極悪令息と呼ばれていることとメシマズは直接関係ありません

ちゃちゃ

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9 え!?呪いですか?

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 呪い!?呪いって悪意を持って対象を苦しめるあの呪い!?
 
「作ったご飯を他の人が食べた時だけ不味くなる呪い……」
「何の意味があるんだ」
「しかも自分が料理しないなら何のダメージも与えられない呪い……」
 
 食堂にいるみんなもザワザワしている。そうだよな、そんな訳分からん呪いかけないよな。
 
「いや、呪いである可能性は高い」
 
 ガルロさんがレオンさんの意見に同調した。え、そうなの?
 
「エレン、いつから作った料理が美味しくなくなることが分かったんだ?」
「えと、俺が気づいたのは料理にハマってから数ヶ月経ってからだけど、両親とか周りの人は最初から分かってたみたい」
「なら、生まれた時か、それ以前からエレンに何らかの呪いが掛けられていたと思う」
「え、でも俺が料理好きになるかは分からないんじゃ……」
 
 俺が疑問を口にすると、レオンさんが答えてくれる。
 
「エレンくん、ピンポイントで具体的な呪いを掛ける方法も勿論あるけど、そうじゃない呪いもある。何らかの状態になった時に発動する呪いや、ある年齢に達したら起こる呪いも。その場合呪った人の特定が難しく、呪い自体も高度なため、犯人の特定も解呪も難しいんだ」
「そんな……」
 
 俺のメシマズの原因が呪いかもしれないと分かったところで、直るか分からないなんて……。悲しくて目が潤んでしまう。
 
「あぁ、エレンくんすまない! 泣かせるつもりじゃ!」
「泣いてません」
 
 本当だ。泣いてない。目がぼやっとするけど涙は流してない。レオンさんが俺の腕を引いて、カウンター越しに抱きしめる。
 
「本当にごめん。料理が上手くいかないのは、君の努力と情熱が足りないからじゃなくて、それ以外が原因なんだと言いたかったんだ。エレンくんの料理が好きな気持ちも、人に食べてもらって喜んで欲しいという気持ちもすごく伝わってくるから、悲しんで欲しくなくて……。でも結局悲しませちゃったね。泣かせてしまってごめん」
「だから、泣いてません」
 
 レオンさんが抱きしめたので、肩口に顔を押し当て、目をぬぐう。
 
「おいレオン、エレンくん泣かせたらオレたちが黙ってないからな」
「そうだぞ、エレンくんがここに来てからオレたちは大体週3来てたのを週6通ってんだ」
「エレンくんはいるだけで癒しなんだぞ」
 
 みんながレオンに文句を言っているが、間接的に俺に言いたいことなんだと分かり、心が温かくなる。レオンさんの肩からお客さんみんなに顔を向ける。そしてガルロさんの顔を見る。
 
「あの……俺、料理はまだ多分下手くそだけど、ここで働くのもみなさんと話すのも大好きなので、出来れば続けたいです」
「エレンが居てくれたら助かる。それにエレンは一生懸命だし、一緒に働いていて楽しい。エレンさえ良けりゃ、続けてくれると嬉しい」
「ガルロさん……! ありがとうございます!頑張ります」
 
「看板息子のエレンくんが辞めたら他の食堂に浮気するところだったよ」
「おい! そもそもうちはエレン目当ての客は出禁だ」
「見てるだけなら良いだろ」
「ダメだ。減る」
「実の娘みたいに過保護じゃん……」
 
 ガルロさんとお客さんたちがワイワイと話している。良かった、俺が呪われている可能性が高いと知れてみんなにも心配かけたが、いつものような雰囲気に戻って安心した。
 
 
「エレンくん」
 
 レオンさんがカウンターから移動して、いつの間にか隣に来ていた。真面目な顔で俺を見つめる。
 
 
「本当に呪いかどうか、呪いなら解呪出来るのか、知りたいかい?」
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