選ばれし者

西山鷹志

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選ばれし者  人身御供

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そして茂助の家でも家族会議が開かれた。茂助の家族は息子二人に娘一人、それに年老いた母がいる。話は全員が村の集会に出て聞いている。息子の二人は貞助二十一歳と助造十九歳そして娘のイネは十六歳で今回の生贄の対象者である。すると茂助の母でありイネの祖母タネが言った。
「まさか、おめぇイネを差し出そうなんて考えてんじゃないだろうな」
 そうだと言えない茂助は何も言えず黙って下を向いた。それを察した二人の息子が文句を言った。
「とうちゃん馬鹿な事を考えないで。いくら困ってもイネは大事な家族であり可愛い妹だ。そんな事が出来る訳がない」
「言われなくても分かっている。じゃけんお前達の母ちゃんだって栄養失調で亡くなっているじゃないか。これ以上病人が出たら一家は滅びる。不作で俺達が喰う飯もなくて、芋粥の毎日だ。もはやどうにもならねぇ」
 暫く黙って聞いていたイネが言った。 
「うち、で役立つならうちが行く、それで借金も返せるし年貢米を納めなくて済む、こんないい話ないじゃないか」
「ばかを言うでない。ならば婆ちゃんが行く、それで良かろうが」
「婆ちゃんの気持ちは嬉しいが若い生娘でないと駄目だってさ」
「そんなのおかしいって、誰が考え出したんだ。きっとスケベな代官に決まっている」
 一番幼いお前を犠牲にして生きていけるわけがないと。そう言うが打開策が見つからない。このままなら本当に一家がみんな死んでしまう。結局は誰も何も言えなくなった。早い者勝ちと言っている、決断が遅れれば、誰かが選ばれ全てが終りだ。家族は何も言わなくなったがイネは決心した。覚悟を決めたイネは家を飛び出し村の長の所へ駆け込んだ。みんなは泣きながらも止める事が出来なかった。そしてイネは村の長、宝次郎の家の戸を開けた。

「宝次郎さん、うち、を選んで下さい。その前に本当に年貢米を三年間納めず二十両貰えるんですか」
「お~よく決心してくれた。大丈夫だ。約束する。じゃけん父ちゃんや家族は良いと言ったのか?」
「うん大丈夫、そんでうちは何をすればいいんだ」
「それは占い師様と相談して決める。今日は帰って家族を安心させてやれ。これは俺の気持ちだ。一年分の米とは別に、ほら米を持っていけ。これで今日はみんなで美味い飯でも食い」
「ありがとうございます。最後にもう一度、本当にお金と米を貰えるのですね」
「疑い深いな、分かった分かった。では約束の金と米をも持って行くがよい」
イネはホッとした。これで死んでも本望だ。家族が幸せになれる。イネは金と米を貰って一目散に我が家に向かった。一年分の米は今持ち帰れないので後で届けてくれるそうだ。米の飯を食べられるなんて二年ぶりだ。みんなの喜ぶ顔が浮かぶ。喜び勇んで帰ったイネだが、家族は申し訳なくて喜ぶよりも泣いてしまった。その晩は久しぶりの白いご飯に喜びと悲しみが入り混じっていた。
 そして三日後、イネは一人で来いと宝次郎に呼び出された。いよいよ人身御供の儀式が始まる。だがイネ以外誰も来てはならんとお触れがあった。
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