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三日目と四日目
しおりを挟む「トゥーエ兄ずいぶん感じてたね。ピウニさんに女にされちゃった?」
昨夜の嬌声は家族全員に聞かれていた。あんあん喘ぐのを馬鹿にされていた弟からの意趣返しだ。ダルネ本人はあまり気にしていなかったが、兄をからかう機会があるならスルーはしない。
「逆だよ。俺は男になったんだ」
軽く微笑んで鷹揚にいなした。昨日までのトゥーエとは明らかに違う。いつもトゥーエとダルネの掛け合いで喧しい朝食の時間が、この日は穏やかに過ぎて行った。
夜。商談がまとまった祝いと明日村を発つピウニへのもてなしで、宴席はいつもより長引いた。帰宅したのは十一時前。寝ていると思っていたトゥーエは起きて待っていてくれた。
「ピウニさんっ、おかえりなさい!」
抱き付いてキスをねだる少年に、ピウニはたっぷり唾液を流し込んだ。正直疲れていたし時間も時間なのでこのまま眠るつもりだったが、トゥーエにどうしてもセックスがしたいとせがまれた。上目遣いのお願いがかわいくて、眠気はどこかにいってしまった。トゥーエが準備をしている間に、明日の朝やろうと思っていた荷造りを済ませる。これで少しは寝坊ができる。戻って来たトゥーエは積極的だった。ピウニの全身にキスをして、お尻を振って誘惑して、騎乗位にも挑戦した。
「好きっ、ピウニさんっ、好きっ、好きっ、あうっ」
うまく腰を振れないトゥーエに代ってピウニが律動した。下からがん突きされてぷるぷる震えるトゥーエの男根。ピウニがそっと捕まえて扱いてやると呆気なく果てた。
「もう、なんで……もうちょっとで中イキできそうな気がしたのに……」
「それであんなに頑張ってたの? あれは慣れも必要だよ。無理はしないで。それよりも素直に感じて乱れてくれた方が私は嬉しい。もっと楽しもう。ね? トゥーエ」
トゥーエが中イキに拘ったのは、ピウニの男根で絶頂したかったからだ。今夜がピウニと客間で過ごす最後の夜になる。大好きなピウニでしか感じられない快感がほしかった。自分の身体に二人だけの秘密を作りたかった。それなのに、ピウニはわかってくれない。セックスが終わるといつものようにキスをしておやすみを言って眠ってしまった。トゥーエは眠れない。きちんとまとめられて部屋の隅に置かれたピウニの荷物が目に映るたび、トゥーエの心は暗く沈んでいった。
翌朝。とうとうピウニが村を出て行ってしまう。トゥーエはピウニが居なくなるまで部屋にこもることにした。誰にも泣き顔を見られたくない。本当は仮病を使って朝ごはんも拒否したかったけど、必死に平静を装って食べた。元気そのもので病気をした覚えがない自分が具合が悪いなんて言い出したらきっと大事になる。ピウニが変な事をしたと疑われてしまうかもしれない。今日ばかりは丈夫な体が恨めしくなった。
しかしデリカシーのない父がバカでかい声で階下からトゥーエを呼ぶ。無視してもしつこい。これは顔を出さないと部屋に乗り込まれて引きずり出されるパターンだ。仕方がないから部屋を出る。嘘吐きとなじりたい気持ちと好きでたまらない気持ちが零れないように、トゥーエは自分の足元だけを見て一歩一歩階段を下りた。居間では全員がトゥーエの登場を待ち構えていた。
「遅いぞトゥーエ! ピウニさんを待たせるんじゃない!」
「あれ? おまえなんで手ぶらなの?」
「は……?」
長男の問い掛けに掠れ声で返事をするトゥーエはまるで死人だ。事情を理解した長男が、今度はフォーダーを問いただす。
「おい親父、あんた昨日トゥーエと話してないな?」
「…………すまん、忘れてたかもしれん」
「すまんで済むかバカヤロー!!」
結論から言うとトゥーエはピウニについて行くことに決まっている。トゥーエの様子を見てきて思う所があった父兄は、昨日の昼間にピウニと三人で話し合ったのだった。
「もし邪魔でなければ連れて行ってほしい。側においてもらえるならこき使ってくれて構わない。それでもあの子は幸せだろうから」
ピウニからしたら願ってもない申し出だった。ピウニもトゥーエに心を奪われている。だが十四歳の健康なトゥーエはこの家の貴重な労働力。おいそれと寄越せなどと口にできない。どうすればトゥーエと共にいられるか悩んでいたのだ。
「これ以上の嬉しい申し出はありません。私はトゥーエ君を心より愛しています。トゥーエ君を大事にすると約束します。勉強もさせて、どこに出しても恥ずかしくない立派な男に育ててみせます。大切な息子さんを託したことを後悔させるような真似は決してしないと、この命を懸けて誓います」
結婚を控えている長男は、ピウニの真っ直ぐで熱い思いに感銘を受けた。フォーダーも彼の気概に感じ入り、次男の幸せを確信した。
それを昨日のうちにトゥーエに伝えるはずだったのだが、そこは安定の父フォーダーである。長男もさすがにこれほどの大事を話し忘れるとは思わず、父に任せきりにしてしまった。トゥーエとピウニは膝から崩れ落ちた。
二階から下りてきたトゥーエの沈痛な表情を見たピウニは、顔には出さずにいたが内心では相当ショックを受けていた。思えば初めてトゥーエを見たときから、ピウニは彼に恋をしていたのだ。恋なら幾度もしてきたが、全身全霊を捧げたいとまで思うのは初めてだった。それでいい年をして浮かれて勘違いをして、嫌がる少年から家族や故郷を取り上げようとして悲しませている。
「俺がピウニさんを嫌がるなんて、そんな事絶対にありえない!」
トゥーエは普通に村を去ろうとしているピウニに失望していた。もしかしたら帰る直前にもう一度抱いてくれるかも、と思ってこっそり準備しておいたのにそういう気配もない。お別れも言ってくれない。自分は一時の遊び相手。愛してると言ったのはごっこ遊びの台詞のひとつ。本気になったのが馬鹿だった。諦めよう。忘れよう。そう自分に言い聞かせていた。
「私はそんな不誠実な男じゃない! 私の愛は君のものだ。君が捨てないかぎり、ずっとずっと私は君のものだ!」
二人は泣きながらお互いを搔き抱いた。
「丸くおさまったな」
「うるせえ、反省しろ」
「ねえこれ、止めないとおっぱじめちゃうんじゃない?」
しかしもう割って入れる雰囲気ではなくなっていた。気の毒な思いをした二人は少しそっとしておくことにして、三人はトゥーエの荷造りをしにいった。
「あううっ、ぎもぢい゙ぃ~」
捨てられると思っていた愛する人とのセックスでトゥーエは乱れた。猛ったピウニを全身で受け入れる。ソファーに仰向けにされ、両手はしっかりと掴まれて自由がない。逃がしたくないという強い思いがそうさせているのだと思うと、幸せ過ぎてどうにかなりそうだった。自然とトゥーエの脚がピウニの腰に絡み付く。深く激しい律動がぱちゅんばちゅんと鳴り響くたび、二人は一歩また一歩と高みに近付いた。
「私のトゥーエ! 君を一生離さない!」
「ああんいくっ、初めてちんちんだけでいっちゃうっ、ピウニさんのちんちんでっ、いくいっくううぅぅうっ!!!」
中で果てるピウニに呼応するように、自由に揺れていたトゥーエの男根からぴゅるると精液が飛び出した。ちょうど居合わせた父兄弟も思わず「おお!」と感嘆の声を上げる。すかさず二回戦に雪崩れ込もうとしたが、それは三人がかりで阻止された。
ピウニとトゥーエは幸せそうに村を旅立っていった。残されたダルネは嘆いた。いつも一緒にいたトゥーエと離れ離れになるのは寂しい。それに今後は誰が自分の相手をしてくれるのか。トゥーエのいけないちんちんで金玉が空になるまでいかせてもらう遊びも、もうできなくなってしまった。遊びの心配ばかりするダルネに呆れた長男が釘を刺した。
「ばっか、おまえ、あいつがいなくなった分の仕事が増えるんだぞ? そんなこと言ってられなくなるからな」
「そ、そっか! うわぁ~」
「これからは俺が相手をしてやる」
「父さんが?」
フォーダーは妻を亡くしており再婚の予定もない。立派な後継ぎもいる。同性交をしても咎められる要素はない。長男と三男は口を揃えてこう言った。
「まだできるんだ……?」
「できるわ!」
おわり
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