極悪令息と呼ばれていることとメシマズは直接関係ありません

ちゃちゃ

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70 ワガママと甘やかし

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「オレはここを離れる方が良いと思っている」
 
 レオの真剣な声が聞こえる。うん。それは同意見だ。ここにいても家族や友人たちに迷惑が掛かるし、抵抗も出来ず捕まるだけだろう。
 
「さっきも話したけど、ナルカデアの王陛下に協力を要請する。陛下は……父は私の婚約者であり愛し子でもあるティアを国力の全てを使ってでも守ってくれるだろう。だからナルカデアに向かいたい」
 
 ガルダニア帝国に対抗出来る国はナルカデア王国しかない。他につてもないし、迷惑を掛けるが一番の避難先候補に違いない。ワガママを言うならシドたちを保護する為、レナセール国からの避難民の受け入れもお願いしたいところだ。
 レオの言い方から察するに、やはりレナセール国に行くことをレオは許してくれないらしい。無理を言っている自覚はある。自分の身すら守れるか分からない上に危険な紛争地帯に自ら赴き、さらには理由も分からずガルダニア帝国が俺を狙っているという詰みっぷり。さらにはそんな危険な状況を知っている上でレオに一緒にいて欲しい、つまりは着いてきて欲しいという俺の身勝手な考えに愛想を尽かされても仕方ない。
 それでも……後悔をしないために動きたい。シドたちを失いたくない。
 
 
「ナルカデア王国に向かう道すがら、レナセール国の傍を通るかも・・しれない」
 
 その言葉に耳を疑い、頭をあげる。
 レオは『仕方ないなぁ』というような、いつもの俺を甘やかす顔をしている。
 
「ごめん……ごめんなさい……」
「ティ~ア」
「俺、俺の……」
「ティアの気持ちとオレの希望の折衷案だよ」
「レオを、危険な目に……。それでも、俺……」
「父にティアを紹介したい。早めの婚前旅行としよう。途中でシドたちに会えたらオレたちのことを報告しよう。その時の二人の顔が楽しみだな」
「うん……うん……」
「オレだってシドとラキのことが心配だし、今何もしなければ悪い結果になる気がするんだ。ただの勘だが…。ティアだけを守るなら、どこかで籠城するのが一番だ。信用出来るナルカデア王国に向かいつつ、ナルカデア王国と隣合っているレナセール国を経由する。姿を隠し、紛争地帯に近づかなければ問題なくナルカデア王国に入国できるはずだ」
 
 レナセール国を挟んで東南にナルカデア王国、北西にガルダニア帝国がある。そこから更に南下した位置にアキスト王国がある。アキスト王国は小国だが内陸側の国境は鉱山で囲われており、それ以外の国土は海に面していて侵略されにくい立地であるため、歴史上戦争の経験は少ない。資源を対価に大国に取り入り、同等の扱いをされて来たのがアキスト王国なのだ。そんな国だからこそ俺の身の安全が保証出来ず他国に逃げるのだが。
 ナルカデア王国とガルダニア帝国はレナセール国の分距離が離れているが、危ないことには変わりない。アキスト王国からナルカデア王国までは馬車で約14日間掛かる。レナセール国経由で走る馬車があれば良いが。
 
「レオ、ごめんなさい。ありがとう。本当に、巻き込んでごめんなさい。でも、一緒にいて欲しい、です」
「一蓮托生だよ。そうと決まればやることは二つ」
「二つ?」
「ティアのご家族の説得と、旅路の準備を明日中に」
「……ひぇ……」
 
 
 こればかりは、流石のお母様も大歓迎とはならないだろう。どう説得しようか考える。一つ、自分の身を守れるということを証明する。二つ、ナルカデア王国へ向かうことだけを伝えてレナセール国云々は伏せる。後で怒られるし悲しませてしまうが、仕方ない。強行突破だ。最悪レオと駆け落ちしますと置き手紙を書いて出ていこうか。婚約済なのに駆け落ちは意味分からないが。
 
 一つ目に関しては保護魔法で物理的な攻撃は防げるということを伝え、少なからず俺が魔法を使えるようになったことを見せれば大丈夫だと思う。この三ヶ月間何もしていなかった訳では無い。魔法をコントロールするため、自分自身で試行錯誤していたのだ。使用したことがある魔法を何度も使ってみたり、フリードの弟シェリーくんに『元気になれー』と祈りに行ったりした。シェリーくんに魔法が効いたのかは分からないけれど、日に日に起きていられる時間が増えていると、フリードが嬉しそうに教えてくれた。
 魔力は感じることが出来ても、魔法の使い方がよく分からなかったが、既に使ったことがある温める魔法や冷やす魔法を繰り返し使用していると、魔力の込め方とかイメージとかで魔法が発動している、ような気がしてきた。同じ要領で指から小さな火を出したり手のひらに水を溜めたり出来るようになった。あれ、これ全部アウトドアにとても便利じゃない?
 教科書も先生もいない状態の自主学習では今のところ出来たのはここまでだった。ちなみに魔法を使いすぎて魔力が枯渇しヘロヘロになったため、レオに一晩中熱く深く長い口付けという名の介抱をされたのは記憶に新しい。もう無茶しない。
 
 保護魔法はあくまで保険の保険として、攻撃魔法とか使えるようになったら良かったんだけど……。そもそも攻撃魔法自体あるかどうかも分からない。
 
 俺はレオにまとめた自分の考えを伝えた。
 
「とりあえず保護魔法があるから俺の身は安全なことを知ってもらって、ナルカデア王国にいるレオのご家族に挨拶しに行きたい、とだけ伝える」
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