58 / 79
56 俺の彼氏を紹介します
しおりを挟む
「キール、リアム。こんなところで珍しいね」
ここは貴族街なので、二人がいるのも不思議ではないが、俺が毎週末マルタ食堂に通っていた間に一度も会ったことが無かったので、そう頻繁に街まで外出してるようには見えない。まぁほとんどの物は使用人が買ってくる為、自分たちが街へ出てくる必要無い。そんな中、わざわざ二人きりでお出かけするとすれば……。
「あ、もしかしてキールたちもデート?」
「な! で!」
「そうだ」
「な! リアム! ちが、違うぞ! ちが……え? たちも?」
「君たちがティアのお友達かな?」
「えっと……?」
「初めまして。ティアの恋人のレオンです。もしかしてお二人はティアの幼なじみかな」
「はい、そうです。オレはゴードン子爵家次男リアムです」
「……プリムローズ侯爵家末子キールです……」
「二人ともよろしく。オレのことはレオンと呼んで欲しい。今のところは」
「今のところはですか……分かりました。エルティアをよろしくお願いします」
「それはもう末永くティアを幸せにすると、君たちの前で誓おう」
「ちょ、ちょっとレオ……」
「エル……」
「ん?」
キールがこちらを伺うように見上げてくる。
「エル、今日デートだったの?」
「そうだよ」
「……楽しかった?」
「うん、初めてこんな風に出かけたんだけど、楽しかったよ」
「その……髪と目の色を変えてるのは僕のせい?」
あ……そうだった。今は一応変装しているんだった。フリードの言う通り顔は変えてないから俺を知っている人が見ればすぐに気付いてしまう。
「これは念の為だよ。噂を信じる人がいてゴタ付くのも嫌だし。平民街では俺のこと知られてないから必要ないんだけど」
「そか……ごめんね……」
「キールのせいじゃないよ。噂が出たのは俺のせいでもあるし、広まったのは別の理由がある」
そう、アキスト王国の王族たちが貴族集めて話を盛ってバラ撒いたからな。
「別の?」
「うん、でも今はまだ内緒」
「むぅ……」
「あはは。キールは本当に可愛いね」
小動物みたいで。
「「「!!!?」」」
キールは顔が真っ赤に、そんなキールをリアムは後ろから抱き寄せ、俺はレオに引っ張られて腕の中だ。
「ティア、オレがティアに言った言葉を他の人に言って試してる?」
「なんのこと?」
「あ、自分から言うのは平気なパターンか」
四人でいるのに二人ずつ分かれて小声で話し合う。向こうの二人の会話は聞こえないがリアムがキールの耳元でボソボソ喋ってる。キールは頷くおもちゃみたいにずっとこくこく首を動かしている。内容は知らない方が良さそうだ。というか進展早くない? 俺が言えることじゃないけど。
目立つ四人が目立つ行動をしていたら仕方の無いことだが、街の人たちが俺たちを囲うように遠巻きに見ていた。衆人環視の状態だ。今日そういうの多いな。
そろそろ帰宅しようとキールとリアムに別れの言葉を告げるため口を開いた。
「ティア!」
雑踏の中、聞き覚えのある声が響き人の壁が掻き分けるまでもなくサッと開いたかと思えば、そこから茶髪と茶色の瞳を持つ美丈夫が現れた。家族とレオ以外で俺をティアと呼ぶ人はいない。
「お兄様!」
「ティア! 会いたかった!」
走り寄るお兄様が俺の前に止まるとこちらをジロリと睨んだ。正確には俺の頭の上の……。そこで俺はようやくレオに抱きとめられていることを思い出した。レオに触れられることに徐々に慣らされている弊害が……!
「あの……お兄様……この人は……」
「分かっている」
「え?」
「事前に話は聞いている。それも含めて今日帰ったら話そう。そこの男も一緒にな」
「初めまして、オルフェス様。レオンと申します。どうぞよろしくお願いします」
「ティアを抱き締めたまま挨拶するな、ばぁぁぁか!」
たくさんの視線に耐えらなくて、助けて欲しい気持ちを込めてキールたちを見ると「じゃあまた学校で」と二人は無情にも去って行った。酷い。
その後、ひょっこり現れたお兄様の側近であるシャムが何とかお兄様を落ち着かせた。シャムは少し離れたところでこの状況を面白がってしばらく眺めていたのだろう。性格の悪い奴なのに有能で、確かお兄様の二歳年上だったはず。今回の仕事でもお兄様と一緒だったので、帰宅して俺のことを聞き二人でそのままやって来たのだろう。多分『疲れているのに手間焼かせやがって』というシャムのちょっとした嫌がらせに違いない。ともあれ刺さるような視線から逃れ、やっと帰宅することに成功したのだった。
「オルフェス、よくぞ帰った。無病息災であったか?」
「はい。お父様もお母様もお元気そうで何よりです」
「うむ。他国の情勢も知りたいが、まずは皆で食事をすることにしよう」
お兄様とレオに左右それぞれの手を取られ帰宅したのが一時間前。久しぶりにお父様が定刻通りに帰宅出来るとジェイムズから聞いて、レオ含め久しぶりに家族全員で夕食を摂ることとなった。
お兄様はレオのことを侍従やジェイムズから聞いていたのか苛立ちや冷たい視線は隠さないものの、お父様とお母様の前でレオと口論になるようなことは無かった。
家族間で食事をする際は上座や下座などは設けず、お父様とお母様は横並びで座り、向かいにレオ、俺、お兄様が座っている。食事が終わった今は給仕から新しいお茶を用意され、話のきっかけを待っているところだ。
「機密性の高い内容だ。申し訳ないがジェイムズ以外は外へ」
お父様の一言で使用人たちはサッと機敏に出ていった。ジェイムズは使用人たちが離れたことを確認し、扉を閉めその前に立った。
「既に知っての通り、レナセール国はいつ内戦が始まってもおかしくない。情報を共有し、万が一の場合我々がどう動くかを決めておきたい」
俺自身の未来を決める家族会議が始まった。
ここは貴族街なので、二人がいるのも不思議ではないが、俺が毎週末マルタ食堂に通っていた間に一度も会ったことが無かったので、そう頻繁に街まで外出してるようには見えない。まぁほとんどの物は使用人が買ってくる為、自分たちが街へ出てくる必要無い。そんな中、わざわざ二人きりでお出かけするとすれば……。
「あ、もしかしてキールたちもデート?」
「な! で!」
「そうだ」
「な! リアム! ちが、違うぞ! ちが……え? たちも?」
「君たちがティアのお友達かな?」
「えっと……?」
「初めまして。ティアの恋人のレオンです。もしかしてお二人はティアの幼なじみかな」
「はい、そうです。オレはゴードン子爵家次男リアムです」
「……プリムローズ侯爵家末子キールです……」
「二人ともよろしく。オレのことはレオンと呼んで欲しい。今のところは」
「今のところはですか……分かりました。エルティアをよろしくお願いします」
「それはもう末永くティアを幸せにすると、君たちの前で誓おう」
「ちょ、ちょっとレオ……」
「エル……」
「ん?」
キールがこちらを伺うように見上げてくる。
「エル、今日デートだったの?」
「そうだよ」
「……楽しかった?」
「うん、初めてこんな風に出かけたんだけど、楽しかったよ」
「その……髪と目の色を変えてるのは僕のせい?」
あ……そうだった。今は一応変装しているんだった。フリードの言う通り顔は変えてないから俺を知っている人が見ればすぐに気付いてしまう。
「これは念の為だよ。噂を信じる人がいてゴタ付くのも嫌だし。平民街では俺のこと知られてないから必要ないんだけど」
「そか……ごめんね……」
「キールのせいじゃないよ。噂が出たのは俺のせいでもあるし、広まったのは別の理由がある」
そう、アキスト王国の王族たちが貴族集めて話を盛ってバラ撒いたからな。
「別の?」
「うん、でも今はまだ内緒」
「むぅ……」
「あはは。キールは本当に可愛いね」
小動物みたいで。
「「「!!!?」」」
キールは顔が真っ赤に、そんなキールをリアムは後ろから抱き寄せ、俺はレオに引っ張られて腕の中だ。
「ティア、オレがティアに言った言葉を他の人に言って試してる?」
「なんのこと?」
「あ、自分から言うのは平気なパターンか」
四人でいるのに二人ずつ分かれて小声で話し合う。向こうの二人の会話は聞こえないがリアムがキールの耳元でボソボソ喋ってる。キールは頷くおもちゃみたいにずっとこくこく首を動かしている。内容は知らない方が良さそうだ。というか進展早くない? 俺が言えることじゃないけど。
目立つ四人が目立つ行動をしていたら仕方の無いことだが、街の人たちが俺たちを囲うように遠巻きに見ていた。衆人環視の状態だ。今日そういうの多いな。
そろそろ帰宅しようとキールとリアムに別れの言葉を告げるため口を開いた。
「ティア!」
雑踏の中、聞き覚えのある声が響き人の壁が掻き分けるまでもなくサッと開いたかと思えば、そこから茶髪と茶色の瞳を持つ美丈夫が現れた。家族とレオ以外で俺をティアと呼ぶ人はいない。
「お兄様!」
「ティア! 会いたかった!」
走り寄るお兄様が俺の前に止まるとこちらをジロリと睨んだ。正確には俺の頭の上の……。そこで俺はようやくレオに抱きとめられていることを思い出した。レオに触れられることに徐々に慣らされている弊害が……!
「あの……お兄様……この人は……」
「分かっている」
「え?」
「事前に話は聞いている。それも含めて今日帰ったら話そう。そこの男も一緒にな」
「初めまして、オルフェス様。レオンと申します。どうぞよろしくお願いします」
「ティアを抱き締めたまま挨拶するな、ばぁぁぁか!」
たくさんの視線に耐えらなくて、助けて欲しい気持ちを込めてキールたちを見ると「じゃあまた学校で」と二人は無情にも去って行った。酷い。
その後、ひょっこり現れたお兄様の側近であるシャムが何とかお兄様を落ち着かせた。シャムは少し離れたところでこの状況を面白がってしばらく眺めていたのだろう。性格の悪い奴なのに有能で、確かお兄様の二歳年上だったはず。今回の仕事でもお兄様と一緒だったので、帰宅して俺のことを聞き二人でそのままやって来たのだろう。多分『疲れているのに手間焼かせやがって』というシャムのちょっとした嫌がらせに違いない。ともあれ刺さるような視線から逃れ、やっと帰宅することに成功したのだった。
「オルフェス、よくぞ帰った。無病息災であったか?」
「はい。お父様もお母様もお元気そうで何よりです」
「うむ。他国の情勢も知りたいが、まずは皆で食事をすることにしよう」
お兄様とレオに左右それぞれの手を取られ帰宅したのが一時間前。久しぶりにお父様が定刻通りに帰宅出来るとジェイムズから聞いて、レオ含め久しぶりに家族全員で夕食を摂ることとなった。
お兄様はレオのことを侍従やジェイムズから聞いていたのか苛立ちや冷たい視線は隠さないものの、お父様とお母様の前でレオと口論になるようなことは無かった。
家族間で食事をする際は上座や下座などは設けず、お父様とお母様は横並びで座り、向かいにレオ、俺、お兄様が座っている。食事が終わった今は給仕から新しいお茶を用意され、話のきっかけを待っているところだ。
「機密性の高い内容だ。申し訳ないがジェイムズ以外は外へ」
お父様の一言で使用人たちはサッと機敏に出ていった。ジェイムズは使用人たちが離れたことを確認し、扉を閉めその前に立った。
「既に知っての通り、レナセール国はいつ内戦が始まってもおかしくない。情報を共有し、万が一の場合我々がどう動くかを決めておきたい」
俺自身の未来を決める家族会議が始まった。
12
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜
たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話
騎士団長とのじれったい不器用BL
発情薬
寺蔵
BL
【完結!漫画もUPしてます】攻めの匂いをかぐだけで発情して動けなくなってしまう受けの話です。
製薬会社で開発された、通称『発情薬』。
業務として治験に選ばれ、投薬を受けた新人社員が、先輩の匂いをかぐだけで発情して動けなくなったりします。
社会人。腹黒30歳×寂しがりわんこ系23歳。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
龍の寵愛を受けし者達
樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、
父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、
ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。
それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて
いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。
それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。
王家はある者に裏切りにより、
無惨にもその策に敗れてしまう。
剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、
責めて騎士だけは助けようと、
刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる
時戻しの術をかけるが…
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
新訳 美女と野獣 〜獣人と少年の物語〜
若目
BL
いまはすっかり財政難となった商家マルシャン家は父シャルル、長兄ジャンティー、長女アヴァール、次女リュゼの4人家族。
妹たちが経済状況を顧みずに贅沢三昧するなか、一家はジャンティーの頑張りによってなんとか暮らしていた。
ある日、父が商用で出かける際に、何か欲しいものはないかと聞かれて、ジャンティーは一輪の薔薇をねだる。
しかし、帰る途中で父は道に迷ってしまう。
父があてもなく歩いていると、偶然、美しく奇妙な古城に辿り着く。
父はそこで、庭に薔薇の木で作られた生垣を見つけた。
ジャンティーとの約束を思い出した父が薔薇を一輪摘むと、彼の前に怒り狂った様子の野獣が現れ、「親切にしてやったのに、厚かましくも薔薇まで盗むとは」と吠えかかる。
野獣は父に死をもって償うように迫るが、薔薇が土産であったことを知ると、代わりに子どもを差し出すように要求してきて…
そこから、ジャンティーの運命が大きく変わり出す。
童話の「美女と野獣」パロのBLです
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる