極悪令息と呼ばれていることとメシマズは直接関係ありません

ちゃちゃ

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29 心機一転?

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 暑さが残りつつ、朝夕には一枚上着が必要になってきた。
 今日から学校が始まる。学校指定の濃紺のジャケットを羽織り馬車へ乗り込んだ。
 
 一夜明け、レオに言われた言葉を反芻しながら、自分自身の気持ちを考えていた。キールたちに「黒だから悪い」と言われ、当時はショックで落ち込んで、また傷つきたくないから拒絶した。その後は、なんか不貞腐れていたというか、意地になっていたというか……、まぁやさぐれていた状態だったんだなと今なら分かる。正直とても酷いことを言われたと今でも思っているが、当時はみんな10歳の子どもだったし、知らなかったとはいえ倒れるほど不味いクッキー食べさせた俺も悪かったし、成人した今、再度謝罪しつつ歩み寄りというのは必要かもしれない。
 
 それに、俺はこの休みで成長したんだ。一皮剥けたんだ。レオと旅をして、初めての経験もたくさんして、自分自身を発見出来た。料理の謎も、保護魔法のことも知れて、今後の方針も決まってる。方針が決まったら悩んだり不安になったりしてたのが不思議なくらい真っ直ぐ前に進める気がする。生きるための土台がしっかりしたというか、何かあってもブレずにいられるというか。リティーダ共和国の愛し子とか言うのは、レオから聞いただけだからまだよく分からないけど。
 
 もし黒だの悪魔だの言われても微笑むくらいの余裕が、今の俺にはある。新しいエルティア・クロスフェードをご覧頂こうじゃないか。俺のやる気は満ち満ちに満ち溢れている。
 
 
 
 
 
 
 
 
 もう今日は帰宅しても良いですか? 解散しましょう、そうしましょう。朝には余るほどあった意欲は既に底をついた。この後の先導は一番爵位の高い人に任せようと、鮮やかで透明感のある翠色みどりいろの瞳を持つフリードリヒに目線を向けた。
 フリードリヒ・メンブルク。瞳より色の濃い緑の髪持つ公爵家の嫡男で、俺は何度かしか喋ったことがない。俺とほぼ同じか少し低い背丈で、綺麗な顔立ちをしている。彼の曽祖父が王族公爵であったため、公爵家の中でも一番力を持っている。噂では人当たりがよく、みんなに優しく成績優秀とのことだ。俺の視線を受け、俺や考えを読めたのか、フリードリヒは笑って軽く頷いた。
「今回の課題で同じグループになったフリードリヒだ。よろしく。一旦ここは私が進行を進めていくね」
「構わない」
 
 むしろ助かる。
 
「じゃあ知ってるけど一応みんな自己紹介しようか」
「僕はキール・プリムローズだ」
「………リアム・ゴードン……」
「エルティア・クロスフェードです」
 
 なんでよりによってこの4人なんだよ。一クラス24人しかいないし、爵位も考慮するとこの4人になってしまうのは仕方ないけどさ……。今のところキールもフリードリヒの前で突っかかることはしなさそうだ。
 
「私たちのグループ課題は『首都アキュレの更なる活性化への課題』だね。一ヶ月後に発表だから、とりあえず各自考えてきてもらって、意見を出し合うために今週の放課後に一度集まろうか」
「分かった」
「…………(こくり)」
 
「エルティアくんはいつなら都合が良い?」
「俺は放課後ならいつでも」
「そうか、キールくんとリアムくんはいつが良いかな」
「僕もいつでも大丈夫だ」
「………(こくり)」
 
 リアム、喋れ。キールとは普通に話すのかな。小さい頃もリアムはキールにくっ付いていたけど、もうちょっと喋ってた気がする。180以上ある長身とガッシリとした体格に加え、口数が少ないから存在だけで圧が凄い。多分クラス内でその圧を感じてないのはキールとフリードリヒだけだと思う。俺に対する悪意は感じないけど、無機質な監視の視線を感じる。二人きりになったらそれも話してみるか。
 
「じゃあ次は金曜の放課後に集まろう。各自提案を持ち寄ってくるということで」
「はい、じゃあまた金曜に……」
「あ、エルティアくんに少し話したいことがあるから、まだ残っててくれるかな?」
「え……? はい……」
 
 了承以外の返事は許されない、有無を言わさないお願い・・・に、見た目は柔らかくともやはり公爵家の人間だなと再認識した。キールはチラチラとこちらを見ていたけど、「じゃあな……」とポツリと口にして、リアムを引き連れて出ていった。なんか休みの間にあいつの勢い落ちたな……俺に飽きたのかも。フリードリヒがいるからかもしれないけど。
 
 二人の足音が完全に消えるのを待って、俺はフリードリヒに向き合った。
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