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第4章
プロローグ
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ここは迷宮都市アドリウム。
セレド大陸の西方に位置し、険しい山々に囲まれ僅かな平地の土は痩せこけた、決して人が住むには適さない黒ずんだ大地にその都市はあった。
地理的条件を考えれば、寂れていずれは廃されるであろう僻地にあるというのに多くの人々が住まい、近隣諸国によって共同統治される西方でも、いや世界中でも最も重要な都市の1つである。
一体どうして、こんな辺境に人々は大都市を築き住み続けているのだろうか。
それは何百年という年月が経ってもなお数多の恵を人々に与え続け、一向に枯れる事のない神秘の力の息衝く所、神々の迷宮が鎮座する場所であるからだ。
遥か昔、神代の時代に八百万の神々の力によって創造されたとされる迷宮は、凶悪な魔物達が我が物顔で闊歩する危険地帯であるが、その危険に比例して多くの富を授けてくれる場所でもあるのだ。
今日も多くの冒険者達が一攫千金を夢見て、1つしかない限りある命を賭けて迷宮に挑んで行く。
栄光を手にするか、それとも死して迷宮の糧となるか、全ては自分と仲間達の腕次第なのだ……。
迷宮都市アドリウムは、現在共同統治されている。
かつて、神々の迷宮の富を手中に収めんと野望を抱く者が後を絶たず、血みどろの凄惨な戦が幾度となく繰り返された。過去ある国がこの都市を統治した事もあったが、諸国の妬みを買いその栄華が長く続く事はなかった。
その結果、近隣諸国に均等に富を配分する共同統治という形を取るに至ったのである。
だがそれは、決して永遠の平穏が訪れた事を意味するわけではない。
人の欲に限りはないからだ。
初めは納得しつつも時が経てば現状に不満を持ち、もっともっとと欲しがるのが人の業というものだ。
誰かが言った。
人は悪魔にも天使にもなれる移ろい易い生き物だと。
だがそれ故に、時として最も残酷で残忍な悪を為すのが人という生き物なのだと……。
もしきみがそんな悪と対峙したらどうするだろうか?
飽くなき闘争と修練によってについには真なる竜をも討ち倒し、冒険者として早くも一廉の成功を収めたといっても過言ではないきみだ。
きみは確かに戦闘狂の気はあるが、その性根は真っ直ぐで人の善なる心を信じている純粋な少年だ。幸いにして、今まできみは法が整備された治安の良い都市で心温かな優しい人々と出会い、自分の夢に邁進する事だけに集中できていた。
そんなきみが、目を背ける事のできない悪に直面したとしたらどうするだろうか?
自らの欲望の赴くままに無法を働き、他人の命など塵芥の様に扱う者を前にしたらどうするだろうか?
大事の前の小事と何の罪のない人々を犠牲にし、あくまで自分の大義に拘泥する人物を前にしたらどうするだろうか?
その胸にある正義を貫くために真っ向から立ち向かうだろうか?
あるいはそうするだけの理由と意味があるはずだと相手を理解する事に努め、何とか妥協点を探ろうと足掻きもがくだろうか?
それとも彼の者達に魅せられ、自身もその道を歩むだろうか?
いずれにしてもどの道を往くのもきみの自由だ。
ただここ(迷宮)は全てを受け入れるだけなのだから……。
セレド大陸の西方に位置し、険しい山々に囲まれ僅かな平地の土は痩せこけた、決して人が住むには適さない黒ずんだ大地にその都市はあった。
地理的条件を考えれば、寂れていずれは廃されるであろう僻地にあるというのに多くの人々が住まい、近隣諸国によって共同統治される西方でも、いや世界中でも最も重要な都市の1つである。
一体どうして、こんな辺境に人々は大都市を築き住み続けているのだろうか。
それは何百年という年月が経ってもなお数多の恵を人々に与え続け、一向に枯れる事のない神秘の力の息衝く所、神々の迷宮が鎮座する場所であるからだ。
遥か昔、神代の時代に八百万の神々の力によって創造されたとされる迷宮は、凶悪な魔物達が我が物顔で闊歩する危険地帯であるが、その危険に比例して多くの富を授けてくれる場所でもあるのだ。
今日も多くの冒険者達が一攫千金を夢見て、1つしかない限りある命を賭けて迷宮に挑んで行く。
栄光を手にするか、それとも死して迷宮の糧となるか、全ては自分と仲間達の腕次第なのだ……。
迷宮都市アドリウムは、現在共同統治されている。
かつて、神々の迷宮の富を手中に収めんと野望を抱く者が後を絶たず、血みどろの凄惨な戦が幾度となく繰り返された。過去ある国がこの都市を統治した事もあったが、諸国の妬みを買いその栄華が長く続く事はなかった。
その結果、近隣諸国に均等に富を配分する共同統治という形を取るに至ったのである。
だがそれは、決して永遠の平穏が訪れた事を意味するわけではない。
人の欲に限りはないからだ。
初めは納得しつつも時が経てば現状に不満を持ち、もっともっとと欲しがるのが人の業というものだ。
誰かが言った。
人は悪魔にも天使にもなれる移ろい易い生き物だと。
だがそれ故に、時として最も残酷で残忍な悪を為すのが人という生き物なのだと……。
もしきみがそんな悪と対峙したらどうするだろうか?
飽くなき闘争と修練によってについには真なる竜をも討ち倒し、冒険者として早くも一廉の成功を収めたといっても過言ではないきみだ。
きみは確かに戦闘狂の気はあるが、その性根は真っ直ぐで人の善なる心を信じている純粋な少年だ。幸いにして、今まできみは法が整備された治安の良い都市で心温かな優しい人々と出会い、自分の夢に邁進する事だけに集中できていた。
そんなきみが、目を背ける事のできない悪に直面したとしたらどうするだろうか?
自らの欲望の赴くままに無法を働き、他人の命など塵芥の様に扱う者を前にしたらどうするだろうか?
大事の前の小事と何の罪のない人々を犠牲にし、あくまで自分の大義に拘泥する人物を前にしたらどうするだろうか?
その胸にある正義を貫くために真っ向から立ち向かうだろうか?
あるいはそうするだけの理由と意味があるはずだと相手を理解する事に努め、何とか妥協点を探ろうと足掻きもがくだろうか?
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いずれにしてもどの道を往くのもきみの自由だ。
ただここ(迷宮)は全てを受け入れるだけなのだから……。
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