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吸血鬼の章
女王の食事1
しおりを挟む吸血鬼の食事に大切なのは人間の感情を充分に高めてやること。より質の高い食事がしたいなら暴力が必要だ。暴力的であればあるほど美味で腹持ちのいい食事にありつける。もし最上の食事を望むなら殺しは外せない。絶命寸前の人間が放つあれは甘露に等しい。
しかし殺しは後始末が手間だ。死体の処理をいい加減にすると人間の間で大きな騒ぎになりかねない。それを避けるために全掃工業を使う。彼らの手に掛かれば惨劇の痕跡は何一つ残らない。呼べば全国どこへでも駆け付けてくれるが費用も安くない。結紫たちは人間から巻き上げた金で賄っている。やろうと思えば野生動物のように身一つで生きていくこともできるが、そういう生き方をする吸血鬼はほぼいない。人間だった頃のように文化・文明に囲まれた生活を好む。
さて今日は碧以の運転で街に出た。運転はここ数日で習得した。例えどんな大事故を起こしても警察の世話になることはない。怪我の心配もしなくていいので練習はとても捗った。助手席には結紫、後部座席には紫束と飯田が座っている。車内の会話はほとんどなかった。吸血鬼同士の会話は人間に聞かせられない内容ばかりだし、飯田には必要最低限の発言しか許されていない。四人の中で一番長身で逞しい飯田が緊張で縮こまっていた。
車を降りると二手に別れた。結紫は碧以を連れ、自分のごはんのついでに普段の食事のやり方をレクチャーしに行く。嬲る犯す殺すのフルコースはたまの贅沢で、いつもはキャッチ&リリース。ほどほどに痛めつけて犯して殺さない。これなら当事者の記憶の改竄だけで済む。紫束と飯田はSMクラブに向かった。
「紫束ちゃん、女王様感あると思ってたけどやっぱり……」
「分かるけど、俺たちはだいたいSだから」
人間からしたら吸血鬼は総じてSだ。苛み、虐げ、死なせるのS。しかし下僕は何に使うのか。虐めるだけなら家でもできる。気になった碧以は帰宅後直接本人に訊いてみた。
「言いたくないなら全然言わなくていいんだけど、女子はごはんどうしてるのかなーって、ちょっと気になっちゃったっていうか。気を悪くしたらごめん」
「別にいいけど」
ざっくりと説明してくれた。SMクラブを選んだことに特に意味はない。紫束の姿は認識させず、飯田一人の体で入店。始めは女王様に飯田を責めさせ、徐々に形勢逆転。飯田が関節をきめながら女王様を犯した。紫束は絞め落とされた女王様に鞭打って起こす他は、近くにいて出てきたもやもやを吸収していた。最後は飯田に命じて普通に気持ちよくいかせてあげた。最初高飛車だった女王様が怒ったり怯えたり、帰る頃には雌奴隷になったのが面白かったそうだ。
食事には様々な方法がある。自ら手を下さずとも恐怖と快楽が引き出せればいい。碧以も最初は結紫が出したのを吸ったことを思い出した。行為に一切参加せずエネルギーを摂ることも可能だ。だがこういう方法は主流ではない。メニューに変化をつけたい吸血鬼がやる遊びのようなもの。もっと獰猛に奪い取るのが本来の作法だ。
紫束と共に帰宅した飯田は、主の滞在中には珍しく丸一日の休暇を与えられていた。日頃の睡眠不足を補うのが最優先事項だ。シャワーを浴びて軽く食事をしベッドに入る。今日は吸血鬼たちと車で移動して精神的に疲労した。同じ家で寝起きしていても、狭い空間で長時間となると気疲れする。
昨夜の予定を聞かされたのは結紫たちと別れてからだった。クラブまで短い距離を歩いて向かう。人ごみの中にいてさえ、非凡なる美貌の主は注目を集めない。求める者にしか見えないのだと説明されている。見えないものをどうやって求めるのかと訊き返せる関係ではなかった。彼らがそう言うならそうなのだ。ただこの生きた宝石のような紫束がひっそりと暮らしているのはなんとも勿体無いことだと感じていた。
クラブでの遊びはバラ鞭から始まった。紫束の仕置に比べたら撫でられているように生温く、飯田は退屈に感じた。
「へったくそ」
「は? なんですって?」
「次つまんないことしたら反撃しますんで、よろしく」
「なっ…… 奴隷が生意気を言うんじゃないよ!!」
全裸で四つん這いの飯田からの煽りに激昂した女王様は再び鞭を振るった。プロとして無意識に加えた手心はこの客には余計だった。俄かに立ち上がり予告通りボディーに一発お見舞いする。プロの格闘家の打撃に、女王様は声も出せずうずくまった。既に紫束の精神干渉を受けている彼女は店に助けを求めない。どうにか持ち直して次の鞭を振るう。今度は往復ビンタを返され涙目になった。
「この……!」
なけなしのプライドを頼りに振り下ろした鞭を軽くいなされ、床に引き倒された。力任せにタンガを剥ぎ取られ、ビスチェとガーター、ロングブーツだけにされてしまう。飯田は女王様をうつ伏せに押さえつけて、無防備な股間を強引に貫いた。
「やっ、痛いっ、あぁー!!」
「ははっ、処女かよ」
前戯もなく貫かれた故の痛みと知りつつ、抵抗する女王様を嘲る。紫束に見られながらやるのは久し振りだった。性交自体は久し振りでもない。お役目のない期間は自由だ。しっかり遊んでおいたお陰で紫束の用命に沿った行為ができた。
女王様が愛液を出して大人しくなってきたところで、飯田は彼女を締め落とした。大股を開いて失神する女王様の股座に、紫束が乗馬鞭の一振りを浴びせる。悲鳴と共に意識を取り戻した女王様はまた犯された。ビスチェも脱がせ、白い乳房も鞭の餌食にする。快感、恐怖、痛みを何度も繰り返し与えた。女王様の鍍金はすっかり剥がれ落ちて、だらしなく開いた口からひいひい情けない鳴き声を出している。
気付けの鞭を振るう以外、紫束は女王様の椅子で組んだ足をぷらぷらと揺らしながら二人の交配を眺めていた。ときおり送られる飯田の物欲しそうな視線は無視された。紫束は本物の支配者なのだ。そこで這いつくばるメス豚のように、求めれば手に入れられる安物ではない。
飯田は気が昂って眠れなかった。紫束に見られながらのセックスはよかった。相手が紫束ならもっとよかった。飯田は下着を下ろして男根を握った。こういうとき思い描くのは紫束と初めて出会ったときのことが多い。
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