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4章〜崩れて壊れても私はあなたの事を——〜
87話「崩壊の光6」
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ーダンジョン前ー
勇者達が冒険者ギルドの仮施設に到着する少し前、ダンジョンの前には複数人の人影があった。
「ここが 神ノ蔵君のダンジョンか~」
「⋯⋯そうだな」
何もない森の中にポッカリと存在している洞窟の入り口。
香は楽しそうに、響は過去の自分のダンジョンを投影しながらその入り口を見ていた。
「マスター、始末しました」
「ご苦労様」
続いてやって来たのは冷酷無血、そんな言葉を連想させる無表情な少女 ——零だ。
そして、零 に連れ添うように一体の機械仕掛けの少女が歩く。その歩みには跡をつける様に右手からはポタリ、ポタリと赤い液体が垂れ落ちる。
「あれあれ? ドールちゃんお手手が真っ赤だよ? タオル貸そうか?」
「いえ、結構でございます」
そんな場違いな情景であるにも関わらず 香 は楽しそうに少女に詰め寄った。
「⋯⋯俺がおかしいのかよ」
響 はその光景に何とも言えないものを感じながら視線を動かした。
響が背を向けた場所には腰をかけるにはちょうど良い岩があった。そして、そこに一人の男がもたれ掛かっている。
その腹部と胸部の二箇所に風穴が空き、赤い滝が流れ落ちていることが無ければ自然な光景だっただろう。
「行くわよ」
零 の無機質な一言に一行はダンジョンに足を踏み入れた。
◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾
零達が目にしたものを一言で表すなら『墓場』であった。
墓石があり、十字架が立てられ、棺桶が飛び出す陰鬱な場所はあらゆる宗教の埋葬を担っているようにも見える。そして、死者達の場所を守るように枯れた木は今にも動き出しそうにその身体を捻り、侵入者達を拒んでいる。
「こ、ここは⋯⋯」
「不気味な場所だね~。昔、友達と一緒に行ったお化け屋敷みたい」
驚きと奇怪な目を向ける 響 と 香。そして、その二人を脇に 零 だけは淡々と次の行動に移った。
「⋯⋯開け、『異形の扉』」
零 のその一言をキッカケに空間が歪んだ。先程まで観光気分の様でいた二人にも緊張の糸が張られる。
最初は小さな歪み。それを視認するには注意が必要なくらいの小さな小さな歪み。しかし、その歪みは急速に膨張し大きな大きな歪みとなった。
グパリ——そんな奇妙な音と共に歪みが空間の一部に穴をこじ開けた。
暗い暗い向こう側、どこに繋がっているか先が見えない闇から雪崩の様な音が響き、近ずいて来ている。
「う、ウソだろ⋯⋯!」
響 が驚きの声を上げる。音の原因それは——
「なんで⋯⋯お前達が?!」
闇から這い出て来たのは大量の動物達。
白い狼、額に鋭い剣を掲げる兎、背中に剣山を背負う亀。その数は一体や二体ではなく、軍勢のような規模となって進行する。
そして、どの動物もその瞳には光を宿すこと無く、唯々一心不乱に光の先を目指す。他者に気をかけることなく猛進するその姿はまさに魔物だろう。
「なにが⋯⋯なにがどうなっているんだ⋯⋯!」
「貴方が作った魔物達よ。そして、あの子達には撒き餌になってもらう。これで 神ノ蔵 レイジ の魔物達を消耗させる」
「撒き餌⋯⋯だと?ふざけるなっ! そんな⋯⋯そんな事のためにッ!」
響 は 零 の胸ぐらに掴みかかった。しかし——
「うっ⋯⋯!」
冷たく全てを、心の底を貫くような瞳が 響 を威圧した。
深く深く突き刺さる様な氷の視線が 響 の次の行動を強制的に辞めさせ、恐怖を与える。
「それで、どうするの?」
動かない体、歯が欠けるのではないかと感じる位に聞こえる歯ぎしり、そして血が垂れるほどまでに強く握られる拳。
しかし、次の行動に移れない。
自分の子の様に感じながら育てて来た魔物達をただの暴虐の塊の様にさせられたのにも関わらず動けない。
そして沈黙が広がり、零 が口を開いた。
「これ以上ないなら次に行くわよ」
パシリ、と 響 の掴んだ腕を弾き淡々とした声でそう言った。
「転移」
次に紡がれた 零 の言葉に今度は魔法陣が出現した。
その大きさは 零達全員を飲み込める程の大きく、怪しげに光り輝いた。
「わ!?」
「うっ!」
その輝きは薄暗い階層に一点の星の様に輝き、全員の視界を一色に染め上げた。
◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾
目を開けばそこは暗闇。
右も左もなければ上も下もない。唯一己が存在していることを証明するのは地を踏みしめる己の足と声のみ。
「ここは⋯⋯?」
「暗いね⋯⋯洞窟の階層?」
暗くて見えないが恐らく周囲を見回しているのだろう。
どちらかの足音からするに近くの壁を見つけようとしているのかも知れない。
「マスター、コレを」
そう言って機械仕掛けの少女が 零 に手渡したものが周囲を明るく照らした。
場違いな程の光量を持ったソレは懐中電灯。科学の発達した世界の文明の力が暗い闇を取り払った。
「懐中電灯?」
突然の光に驚きながらも二人は離れていた距離を縮め 零 の元に近寄って来た。
「ねえ、涼宮さん⋯⋯ここは?」
「このダンジョンのダンジョンコアがある部屋の一つ上の階層よ」
「もうそこまで来たの!?」
「そうね」
驚く 香 を他所に 零 は腕につけている時計を一瞥した。そこに記されているのは——
「説明している時間はない。神ノ蔵 レイジ の元へ行くわよ」
薄暗くてよく見えない。しかし、険しい表情をしていただろう 零 が体の向きを変え暗黒の中へと消えて行った。
「あ! 待ってよ!」
置いてかれた 香 は声を上げながらも光の方へと走って行った。
響 も無言を貫きながら 香 の後を追うしかなかった。
◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾
タイマー
残り時間ー00:30:00
勇者達が冒険者ギルドの仮施設に到着する少し前、ダンジョンの前には複数人の人影があった。
「ここが 神ノ蔵君のダンジョンか~」
「⋯⋯そうだな」
何もない森の中にポッカリと存在している洞窟の入り口。
香は楽しそうに、響は過去の自分のダンジョンを投影しながらその入り口を見ていた。
「マスター、始末しました」
「ご苦労様」
続いてやって来たのは冷酷無血、そんな言葉を連想させる無表情な少女 ——零だ。
そして、零 に連れ添うように一体の機械仕掛けの少女が歩く。その歩みには跡をつける様に右手からはポタリ、ポタリと赤い液体が垂れ落ちる。
「あれあれ? ドールちゃんお手手が真っ赤だよ? タオル貸そうか?」
「いえ、結構でございます」
そんな場違いな情景であるにも関わらず 香 は楽しそうに少女に詰め寄った。
「⋯⋯俺がおかしいのかよ」
響 はその光景に何とも言えないものを感じながら視線を動かした。
響が背を向けた場所には腰をかけるにはちょうど良い岩があった。そして、そこに一人の男がもたれ掛かっている。
その腹部と胸部の二箇所に風穴が空き、赤い滝が流れ落ちていることが無ければ自然な光景だっただろう。
「行くわよ」
零 の無機質な一言に一行はダンジョンに足を踏み入れた。
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零達が目にしたものを一言で表すなら『墓場』であった。
墓石があり、十字架が立てられ、棺桶が飛び出す陰鬱な場所はあらゆる宗教の埋葬を担っているようにも見える。そして、死者達の場所を守るように枯れた木は今にも動き出しそうにその身体を捻り、侵入者達を拒んでいる。
「こ、ここは⋯⋯」
「不気味な場所だね~。昔、友達と一緒に行ったお化け屋敷みたい」
驚きと奇怪な目を向ける 響 と 香。そして、その二人を脇に 零 だけは淡々と次の行動に移った。
「⋯⋯開け、『異形の扉』」
零 のその一言をキッカケに空間が歪んだ。先程まで観光気分の様でいた二人にも緊張の糸が張られる。
最初は小さな歪み。それを視認するには注意が必要なくらいの小さな小さな歪み。しかし、その歪みは急速に膨張し大きな大きな歪みとなった。
グパリ——そんな奇妙な音と共に歪みが空間の一部に穴をこじ開けた。
暗い暗い向こう側、どこに繋がっているか先が見えない闇から雪崩の様な音が響き、近ずいて来ている。
「う、ウソだろ⋯⋯!」
響 が驚きの声を上げる。音の原因それは——
「なんで⋯⋯お前達が?!」
闇から這い出て来たのは大量の動物達。
白い狼、額に鋭い剣を掲げる兎、背中に剣山を背負う亀。その数は一体や二体ではなく、軍勢のような規模となって進行する。
そして、どの動物もその瞳には光を宿すこと無く、唯々一心不乱に光の先を目指す。他者に気をかけることなく猛進するその姿はまさに魔物だろう。
「なにが⋯⋯なにがどうなっているんだ⋯⋯!」
「貴方が作った魔物達よ。そして、あの子達には撒き餌になってもらう。これで 神ノ蔵 レイジ の魔物達を消耗させる」
「撒き餌⋯⋯だと?ふざけるなっ! そんな⋯⋯そんな事のためにッ!」
響 は 零 の胸ぐらに掴みかかった。しかし——
「うっ⋯⋯!」
冷たく全てを、心の底を貫くような瞳が 響 を威圧した。
深く深く突き刺さる様な氷の視線が 響 の次の行動を強制的に辞めさせ、恐怖を与える。
「それで、どうするの?」
動かない体、歯が欠けるのではないかと感じる位に聞こえる歯ぎしり、そして血が垂れるほどまでに強く握られる拳。
しかし、次の行動に移れない。
自分の子の様に感じながら育てて来た魔物達をただの暴虐の塊の様にさせられたのにも関わらず動けない。
そして沈黙が広がり、零 が口を開いた。
「これ以上ないなら次に行くわよ」
パシリ、と 響 の掴んだ腕を弾き淡々とした声でそう言った。
「転移」
次に紡がれた 零 の言葉に今度は魔法陣が出現した。
その大きさは 零達全員を飲み込める程の大きく、怪しげに光り輝いた。
「わ!?」
「うっ!」
その輝きは薄暗い階層に一点の星の様に輝き、全員の視界を一色に染め上げた。
◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾
目を開けばそこは暗闇。
右も左もなければ上も下もない。唯一己が存在していることを証明するのは地を踏みしめる己の足と声のみ。
「ここは⋯⋯?」
「暗いね⋯⋯洞窟の階層?」
暗くて見えないが恐らく周囲を見回しているのだろう。
どちらかの足音からするに近くの壁を見つけようとしているのかも知れない。
「マスター、コレを」
そう言って機械仕掛けの少女が 零 に手渡したものが周囲を明るく照らした。
場違いな程の光量を持ったソレは懐中電灯。科学の発達した世界の文明の力が暗い闇を取り払った。
「懐中電灯?」
突然の光に驚きながらも二人は離れていた距離を縮め 零 の元に近寄って来た。
「ねえ、涼宮さん⋯⋯ここは?」
「このダンジョンのダンジョンコアがある部屋の一つ上の階層よ」
「もうそこまで来たの!?」
「そうね」
驚く 香 を他所に 零 は腕につけている時計を一瞥した。そこに記されているのは——
「説明している時間はない。神ノ蔵 レイジ の元へ行くわよ」
薄暗くてよく見えない。しかし、険しい表情をしていただろう 零 が体の向きを変え暗黒の中へと消えて行った。
「あ! 待ってよ!」
置いてかれた 香 は声を上げながらも光の方へと走って行った。
響 も無言を貫きながら 香 の後を追うしかなかった。
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