極悪令息と呼ばれていることとメシマズは直接関係ありません

ちゃちゃ

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38 ファーストキス

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 ちゅ……ちゅ……。ついばむような口付けだけで、俺はもう心臓が過労で止まってしまうんじゃないかと思うくらいドキドキしてる。体から心臓の音が聞こえる。手が震えてレオの服の胸部分を掴んだ。何度か口付けを交わし、レオの顔が離れたのを感じて目を開ける。
 
「ティア? どうだった? 嫌だった?」
「……いやじゃ……ない」
「良かった……。オレはティアが好きだよ。一生懸命で、素直で頑固で、オレの前では涙脆くて、カッコ良いのに笑うと可愛くて。ティアが愛し子とか関係なく、ティアを守り抜きたい。ティアは、オレのこと好き? 嫌い?」
「それは……好きだよ……。レオは……俺にとって初めての特別なんだ……」
「特別?」
「運命共同体というか……他の人とは違うから……」
「どう違うの?」
「え……と…。ずっと一緒にいても素でいられるし、甘えられるし、これから先も傍にいたいなって思うし、レオにとっても俺が特別だと良いなって思う」
「オレにとってティアはもう特別だよ」
「本当に?」
「ティアだけが好きなんだよ。キスしたくなるくらい。ティアはオレ見てドキドキする?」
「………さっきからする……」
「あぁ、オレのこと意識してくれたんだ、男として」
「そっ……そうなのかな……。好きとか嫌いとか、今まで考えたこと無かったから……」
「考えて。オレがティア以外に特別な人がいたらどう思う?」
「……いやだ……」
「ティアより他の人を優先したら……?」
「……つらい……」
「それだけなら友達を独占したいだけとも思えるけど、オレとキスしたいと思ってくれたなら、それは恋愛感情だよ。ね、ティア。オレはティアとキスしたい。ティアは?」
 
 俺は、レオと……。
 
 レオと会えない間、寂しかった。早く週末にならないかなって待ち遠しかった。
 自分の黒い髪と目は嫌いでは無かったけれど、その事が自分にとって良かったことは一度も無かった。だが、そのおかげでレオと出会い、レオの探していた愛し子だと分かり、これからもレオとの繋がりは消えないのだと分かって嬉しかった。初めて良かったと思った。愛し子だからという理由だとしても良かった。レオを失うことの方が辛かった。
 望んでも、良いのだろうか。それ以上を求めても、失わないだろうか。
 
「俺……家族や環境には恵まれていると思う。生きていくのに何の不便も無くて……。でもこの容姿で家族や使用人たち以外からは避けられて、友人もいなくなって……。失うのが怖いんだ。与えられたものが無くなるんじゃなくて、元々無いことを嘆くんじゃなくて、自分が望んだものがいつか消えるかもしれないと考えてしまって、それが一番怖い」
「ティア。オレは消えない」
「本当?」
「ああ。オレはティアとずっと共にいる。どこへでもいつだって、何があろうと、オレはティアをずっと愛すよ」
 
 俺が臆病だから。誰かから好意を向けられることも、その未来を考えることも初めてだから。ちゃんと言葉にしてくれているレオの気持ちを試して確認してしまった。
 本当に本当だろうか。まだ少し怖い。だって未来のことなんて分からない。だけど、レオの返事を聞いて、俺は思わず抱きついた。
 
「レオ……ありがとう……。それでもまだ、不安なんだ。こんな意気地のない俺でごめん。でも、俺も……、俺もレオが好きだよ。大好き!」
 
 俺が告白した次の瞬間には、再びレオに唇を奪われていた。ちゅ、ちゅとついばみ、上唇と下唇をレオの唇で軽く挟まれる。唇同士の戯れを心地よく感じていると、ペロリと舌で舐められた。
 
「……っん……」
 
 びっくりして口を開けると、そのままレオの舌が中に入ってきた。レオがオレの舌を絡めとる。甘い味がした。もっと味わいたくて俺からも舌を伸ばす。もっと近付きたくて、レオの首に腕を回した。
 お互い唇を離さないまま、レオが俺をひょいと持ち上げ、ソファーに座っているレオの膝に向かい合うようにして乗せた。背中をレオの腕で抱きとめられ、横並びに座っていた時よりも、体が密着して、近い。
 
「レオ……レオ……好き……近くにいて……」
「ああ……もう……本当に可愛い。ティア、好きだよ。ティアが不安になるならずっと好きだと言い続けるよ。むしろ一つになれるまで、蕩けるまで、たくさんキスしようね」
「ん……レオとのキス、好きだよ……。なんだか凄く甘くて……」
「あぁ、ティアは知らないんだね。相性が良い人とのキスは甘いんだよ。キスというより、唾液とか体液全般が甘く感じるんだ。オレは前から気付いていたけど、オレたちは心も体も通じ合えるみたいだ」
「そうなの……? 嬉しい……。レオの前だと子どもっぽくなっちゃうのは相性と関係ある?」
「それはティアがオレの前だと甘えて凄く可愛くなるからだよ。可愛い顔を見せるのも甘えるのも、オレの前だけにしてね」
 
 そう言って、レオは俺の頬を撫でてまた口付けた。俺は甘くて気持ちよくて、ただひたすらレオを受け入れる心地良さを感じていた。
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