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番外編・その後
しっかり者の弟に色々委ねてたら身も委ねることになった皇太子殿下②
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初めてニコラスと会った、もう12年も前にあった自身の誕生日をふと思い起こした。
皇子として日々堅実に勤め、我儘一つも口にしなかった私が、あまりにもしおしおになっていたからだろうか。食事の量が減っていったからだろうか。『弟』という存在に人生で過去一番盛り上がってからそのまま崖に落とされる、みたいなことが起こり、過去一番落ち込んでいた。
いよいよ見るに見かねた乳母、侍従一同が母上に嘆願し、月に一度私とニコラスの食事会が設けられた。母上たちは同席せず、最初は私がただニコラスにミルクをあげるだけ、離乳食をあげるだけだったが、次第に同じものを食べたり、一緒に本を読んだりするようになった。
私は母たちの目を気にしてその食事会以外では会わないようにしたが、ニコラスはたまに私の宮殿に侵入し、朝まで一緒に寝ることもあった。
今思い返せば、あちらの宮殿にいる者たちはニコラスが部屋を出ていることに気付かないなんて大丈夫だったんだろうか。
なお、クラウスは知らないことだが、ニコラスが上手いこと言いくるめたり口止め料を払ったり脅したりして、確実性を確保してからクラウスの部屋を訪れ(侵入し)ていたので、問題が無かった。
何故昔のことを思い出したかと言うと、今日が私の18歳の誕生日だったからだ。誕生パーティーを終え、父上が私を皇太子であると発表し、ニコラスを補佐に付けると明言した。
やっとだ。それは皇太子となったことなのか、これから気にせずニコラスと会えるからなのか、とにかく長かった。
私もニコラスも是が非でも皇太子になりたい訳では無かった。私としてはしっかりしているニコラスの方が向いているのではないかと提案したが、ニコラスが私の補佐として、外交と軍事を主に携わりたいと強く願ったため、私も皇太子となるべく頑張った。あと、周りも、何故かニコラス側の側近たち(特に公爵子息のカイル)も私の皇位継承を希望したので、その後押しもあった。
今日は皇太子となって初めての夜だ。パーティーで疲れたので、早目に湯浴みし休もうとした。その時、控えめに扉がノックされた。
「兄上、まだ起きてらっしゃいますか?」
「ニコラス? 起きてるよ、どうぞ。」
パーティーの時に着ていた豪奢な服から簡易な部屋着に着替えたニコラスが、にこやかな笑みを浮かべて入ってきた。
「兄上、立太子となりましたこと、心からお祝い申し上げます。」
「ありがとう、ニコラスと共に良い国に出来るよう努めよう。」
「今後は普段からもお傍で控えさせて頂きます。」
「嬉しいけど、ニコラスはまだ13歳だし、学校生活や友人との関わりを優先して良いんだよ?」
「兄上の傍にいることが私にとって一番幸せなことですから。」
「ふふふ、嬉しいなぁ。」
今や私より物知りで、凛として品があり、どんな相手でも気丈に振る舞えている。弟ながらカッコ良い。
「兄上、湯浴みはまだですよね、本日からは私が兄上の湯浴みをお手伝いしますので。」
「え、いや、流石にニコラスにそんなことさせられないよ。側仕えを呼ぶから。」
「今後は兄上の体調を確認する為にも、不埒な者が兄上に近付かない為にも、私が一緒に湯浴みします。これは、全員一致の結論です。」
「ぜ、全員? ほ、本当?」
「本当です。では風呂場へ行きましょう、今すぐ。」
「え、あ……あ…。」
まだ華奢な体で意外と強い力で風呂場へと連れていかれたのだった。
皇子として日々堅実に勤め、我儘一つも口にしなかった私が、あまりにもしおしおになっていたからだろうか。食事の量が減っていったからだろうか。『弟』という存在に人生で過去一番盛り上がってからそのまま崖に落とされる、みたいなことが起こり、過去一番落ち込んでいた。
いよいよ見るに見かねた乳母、侍従一同が母上に嘆願し、月に一度私とニコラスの食事会が設けられた。母上たちは同席せず、最初は私がただニコラスにミルクをあげるだけ、離乳食をあげるだけだったが、次第に同じものを食べたり、一緒に本を読んだりするようになった。
私は母たちの目を気にしてその食事会以外では会わないようにしたが、ニコラスはたまに私の宮殿に侵入し、朝まで一緒に寝ることもあった。
今思い返せば、あちらの宮殿にいる者たちはニコラスが部屋を出ていることに気付かないなんて大丈夫だったんだろうか。
なお、クラウスは知らないことだが、ニコラスが上手いこと言いくるめたり口止め料を払ったり脅したりして、確実性を確保してからクラウスの部屋を訪れ(侵入し)ていたので、問題が無かった。
何故昔のことを思い出したかと言うと、今日が私の18歳の誕生日だったからだ。誕生パーティーを終え、父上が私を皇太子であると発表し、ニコラスを補佐に付けると明言した。
やっとだ。それは皇太子となったことなのか、これから気にせずニコラスと会えるからなのか、とにかく長かった。
私もニコラスも是が非でも皇太子になりたい訳では無かった。私としてはしっかりしているニコラスの方が向いているのではないかと提案したが、ニコラスが私の補佐として、外交と軍事を主に携わりたいと強く願ったため、私も皇太子となるべく頑張った。あと、周りも、何故かニコラス側の側近たち(特に公爵子息のカイル)も私の皇位継承を希望したので、その後押しもあった。
今日は皇太子となって初めての夜だ。パーティーで疲れたので、早目に湯浴みし休もうとした。その時、控えめに扉がノックされた。
「兄上、まだ起きてらっしゃいますか?」
「ニコラス? 起きてるよ、どうぞ。」
パーティーの時に着ていた豪奢な服から簡易な部屋着に着替えたニコラスが、にこやかな笑みを浮かべて入ってきた。
「兄上、立太子となりましたこと、心からお祝い申し上げます。」
「ありがとう、ニコラスと共に良い国に出来るよう努めよう。」
「今後は普段からもお傍で控えさせて頂きます。」
「嬉しいけど、ニコラスはまだ13歳だし、学校生活や友人との関わりを優先して良いんだよ?」
「兄上の傍にいることが私にとって一番幸せなことですから。」
「ふふふ、嬉しいなぁ。」
今や私より物知りで、凛として品があり、どんな相手でも気丈に振る舞えている。弟ながらカッコ良い。
「兄上、湯浴みはまだですよね、本日からは私が兄上の湯浴みをお手伝いしますので。」
「え、いや、流石にニコラスにそんなことさせられないよ。側仕えを呼ぶから。」
「今後は兄上の体調を確認する為にも、不埒な者が兄上に近付かない為にも、私が一緒に湯浴みします。これは、全員一致の結論です。」
「ぜ、全員? ほ、本当?」
「本当です。では風呂場へ行きましょう、今すぐ。」
「え、あ……あ…。」
まだ華奢な体で意外と強い力で風呂場へと連れていかれたのだった。
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