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55 初デート
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「わぁー……綺麗……」
「黒水晶と紫水晶だ。きっとティアに似合うよ。それぞれの色を身に付けるのも良いかなと思ったけど、同じ物を身に付けるのも良いよね」
「うん……」
「付けてみる?」
「……うん」
俺はそのノンホールピアスに目がくぎづけになった。耳に挟むタイプの耳飾りで、ずっと付けていても負担がないものだ。挟む部分は銀色でそこからシンプルな長短二つのチェーンが付いている。短いチェーンには紫の水晶が、長いチェーンには黒い水晶が付いていて、男性が付けていても華美過ぎない品のある耳飾りだ。
レオがピアスの入った箱から丁寧に取り出した。少し緊張していると、俺の耳たぶをレオがちゅっと啄んだ。思わず叫びそうになったが、それより先に店に張り付いているオーディエンスが湧いて、ドア越しにも盛り上がっているのが聞こえると、驚きと混乱で固まった。衆目に晒されているようで恥ずかしい……。
「左耳から付けるね」
俺以外誰もいないかのように振る舞うレオ大物すぎる。とりあえず窓側に背を向けてレオに左耳を差し出す。耳たぶにレオの手が触れて思わずビクッとなりつつ、無事にピアスが装着された。右耳も同じく付けると、存在を消していた主人が鏡をそっと出して見せる。
「ティア、すごく似合ってるよ」
「わぁー本当にレオの色だ……とても綺麗……」
「こちらの紫水晶と黒水晶は同じ産地ですが、黒水晶自体とても珍しいものです。またこちらの紫水晶の輝きは一級品で、お客様のその美貌にも劣らないかと」
「同じものはあるか」
「はい、ございます。黒水晶が大変希少なため、お二人様分しかご用意が出来ませんが」
「それは良いな。購入しよう。そのまま付けていくから出してくれ」
「かしこまりました」
レオがサクサクと話を進めていくが、希少な水晶とか一級品とか聞こえたぞ……!
「レ、レオ! すごく気に入ったけど、こんな希少価値の高そうなピアス、怖くて買えないよ……」
「初デートの記念で、俺がティアに揃いの物を買いたいだけなんだ。将来の旦那に甲斐性を持たせてくれ」
「だ!」
旦那……。いや、どちらが女房とか旦那とかないけど……そうか、旦那様……。ピアスが入っていた箱に目をやると、値段の項目に『従業員にお問い合わせください』って書いている。おそらく自分の想像した金額より0が2つくらい多いかもしれない。お父様ならこの水晶の価値が分かるかもしれないな。
奥から再び店の主人が現れ、箱の蓋を開けた。こちらは俺の付けているピアスとほぼ同じだが、短いチェーンには黒の水晶が、長いチェーンには紫の水晶が付いていて、長さが逆になっている。
「こちらのピアスは、実は対になるように作られましたが、希少でお値段もするため、同時にご購入頂くことは難しいと思っておりました。本日ご縁が出来たのは運命であったのではと大変嬉しく思います。お礼に、水晶ではございませんが、紫黒石のブレスレットをお二人にプレゼントさせて頂けませんか」
そう言ってピアスよりも一回り大きい箱に入ったブレスレットを見せてきた。ピアスと同じく銀色のブレスレットで、中央に紫がかった黒色の宝石が埋め込まれるように中に入っている。ゴテゴテしてなくて、普段使いでもパーティーでも付けられそうだ。パッと見は黒色が強めだが、光の反射で紫色が輝いて美しい。紫黒石という宝石は初めて聞いたが、どう見ても高そうなのにお礼で貰って良いものだろうか……。
「良い品だ。ありがとう。また装飾品を購入する際はこちらを贔屓にするとしよう」
「ありがとうございます」
返事に迷っている間にまたもやレオが話を進めていく。まぁレオが良いと言うなら大丈夫なのだろう。
「ブレスレット、レオと俺の色が混じってるみたいで、綺麗で嬉しい」
「んん゛っ……うん、そうだな。ティア、オレにもピアスを付けてくれるか。」
「うん!」
レオが俺にやった時のように耳にキスをしようか迷ったが、外からの視線が消えないために諦めた。左右の耳に付けレオを見上げた。かっこいい。
「似合ってる」
「ありがとう、嬉しい」
レオがブレスレットを一つ手に取り俺の右手首に付けてくれたので、俺も同じようにレオの右手首に付ける。すごい、全身お揃いコーデだ……! 付き合いたてのラブラブカップルのやることだ……金額がドデカいコーデ……しかも一つは国宝だし。
「レオ。ヤバい。俺装飾品目当てに誘拐されちゃうかも……」
「オレがいるから大丈夫。不埒な奴が来たら一発で沈めよう」
意識を?
ピアスなどが入っていた箱も綺麗に包んでくれた主人にレオが支払いを済ませると(硬貨の色を見たかったがレオが俺の顔を胸に押し付けて見せなくした)主人が深々とお辞儀をしながら俺たちを見送った。お店を出た瞬間店の入り口に張り付いていた観客という名の野次馬は蜘蛛の子を散らすように離れていった。何が目的だったんだろう。
「可愛いティアにみんな興味津々だったんだよ」
「俺を可愛いなんて言うのはレオだけだよ」
「それなら周りを牽制しなくて良いからオレとしては嬉しいけど。ティアはどこもかしこも可愛いよ」
「外でそういうの恥ずかしいからやめて」
「二人きりでもティアは照れてるけど?」
「うー……」
「エル?」
「ん?」
名前を呼ばれた方へ顔を向けると、キールとリアムが私服で並んで立っていた。
「黒水晶と紫水晶だ。きっとティアに似合うよ。それぞれの色を身に付けるのも良いかなと思ったけど、同じ物を身に付けるのも良いよね」
「うん……」
「付けてみる?」
「……うん」
俺はそのノンホールピアスに目がくぎづけになった。耳に挟むタイプの耳飾りで、ずっと付けていても負担がないものだ。挟む部分は銀色でそこからシンプルな長短二つのチェーンが付いている。短いチェーンには紫の水晶が、長いチェーンには黒い水晶が付いていて、男性が付けていても華美過ぎない品のある耳飾りだ。
レオがピアスの入った箱から丁寧に取り出した。少し緊張していると、俺の耳たぶをレオがちゅっと啄んだ。思わず叫びそうになったが、それより先に店に張り付いているオーディエンスが湧いて、ドア越しにも盛り上がっているのが聞こえると、驚きと混乱で固まった。衆目に晒されているようで恥ずかしい……。
「左耳から付けるね」
俺以外誰もいないかのように振る舞うレオ大物すぎる。とりあえず窓側に背を向けてレオに左耳を差し出す。耳たぶにレオの手が触れて思わずビクッとなりつつ、無事にピアスが装着された。右耳も同じく付けると、存在を消していた主人が鏡をそっと出して見せる。
「ティア、すごく似合ってるよ」
「わぁー本当にレオの色だ……とても綺麗……」
「こちらの紫水晶と黒水晶は同じ産地ですが、黒水晶自体とても珍しいものです。またこちらの紫水晶の輝きは一級品で、お客様のその美貌にも劣らないかと」
「同じものはあるか」
「はい、ございます。黒水晶が大変希少なため、お二人様分しかご用意が出来ませんが」
「それは良いな。購入しよう。そのまま付けていくから出してくれ」
「かしこまりました」
レオがサクサクと話を進めていくが、希少な水晶とか一級品とか聞こえたぞ……!
「レ、レオ! すごく気に入ったけど、こんな希少価値の高そうなピアス、怖くて買えないよ……」
「初デートの記念で、俺がティアに揃いの物を買いたいだけなんだ。将来の旦那に甲斐性を持たせてくれ」
「だ!」
旦那……。いや、どちらが女房とか旦那とかないけど……そうか、旦那様……。ピアスが入っていた箱に目をやると、値段の項目に『従業員にお問い合わせください』って書いている。おそらく自分の想像した金額より0が2つくらい多いかもしれない。お父様ならこの水晶の価値が分かるかもしれないな。
奥から再び店の主人が現れ、箱の蓋を開けた。こちらは俺の付けているピアスとほぼ同じだが、短いチェーンには黒の水晶が、長いチェーンには紫の水晶が付いていて、長さが逆になっている。
「こちらのピアスは、実は対になるように作られましたが、希少でお値段もするため、同時にご購入頂くことは難しいと思っておりました。本日ご縁が出来たのは運命であったのではと大変嬉しく思います。お礼に、水晶ではございませんが、紫黒石のブレスレットをお二人にプレゼントさせて頂けませんか」
そう言ってピアスよりも一回り大きい箱に入ったブレスレットを見せてきた。ピアスと同じく銀色のブレスレットで、中央に紫がかった黒色の宝石が埋め込まれるように中に入っている。ゴテゴテしてなくて、普段使いでもパーティーでも付けられそうだ。パッと見は黒色が強めだが、光の反射で紫色が輝いて美しい。紫黒石という宝石は初めて聞いたが、どう見ても高そうなのにお礼で貰って良いものだろうか……。
「良い品だ。ありがとう。また装飾品を購入する際はこちらを贔屓にするとしよう」
「ありがとうございます」
返事に迷っている間にまたもやレオが話を進めていく。まぁレオが良いと言うなら大丈夫なのだろう。
「ブレスレット、レオと俺の色が混じってるみたいで、綺麗で嬉しい」
「んん゛っ……うん、そうだな。ティア、オレにもピアスを付けてくれるか。」
「うん!」
レオが俺にやった時のように耳にキスをしようか迷ったが、外からの視線が消えないために諦めた。左右の耳に付けレオを見上げた。かっこいい。
「似合ってる」
「ありがとう、嬉しい」
レオがブレスレットを一つ手に取り俺の右手首に付けてくれたので、俺も同じようにレオの右手首に付ける。すごい、全身お揃いコーデだ……! 付き合いたてのラブラブカップルのやることだ……金額がドデカいコーデ……しかも一つは国宝だし。
「レオ。ヤバい。俺装飾品目当てに誘拐されちゃうかも……」
「オレがいるから大丈夫。不埒な奴が来たら一発で沈めよう」
意識を?
ピアスなどが入っていた箱も綺麗に包んでくれた主人にレオが支払いを済ませると(硬貨の色を見たかったがレオが俺の顔を胸に押し付けて見せなくした)主人が深々とお辞儀をしながら俺たちを見送った。お店を出た瞬間店の入り口に張り付いていた観客という名の野次馬は蜘蛛の子を散らすように離れていった。何が目的だったんだろう。
「可愛いティアにみんな興味津々だったんだよ」
「俺を可愛いなんて言うのはレオだけだよ」
「それなら周りを牽制しなくて良いからオレとしては嬉しいけど。ティアはどこもかしこも可愛いよ」
「外でそういうの恥ずかしいからやめて」
「二人きりでもティアは照れてるけど?」
「うー……」
「エル?」
「ん?」
名前を呼ばれた方へ顔を向けると、キールとリアムが私服で並んで立っていた。
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