極悪令息と呼ばれていることとメシマズは直接関係ありません

ちゃちゃ

文字の大きさ
76 / 79

73 新発見

しおりを挟む
 主に旅行客が利用するという温泉宿はとても快適だった。室内は清潔に保たれていて、二つ並んだ布団には陽の香りがする真っ白なシーツが掛けられている。一人500リラと安価で食事を付けることが出来、また、あまり外をウロウロしない方が良いと判断し、夕食と明日の朝食を頼んだ。馬車の中では携帯食料しか食べてなかったので、お腹はぺこぺこだ。
 
「美味しいね、レオ。煮物かな? 揚げてる山菜も甘いつゆと合ってて美味しい。作り方知りたいな」
「この街は鉱山ばかりで海も畑もないから、正直食事には期待していなかったが、ここで取れる食材を上手く調理しているみたいだな。美味しいねティア」
「うん!」
 
 明日の朝食に期待が膨れると共にお腹も膨れ、横になった。
 
「ティアー食べてすぐに横になると体に悪いぞ」
「うーん、でも今日ずっと馬車に乗り続けたから腰が痛くて」
 
 かれこれ12時間近く馬車に揺られていたのだ。あの老夫婦はよくこの街に来るとのことだったが、長時間の不規則な揺れに耐えられるのだから、体は丈夫だと思う。
 じんじんと痛む腰とお尻を庇い、うつ伏せでぼんやりしていると、急に視界が高くなった。
 
「では私の愛しい人の腰を労るために、念願の温泉湯に浸かるとしよう」
 
 俺の脇に手を入れられ、レオに高く持ち上げられたかと思うとそのまま縦抱きにしてずんずんと浴室へと連れていかれる。浴室には、温泉の湯が出る浴槽が置いてある。最初に部屋を案内された時に確認したところ、外の風景を見ることが出来ない完全な屋内になっているのが少し残念だが、すこしとろっとした感触の湯が不思議で面白く入るのを楽しみにしていた。
 
 俺もレオと一緒に温泉に入るのが待ち遠しかったので、抵抗せずレオに運ばれる。危険を伴う旅だというのに、レオと二人きりというだけで少し浮かれてしまっている。気を引き締めなければ。
 
 一方のレオは機嫌よく俺の服を脱がしていく。あれ、よく考えたら脱がされるの恥ずかしくない?
 
「あの、自分で脱ぐよ」
「じゃあティアはオレの服を脱がしてくれる?」
「え……う、うん」
 
 何故わざわざお互いの服を脱がすのか分からないけど、ご機嫌なレオが可愛いのでレオのシャツのボタンを外していく。数個ボタンを外すと鍛えられた体が目に入る。お腹や腕の筋肉も凄いけど、胸も厚くてペラペラの俺の体とは全然違う。レオの胸を見つめながら少し羨ましくなり、両手でレオの胸をぐにっと押してみた。あれ、意外と柔らかい。張りがあるけどむちむちしているというか……気持ち良い……!
 
「くふふ……楽しい?」
「た……楽しい!」
「ずっと触ってても良いけど、服を脱がないと温泉入れないからね」
「レオの胸を触るのが病みつきになりそう」
「ティアはもうオレ以外の人の胸を触ることが無いから、オレの胸に夢中になってくれたら嬉しいよ」
「そうか……俺は一生童貞のままか……」
「……ティアがもし童貞なのが嫌ならオレがティアに抱かれても良いけど……」
「え!!?」
「ティアが他の人に触れるくらいならそうする」
「や……うーん。レオの気持ちは嬉しいけど、レオには抱かれたいかな。レオが俺に抱かれたいというなら頑張るけど」
 
 正直イメージはつかないし、抱かれる側の経験しか無いので、抱くとしてもレオの真似をすることになる。それに俺のテクニックではレオを満足させられないだろうと真剣に考えてしまう。
 
「いや、オレはティアを抱きたい。でも、ティアがもし誰かを抱いてみたいと思ったらオレにして欲しい」
 
 レオの熱烈な告白に、思わずレオの魅力的な胸に顔を埋めた。こんなカッコ良くて逞しいレオが俺の為なら抱かれてくれるなんて。
 
「俺はレオ以外に目移りしないし、レオにしか抱かれないよ」
 
 レオの胸に埋めたまま話したので声がややこもってしまったが、言葉は届いたと思う。レオが俺の頭を撫で、抱きしめる。
 
「すまない、別にティアの気持ちを疑ってる訳じゃなくて、胸を揉み始めたから、胸が好きなのかと……」
「今まで性的なことに興味は無かったし、女性も男性も関係なく誰かを好きになったことも無かったし、俺はレオの胸が好きなだけだよ!」
 
 ……しまった!!
「レオが好きなだけ」だと言いたかったのに、胸目当てみたいな言い方になってしまった。だが、レオの揉み心地が良い弾力のある胸は今日初めて気付いた最高の発見だと思う。
 
「レオだから触りたくて、その延長線上に素晴らしい胸があった、というだけなんだ」
 
 俺は何を言っているんだ。しかしレオはお気に召したのか、くつくつと笑って俺の顔をあげ、ちゅっと口付けた。
 
「ん……ん!?」
 
 ほぼ脱がされて防御力が低下した状態の俺の体にレオが手を添わせ、胸を揉み始めた。くりくりとたまに乳首を擦るのでたまらない。
 
「ちょ、レオ」
「オレもティアの胸が好きだよ。感じやすくて、乳首も薄いピンクで」
「んっ……レオ……」
「ごめんごめん。体が冷える前に入ろうか」
 
 体が完全に反応する前にレオが胸から手を離し、手早く自身の服を脱いだ後オレの服も剥いで、俺の手を引いて浴室へと向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

処理中です...