ダンジョンマスターは魔王ではありません!!

静電気妖怪

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三章〜神龍伝説爆誕!〜

54話「神龍、叡智の果実を授ける!」

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「——世界の真理を知れ」


 流が紡いだ短い一文と共に二つの銃口から二本の光が放たれた。
 それは流が撃ち続けていたモノと色も見た目も一直線に向かってくることも全てが同じであった。


「⋯⋯はぁ、拍子抜けだね」


 故に、ウァラクの口から漏れたのはため息だった。期待していなかったといえば嘘であるがそれでも何かあると思っていただけにウァラクは退屈そうに終わりを待った。


「結局は時間の——」


 だがそれはウァラクの勘違いでしかなかった。


「「グルギャアアアアアアアアアアアアアアアァァッッッ!!」」

「——⋯⋯え?」


 ダンジョン内に響き渡る竜の悲鳴。それはとてもそよ風が当たったようなものではない。
 消失感を埋め合わせるように大音量で鳴き叫ぶ竜達は文字通り腹部に大きな風穴が開いていた。


「な、にが⋯⋯っ!?」


 消失感を受けたのは竜たちだけではない。ウァラクもまた腰から上の左半身をなくしていた。
 人間とは違う悪魔という存在。それは血を流すこともなく失ったという事実だけど残していた。


「どうやら我の攻撃は通用するようだな」
「なに、が! なにが起きたって言うんだよ!?」


 ウァラクは確かに見ていた。
 脅威に感じられなかった光と同じ見た目、雰囲気、動き。その全てを持って確信していた。

 ——傷つけることはできない、と。

 しかし、実際はどうだ?
 痛みはないが消失感を覚え、信じていた自分の勘や感覚を裏切られ喪失を味合う。


「神龍くん⋯⋯君は一体、何をしたと言うんだ!」
「勘違いをしている様だから言っておくが、我は今までの物と同じ攻撃をしただけだぞ?」
「な、に?」


 ウァラクの口から漏れる驚愕の声。しかし、それは同時に自身の勘は間違っていなかったと言う安心感にもつながった。


「ほとんど、ね。何か少し変えたのかい? スパイスでも振ったと言うのかい?!」


 冗談交じりに問い詰めるウァラク。その姿は興味と興奮を抑えきれていない。


「ははっ、存外に的を得ているぞ悪魔よ」
「へぇ⋯⋯じゃあ、そのスパイスって言うのも教えてくれるのかい?」
「ああ、単純だぞ。『貴様を』を乗せただけだ」
「⋯⋯僕を⋯⋯殺す、意思⋯⋯?」


 得意顔になって言い放つ流に狐に包まれた様に懐疑的になるウァラク。そして、それを隣で聞いている鬼龍もまた疑問符を浮かべていた。


「君たちが僕を殺そうとするのは当然じゃないかな? まさか君は僕を殺そうとしていなかったとでも言いたいのかい?」
「いや? それは違うぞ」
「わ、わけがわからないよ⋯⋯」


 まるで頓知勝負をしているかのように感じるウァラク。一向に、自身が傷つけられた原因が理解できない。


「貴様はこの世界の真理ルールを理解できていない」
「世界の⋯⋯真理ルール⋯⋯?」


 流は憐れむのでもなく、奢るわけでもなくただ静かにウァラクを見据えてた。
 流にとって最大の機会となったのは『黒騎士』との戦いとその後だった。
 自責の念を抱え、真子に叱咤されたその瞬間に思ったことがあった。

 ——なぜステータスが存在するのか? であった。

 同等のステータスであっても埋まらない差。その人の才能や限界を表す数値。
 しかし、その記載される項目は慣れ親しんだRPGと比較すると明らかに少ない。

 何故か?
 その答えはただ『そういう仕様だから』とまとめられればそれまでである。しかし、だからこそ流は検証した。あらゆる方法を持って。
 そして導き出された答えは——


「——完璧だったんだよ」
「⋯⋯は?」
「この世界の真理ルール⋯⋯ステータスはシステムとしては完璧であったと言えよう」
「なら——」
「だがそれは、システムが完璧なだけだ。使い手はその完璧なシステムを理解しないのだよ」
「⋯⋯中々の言い様だね。僕だって伊達に長く生きてはいないんだよ? ステータスのことくらい——」
「であるならば、貴様はこのステータスがにしているのかわかるか?」
「基準⋯⋯?」


 馬鹿にされたと思っていたウァラクであったが流の最初の質問の返答に戸惑った。
 そう、最も重要であるを聞かれただけなのに。


「基準⋯⋯それは、世界的なものではないのかい?」
「ハッ、それが貴様の答えならルールをまるで理解していないな」
「なっ!? じゃ、じゃあ、君は答えを知ってるのかい!」


 鼻で笑われ、信じていた答えを一蹴されたウァラク。当然ながら頭に来るものを感じ、憤りに声を荒げる。


「当然だ。このステータスという数値の基準⋯⋯それは、ステータスを見るの基準だ」
「本人の⋯⋯基準?」
「そうだ。何故同じスキルのレベルを持つもの同士で戦った時に勝敗がつく? 仮に、世界的基準でスキルレベルが決まるのであれば勝敗は引き分けであるはずだ。それに加え——」
「ちょ、ちょっと待つのである! 神龍よ!」


 話に熱が入っていた流に食いつくように割って入ったのは鬼龍だった。
 鬼龍もまた流の考え方を理解できていないわけではないが納得しきれていない様子だ。


「確かにステータスのレベルで全てが決まる場合拮抗すると言うことは理解できるのだ。だが、武器の相性や地形的問題、経験の差を考慮すれば幾らレベルが同じでも勝敗はつくのではないのか?」
「確かに貴様が言う通り様々な要因で勝敗がつくことは考えられる。だが、その勝敗をつける要因を想定することもまたレベルを上げる条件であればレベルの重要性はますであろう?」
「う、うむ⋯⋯そうである⋯⋯な?」
「⋯⋯そうなんじゃないの?」


 敵同士でありながら目を見合わせるウァラクと鬼龍。流の言っていることに徐々に理解が追いつかなくなっていた。
 そして、それを予想していたとばかりに「はぁ」とため息を一つ吐く流。


「やはり理解されぬか。ならば簡単に説明しよう。鬼龍、貴様は一度我と戦い攻め切れなかったな?」
「あ、ああ。御前もまた武の頂に立つ者であろう? そうであるならばある程度はーー」
「いや? 立っていないぞ?」
「⋯⋯⋯は?」
「だから、我の剣術のレベルは10ではないと言っているのだ」


 流の一言に目を見開き驚愕する鬼龍。そして、鬼龍の『武の頂き』と言う言葉に戦いの内容はわからないがある程度は想定したウァラクも同様に驚いた。


「寧ろ、正直に話すのであれば我の剣術は8である。加えて、身体強化もまた同様だ」
「ど、どういうことであるか⋯⋯?」


 そう言って鬼龍は流との戦いの風景を思い返した。
 高ぶる高揚感。そこには対等に戦い合える者を見つけられた喜びと緊張感を感じていた。
 底を感じられない相手にどこまで自身の力を試せるかと言う期待もまた孕んでいた。しかし、


「余は⋯⋯だが、神龍のステータスは⋯⋯!」


 レベル的に見るのであれば2つの差は歴然と言えただろう。


「これがこの世界の真理ルールだ。どうだ? 貴様等がどれだけ理解できていないことがようやくわかってきたか?」


 流の周囲に光が集まる。
 暗闇を照らしていた光が吸い寄せられるように、しかし光達も喜んでいるかのように強く輝きを放つ。
 一つ一つの輝きが連なる。
 強く、強靭つよく結びつく輝きは流を龍の姿へと変えていく。そして——、




「長話は終わりだ。決着をつけようか、悪魔よ」




 ——破壊と創造をもたらす神格を得た龍は尊大に、傲慢に空を覆い尽くし悪魔を見下ろしていた。
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