、あのまま死ぬのかと思った。しかし生きているのだから、ひ弱な人間の体もなかなか死なないのだなと感心する。
隣を向いて、月灯りに照らされる、眠っているリゲルの頬を撫でる。相変わらず彼の体毛はふかふかだ。

「ん……、ラナ……ラナ! 体大丈夫!?」

ラナの手の感触にリゲルは目を覚ますと、がばりと起き上がった。

「うん……なんとか……」
「ごめん……無理させて……」

リゲルがラナの胸に顔を埋めた。
まるで捨てないでと縋っているようだと、ラナはその頭を撫でる。

「大丈夫だからそんなに心配しないで。それに満月の日にやってきたのは私なんだから」

理性をなくすということはこういうことになるのかと、少しは覚悟していた。性器が抜けなくなったり、とんでもない射精量になったりする――なんてことは全く予想が出来なかったが。

「オレのこと嫌いになった……?」

バツの悪そうな顔でリゲルがラナを見上げる。

「どうして? 大好きだよ」
「良かった……」

リゲルは人間のラナにあんな交尾をしたら嫌われると思い、満月の夜に会いたくなかったのだ。
あんなに本能剥き出しで激しく抱いたのに、嫌う様子のないラナに、リゲルは心底安堵した。
ラナはリゲルの両頬に手を添え、月光を受けて潤む金の瞳を見た。

「リゲル、愛してる。嫌いになんてならないよ」
「オレも愛してる。ずっと大事にするから」

二人はきつく抱き締めあった。



あの夜以降、リゲルは満月の夜になっても自らの姿と本能を制御できなくなることは無くなった。

「なんでだろうね?」
「愛の力だろ」
「え~?」

そんなまさかとラナは笑うが、本来番を持つ狼の習性から、それを得たことにより精神や衝動が安定するのは自然なことだろう。リゲルはラナを見つめて目を細めた。

「ラナがお風呂欲しいって言ってたし、もっと街の近くに住むか、頼んで風呂を作ってもらうか」
「いいの? やった!」

森の中も気楽で好きだったが、ラナと街で暮らすのも楽しそうだ。にこにこと笑顔でリゲルの首に抱き着き、顔を擦り寄せるラナが可愛くて仕方が無い。

「リゲル、大好き」
「オレも、愛してるよ」

そう囁くとラナは自然と瞳を閉じる。リゲルはその唇に自らの唇を重ねた。彼女を番に選んで良かった。ずっとこうして愛を囁き合って暮らせたら幸せだろう。これから彼女のことをもっと知りたいし、自分のことも知ってほしいと思う。

「――ああそうだ、ラナの両親がいるなら挨拶に行かないとな。ご両親どこに住んでるんだ?」
「私の育ての親はチンチラの夫婦で、アシエの方に住んでるよ」
「親チンチラなのか! アシエなら行けない距離じゃないな」

アシエはここから半日ほどで行ける街だ。

「だから義兄弟もいっぱいいる」
「へぇ。狼男のオレが会っても大丈夫かな」
「……たぶん」

最初はびっくりするかもしれないが、彼らならすぐに受け入れてくれるだろう。ラナは故郷に残した両親たちのことを思い浮かべた。
ラナが旅立つのを酷く心配していたが、愛する人を紹介することは少しは恩返しになるだろうか。
あなた達が拾って育ててくれて、こんなに素敵な人と出会えたと伝えたい。
ひとりぼっちではないということは、こんなにも幸福だ。

end


――――――――――――



最後までお付き合いありがとうございました。

リゲルとラナの二人の物語はいかがだったでしょうか。

よろしければ感想などいただけますととても嬉しいです。

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Xも作りました。→https://x.com/yuragishippo

好評でしたら番外編など更新するかもしれません。

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