次男は村を出る

恩陀ドラック

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一日目 昼

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 片田舎の農村のとある家。柔らかな昼下がりの日差しが差し込む居間に、ぱんぱんと肉が打ち合う音と荒い呼吸が響いていた。二つの若い肢体が快楽を紡ぎあう。柱に両手を着いて体を支える少年の男根から精液が零れ、美しい木目の床に新しい模様を描いた。彼の片足を持ち上げて腰を動かす少年が問う。


「ダルネ、もう何回いった?  まだ満足できないの?」

「もっとトゥーエにぃ、もっとしてっ」

「まったく・・・」


 二人は同じ両親から生まれた実の兄弟だ。トゥーエは弟の要望に応えて同じ律動を刻み続けた。ダルネが再びの絶頂を迎えようとしたとき、居間と外界を隔てる玄関ドアがなんの遠慮もなく全開にされた。室内に現れたがっちりした体型の中年男性は二人の実の父親だった。セックスに励む息子たちを見付けると割れんばかりの大声で怒鳴りつける。


「何をしているんだ、おまえたち!!」


 すごい剣幕に、少年たちは飛び上がるほど驚いた。慌てて服を拾いに行く。


「遊んでばっかりいるんじゃない!  今日は客が来ると言っただろう!  こんなに床を汚して!  トゥーエ!!」


 ダルネと一緒に悪さをして真っ先に怒られるのはいつもトゥーエだ。兄というだけで割を食う。今回だってダルネの遊びに付き合ってあげてただけなのに。客が来るのは知っていたが、それが今日だとは聞いていない。父はよく大事な事を伝え忘れる。今回もそれだろう。でも下手なことを言うと余計に雷が落ちるから素直にごめんなさいと謝った。


「すみませんピウニさん、散らかってますが中へどうぞ」


 二人が服を身に着けると、玄関先で待たされていた客がようやく室内に通された。力仕事とは縁遠いであろうすらっとした体つき。涼し気な目元。洒落た衣装。この辺じゃお目にかかれない洗練された都会の男に、トゥーエは一目で魅了されてしまった。


「躾のなってない息子たちでお恥ずかしい。妻が生きてた頃はまだ礼儀作法にも構ってられたんですがね、男所帯だとどうもその辺が後回しになってしまって」


 子を設けることが許されているのは嫡子だけ。だから第二子以降の同性愛は当たり前のことになっていた。なるべく近い親等で、決まった相手とするのが習いだ。家系に全く影響を及ぼさない性交は見る価値もなく、隠す意味もない。本人たちにも羞恥など無く開けっ広げ。それがこの辺いったいの普通だった。とは言えわざわざ客に見せるものでもない。


「お気になさらずに、フォーダーさん。私の地元も似たようなものでしたよ」

「そうでしたか。おまえたち、挨拶をしなさい」

「次男のトゥーエです」


 頭一つ分以上背の高いピウニに対抗するように背筋をピンと伸ばした。いつもだったらこの後に「年はいくつなの」とか「勉強はしてるの」とか、そういう質問が飛んでくる。しかしピウニは満足そうに微笑んで「よろしく」と言っただけだった。子ども扱いされなかったのが嬉しくなってしまう。トゥーエは頑張ってすまし顔を作った。


「そっちのチビが三男のダルネです」

「よろしく。お掃除かい。えらいね」

「いえ、そんなことないです」


 いつもは言われてもなかなかやらないのに、初対面の人間の前でいい子ぶりたいダルネは進んで床を拭いていた。自分の精液なんだから当たり前じゃないかとトゥーエは弟を睨みつけるが、ちゃっかり者のダルネは知らんぷりをした。

 フォーダーはピウニにソファーを勧め、息子たちにお茶の支度を命じた。ピウニは都会からこの村に商談に来た商人だ。村のみんなで開発した新しい商品に関して視察し、話し合い、合意に至れば契約を結ぶ。村に宿泊施設はなく、滞在中はフォーダー家に泊まってもらうことになっていた。


「失礼ですが、似たような風習があるということは、ピウニさんも田舎のご出身なんですか?」

「ええ。山の裾野にある集落です。川が多くて。水が豊富なのはいいけど移動が不便でしてねえ。やはり長男しか女を抱けない決まりがあったので、さっきのような光景は珍しくありませんでした。遠方から客が来ると接待係りの少年が一人つけられたりしてましたね」

「ほお、ならば滞在中の面倒は息子に見させましょう」


 「いえ、そんな」「まあ遠慮せずに」という型通りの押し問答を経て、本人不在で話がまとまる。お茶を運んできた息子は急な命令に驚いた。


「トゥーエ、ピウニさんを一発抜いて差し上げろ。あまり時間がないから口でな」

「なっ・・・なんで俺なの!?  ダルネにさせてよ!」

「トゥーエ君、私のちんちんを舐めるのは嫌かい?」


 大事なお客に失礼な態度を取ってしまって、トゥーエは慌てた。父や他の大人たちがピウニを迎えるにあたって何日も前から準備していたのを知っている。村のために皆が頑張っていたことが、自分のせいで無駄になるかも知れない。だけど。


「そういうわけじゃ・・・でも俺たぶん上手じゃないし・・・」


 弟が挿入ばかりを好むから、トゥーエはそれ以外の事をほとんどしたことがない。本当に自信がなかった。がっかりされて、家族の前で恥をかくのが嫌だった。


「私は君に抜いてほしいんだ。だめかな?」


 素敵な都会の男にお願いされ、トゥーエはこれ以上何も言えなくなってしまった。仕方なしに脚の間に跪く。集中できないので、ピウニに見えない角度でこっそり応援してくる父親や、完全に面白がって見物している弟は視界に入れないことにした。

 自分ならどうされたら気持ちがいいだろう。想像してまだ柔らかい男根を口に含む。上顎と舌で圧迫すると、反発するように硬さを備えて質量を増した。初めて間近で見る、勃起状態の大人ちんちん。十四歳と十三歳の自分たちとは全然違う。トゥーエは大きすぎるそれを持て余してしまった。それでも一生懸命に我慢汁を舐め取ったり竿を手で扱いたりした。

 予想以上に下手くそなトゥーエのフェラチオを、ピウニは温かく見守った。時折不安げに上目遣いでこちらの顔色を窺う様など、初々しくて好感が持てる。だがこれではいつまで経っても射精できそうにない。残念だが仕事の予定がある。


「ごめんね、少し我慢して」


 トゥーエの頭を両手で固定して腰を動かす。最初はびっくりしたトゥーエも、ピウニが気持ちよくなるように口を窄ませた。


「出る・・・っ」


 ピウニの手から解放されたトゥーエは、しかし咥えた男根を放さなかった。出された精液をこくこくと飲み、尿道の残滓も絞り出して吸い取る。口を離したあとはカリ首に舌を沿わせ、最後にもう一度尿道口をちゅっと吸って、ぴかぴかの清潔なちんちんにしてトゥーエのフェラチオは終わった。


「素晴らしかったよ、トゥーエ君。とても気持ちよかった。飲んでくれてありがとう。さあ、お茶で口直しして。フォーダーさん、いい息子さんをお持ちですね」


 ピウニはトゥーエの献身と気づかいに感動した。フォーダーは謙遜しているが嬉しそうに照れ笑いをしている。大人たちが和やかになって、子供二人もほっと一息ついた。










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