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神様、居候する
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薄暗い休憩スペースに、拓己の荒い呼吸だけが聞こえる。仰向けに転がったまま、昔ながらの吊り下げ式の照明を見上げていた。
「なん……だ、よ、あれ……」
それは、今し方まで行われていた行為でもあるし、一瞬、流れ込んできた男の感情に対してでもあった。そんなことがあるわけないはずなのに、触れた所から流れ込んできた、という表現するしかなかった。
それから、男との性交だ。生憎と拓己は17歳で童貞を捨ててからこれまで、女性との行為しか経験はない。自分で尻の穴を開発する趣味だってなかったし、男となんて想像したこともなかった。なのに、だ。
「何だよ、何で……!」
明らかに和姦ではなかった。どう見積もっても、無理やりだった。
なのに拓己の体は、まるで経験豊富な女性のように男の指で悦んだ。そこに違和や苦痛など一切なく、ただひたすらに快感だけを叩き込まれた。それが、どれだけ拓己の精神を削ったか、自尊心を打ちのめしたか。
最中は与えられる快感とそれを受け取ってしまう混乱でロクな抵抗もできなかったが、終わってみれば理性と共に怒りがこみ上げるてきた。
「なんなんだ、お前……!」
起き上がって怒鳴り散らしても、すぐ側で胡坐をかいて座っている男は涼しい顔をしている。更に怒鳴ってやろうと口を開きかけたが、男のチンポを受け入れて善がり狂っていたのを思い出してしまう。それこそ、まるで女のように。
「…………ッ!!!俺はっ!そんなんじゃねえ!ふざけんなよアンタ!なんであんな……ッ!」
「…………」
思い返した拓己に襲い来る羞恥心に、唸りながら頭を掻き毟って呻いた。
ほんのさっきまで顔も知らなかった男に襲われ、あっさりと抵抗を封じられた。嫌だと喚き散らしていたくせに、指一本で陥落させられた。あられもなく声を上げて、はしたなく強請りさえした。
「我は、この地に祀られた土地神だ」
「……は?」
男の静かな声は、荒れ狂う拓己の意識にするりと滑り込んできた。混乱と怒りに振り回される精神に染み入るような、深い声だった。だがその内容は突拍子もないもので、その特異さが拓己に怒りを忘れさせたと言うのもある。
「なに……?何だって?」
「土地神。祠に祀られていた存在。そちが壊した祠の主」
言葉に感情は籠っていなかった。事実を述べるような口調。胡坐をかいた片方の膝に肘をついて、男は拓己をただ眺めている。
「信じられるかよ、何訳のわかんねえこと……」
「お前が信じようと信じまいと構わぬ。我は長くこの地に縛られていた。力を失い、長く眠っておった。このまま朽ちて消えるであろうと思うておった。だがお前が、祠を壊した。目も覚めようもの」
「あれはわざとじゃ……ッ」
ずぅん……、と空気が重く冷たくなる。それは、祠の屋根の部分が崩れた後と同じ、息の詰まりそうな重さだった。空気自体が、拓己を拒絶して攻撃しているような感覚だった。
「そちが、祠を壊した」
実際に、怒っているのは男だ。男の放つ怒りが、拓己を攻撃している。弁解をしようと口を開いても、かひゅ、と喉が情けない音を放つだけだった。
「このまま朽ち果てるだけと大人しく眠っておった我を、そちが叩き起こした」
「あ……」
「我には祠の中以外で存在を保つ力はほとんど残されておらなんだ。朧に見える先に、祠を壊したそちが立っていた」
膝立ちになり近寄ってきた男の手が、動くことすらできない拓己の下腹部に当てられる。先程触れ合っていた時よりも、僅かに暖かい、けれど人の体温としては低い男の手。ぐ、と押し込まれ、感じるのは疼くような陶酔感だった。
「ぁう゛……♡」
「供物としてそち受け取ることで、少しは力を取り戻せた」
男の口元が皮肉げに歪むのを見て、かぁっと拓己の顔が熱くなる。衣擦れの音をさせながら拓己から離れた男は、また胡坐をかいて座る。
「我は神だ。神との和合は人間に途方もない法悦を与えるものだ。そちがどうというわけではない。そういうものだ」
「そういう、もの……って言われたって」
ふ、と空気が軽くなる。途端に口から滑り出た声は、掠れていた。男は両腕を組み、少しばかり眉根を寄せる。困ったようなその表情で、ぐっと人間らしさが出る気がした。
「言わぬのも気の毒だから言うが……」
「何だよ」
「神力の種を植え付けた」
「シンリキノタネ?」
気まずそうに己の顎を擦る男が、拓己の下腹を指さした。また何かされるのではと破られたTシャツを掻き合わせて身を丸める拓己に、男がため息をつく。
「何もせん。言った通り、我には力が足りぬ。人の子が飢えるのと同じだ。お前から力を取り戻した時に、勢い余ってな。我の力が減った時、種の力が発動し供物が我に神力を与えるよう働きかけるモノだ」
「それってつまり……」
「神との和合を求めるようになる。ええと……発情、する」
できるだけ拓己にもわかりやすく、という気遣いだろう。だがその直接的な言葉は、大きな衝撃でもって拓己をぶん殴った。
「発情……って、何だよそれ」
「名を失い、来歴も忘れたが、我は神だ。その神の寝所を荒らした報いは受けてもらう」
「わざとじゃ……」
「知らぬこと。荒魂となり八つ裂きにされても良かったのか」
そう言われると、拓己は黙るしかない。祠の屋根を壊してしまった瞬間の、重苦しい冷たい空気を思い出したからだ。あれは目の前の神だと名乗る男の、膨れ上がる怒りだったのだと今では分かる。
「それは……、いや、壊したのは悪かったよ。でも、その発情……?ってのはさ、また別の話で……」
「先程の和合で少しは回復した。これ以上減ることがなければ、そうそう種が反応したりはしない。あとはそうだな、少しずつ回復して我の力が満ちれば種も取り除けようぞ」
「回復って……」
つい、と男が顔を反らして立ち上がった。いや、反らしたわけではなく、今いる休憩室から出て店の厨房の神棚を見に行ったようだった。ちょうど休憩室の入り口の上にある神棚をしばらく見ていたが僅かに頷くと、拓己を振り返った。
「ここに、我を祀り毎日拝め」
「は……?」
「信仰心は我の力。そち一人では心許ないが、この神棚に祀られればこの店の中が我の社となる。訪れる者が参拝者となり、神力も戻りが早くなるだろう」
つまり、壊した祠の代わりに拓己の店をこの自称神様の社にすると言うのだ。訪れる者、というのは客のことだろう。
「っは!?何勝手なこと言ってんだよ」
「それ以外に何か策があるのか。我は和合でも構わぬが……?」
「いや、そ、それは……、っそうだ!うちの神棚には近所の神社でもらったお札とか飾ってんだよ!ほら、神様はもういるからさ」
もう一度、男が神棚を見る。カタン、と小さな音を立てて、何もしていないのに札が落ちてきた。男がそれを拾い上げ、拓己へ見せる。
「慈悲深いお方よ。我が力を失っていくのを気にかけてくれておったようだ。快く譲ってくれるのだとか」
「っく……」
「この札はちゃんと返しておくようにな」
とうとう拒否できる材料がなくなり、拓己は大きくため息をついた。
祠を綺麗にしようと思ったのが発端とは言え、自分が祠の屋根を破壊したのは事実だ。例え、朽ちかけていた祠が元々あと少しの力で崩れるほどに脆くなっていたとしても、最後の一手を打ったのは自分だ。
「わかった。わかったよ。アンタの力が戻るか、祠の修理が終わるまでの間だ」
「それで構わん」
どうやって祀ればいいのだと聞けば、祠の中の石を神棚に備えろと言う。その石が、神の核なのだと言う。崩れたとはいえ、祠の中に手を突っ込むことに抵抗感がある拓己に、男は本人が良いと言っておると言ってのけた。
「……これでいいか?」
新しく他の神様を祀るのだから、と簡単に神棚の掃除をして水と塩も新しいものに取り換えた。拓己の拳ぐらいの大きさの石は、小さなしめ縄が巻かれている。
「へえ……」
神棚に鎮座すると、何となくそれっぽく見えるから不思議だ。柏手を打って手を合わせ、大変申し訳ありませんでしたと謝罪を伝える。
「そういうのは直接言って構わんぞ」
「え!?何、聞こえんの?」
「我は神ぞ。我に祈る声が聞こえんでどうする」
「あぁ……」
そうか。神様に、願いの言葉は意外と届いているのか。ふとそんなことを考える。
「そちが悪意を持って祠を壊したとは思うておらぬ。運が悪かった、それだけだ」
「ほんとにそう思うよ。……ま、これからよろしくな」
「あぁ」
満足げな男は、みすぼらしい狩衣を着ているくせにやけに品のある笑みを浮かべていた。
**********
居酒屋「たく」には、最近新しい常連客が増えた。17時の開店時間にはすでにカウンターの一番端の席に座り、閉店時間までいる男。店主と気安く話をしたり、勝手に店の奥へ消える所を見るとどうやら店主の個人的な知り合いらしいと言うのが他の常連の見解だった。
クロカミのことである。
「ほら、クロカミ」
「おぉ。いただこう」
コトン、と小さな音を立てて、クロカミの前に皿に盛られたおでんが置かれる。ガラスのコップが入った升を置き、そこへ一升瓶からなみなみと酒を注ぐ。キラキラと店の照明を反射させる透明の液体を、男はジィッと見つめていた。
「……はい、どーぞ」
「うむ」
コップから溢れた升が一杯になり、コップにも表面張力で酒が盛り上がるほどになみなみと注ぐ。男は大仰に頷いて見せるが、頬を緩めてコップに顔を近づけた。
「ん……」
ずずっと啜った日本酒を飲み下し、酒精に目を細める。いそいそと割り箸を手に取り、更に盛られたおでんの中から卵にかぶりつく。
「んん……っ」
旨そうに目を細めてもぐもぐやっていたかと思うと、またコップに口を付ける。ごくり、と酒を煽って大きくため息をついた。満足げに緩んだ口元に、黄身の欠片が残っている。
「んむ」
「美味いかよ」
「あぁ。供物はしかといただいた。だがあれも欲しい、鳥の揚げたやつと芋の揚げたやつ」
「神のくせに俗っぽくなっちゃって」
クロカミは素知らぬ顔で、よく出汁の染みた大根を一口大に切り分け辛子を乗せて頬張っている。
その顔は、普段拓己が見ている客の顔と何ら変わりなかった。期待に満ちた顔で料理を、酒を口に運び、顔を輝かせて咀嚼する。嚥下して、ため息をつく。そのため息が満足そうであればあるほど、拓己のやる気になった。
そんな客たちと、クロカミは同じ表情を浮かべて料理と酒を口に運ぶ。やけに人間臭いその姿に、拓己の警戒心はすっかり薄れてしまった。最初に出会ったあの日から、クロカミが一度も触れてこないのもある。彼が言った通り、神力の種が発動することもない。
「ゆっくり食ってろよ」
「んむ」
仕込んでおいたポテトフライをフライヤーに投入すると、高温の油が音を立てて沸き立つ。軽く突いて油の中を泳がせ、均等に熱が通るよう調整しながら待つ。
業者の冷凍ポテトではなく、毎日拓己が自分で生のジャガイモを準備している。拍子木切でなく、くし形切りだ。下味をつけて薄く片栗粉をまぶしているから、外はパリパリ中はホクホクだ。
「米も欲しい。炊いたやつだ」
「神様なんだから、生の方がいいんじゃねえのかよ」
「生身で食うなら炊いた方が美味い」
最初は、酒と米、塩を神棚に供えていた。クロカミも何も言わなかったので、それでいいんだと思っていた。もちろんそのお供えは今もやっているが、こうしてちゃんと料理と酒をクロカミに出すきっかけとなったのは拓己が社を壊して3日後のことだ。
料理の仕込みをしていた拓己を、クロカミは今と同じ場所に座ってぼんやり眺めていた。おでんに入れる具材を用意し、ついでに出汁の追加をしようと味見をした時にクロカミが『それは美味いのか?』と聞いてきた。
そう言えば、クロカミは元々岩だったと言っていた。供えられたものはそこから神力を吸収するだけで、食べたり飲んだりの概念はなかったのだと言う。だったら試しに食ってみるかと、日本酒とおでんを出したらそれを大層気に入ったらしい。
そこから、クロカミは店の営業時間はカウンターの隅の席に座って何かしら食べながらちびちびと日本酒を啜っている。
「お。今日もクロカミさんが一番乗りだねぇ」
「いらっしゃいませ、丹羽沢さん」
「たくちゃん、いつもの頼むよ」
「はい!かしこまりました!」
引き戸を開けて暖簾をくぐってきたのは、常連の丹羽沢という老人だ。70代も後半に差し掛かるはずなのに、しっかりとした足取りで拓己の店に週3回ほど通ってくれている。
クロカミが住み着くまで、拓己の店の一番乗りは大抵丹羽沢だった。17時に開店する拓己の店に来て晩酌をし、18時頃には自宅へ帰り20時には就寝するのだとか。これが人生の楽しみなんだよ、と目じりの笑いジワを深くして言われれば、拓己も料理人冥利に尽きるというものである。
丹羽沢はクロカミとは違って出口に一番近いカウンター席に座り、拓己の出したおしぼりで手を拭いている。その間に、拓己は小鉢と煮魚、そしてクロカミに出したのと同じ枡酒を出した。
これが丹羽沢の「いつもの」だった。
「くろかみさんもいつもの、かい?」
「ああ。揚げた鳥と芋も頼んだ」
そして驚くべきことに、クロカミは他の人間にも見えるし、しかも拓己が思っていた以上に友好的に会話をしている。最初に丹羽沢がクロカミに話しかけた時、拓己はひっくり返りそうになるほど驚いた。
取り憑いた人間にしか見えないのがセオリーじゃないのかとか、色々思うことはあったが一番はクロカミが汚れた狩衣で店のカウンターに座っているのが気になった。現代の服とは違う上、薄汚れた格好なのは非常にいただけない。服を着替えられるのかどうかを確認し、すぐさま新しい服を渡した。
「鶏のから揚げかぁ。若いってのはいいねぇ。俺ぁもう胃がもたれて駄目だなぁ」
なので今クロカミは、シンプルな白Tシャツに黒いスウェットとサンダル姿だ。長い髪はゴムで縛っている。およそ神様の着ている服ではない。だが背に腹は代えられない。
ちなみに、元々クロカミが来ていた服はどこかへ消えてしまった。曰く、あれは神力の一部で作ったものらしい。拓己はよく分からないが、実体がないのだとか。
クロカミが所望したポテトフライをフライヤーから上げて油を切っていると、ガラリと大きな音で引き戸を開ける人物がいた。
「たくちゃーん!お腹空いたよぉ!」
「いらっしゃい」
「チキン南蛮定食一つ!」
入ってきたのは常連の女・カホだった。左右に一席ずつ空けて丹羽沢とクロカミの間の席に座る。隣の椅子に小さな、何も入っていないようなブランド物のバッグを置いた。シンプルなワンピースを着ているが、髪の毛は夜会巻きに結い上げ、キラキラとしたラメが振りかけられている。スマートフォンを取り落としてしまうのではと思うような長い爪で、器用に操作していた。
「はい、お水」
「ありがとぉ」
オフィスビルの一階に店があるが、ほど近い場所には歓楽街があった。彼女はそこのクラブで働いている。同伴のない出勤前に時々立ち寄り、夕食を食べてから店に出るのだそうだ。そういう需要があるため、拓己の店では定食メニューも用意していた。
「クロカミ」
「んん」
和紙を敷いた器に揚げたてのポテトを盛り、上から軽く塩を振る。湯気を立ち昇らせるそれをクロカミの前に置き、隣にケチャップとマスタードの小皿も添えた。ちくわをもちもちと頬張っていたクロカミが、視線だけで皿を追いかけていた。
「冷まして食えよ」
「…………」
「クロカミさん猫舌だもんねぇ」
拓海とクロカミのやり取りを見ていた女が、スマホに視線を落としたまま言う。拓己はそのまま下処理をした鶏肉をフライヤーに投入してから、同時にカホの注文したチキン南蛮定食の調理を始めた。
「クロカミさんいっつもいるよねー。仕事とか何してんの」
「…………」
神だ、と言わないようには言い含めている。クロカミ自身も、あまり多くの人間に知られるのを良しとは思わないらしい。
そこまで興味のなさそうなカホが、それでもクロカミの返答を待つために視線をスマホから上げた。クロカミはと言えば、箸でポテトフライを突き刺しふうふうと息を吹きかけている。
「……、管理人だ」
「管理人?」
「そう」
「ふーん……?」
分かったような分からないような、カホはそんな顔をしていたがそれ以上問い詰めようとはしていなかった。常連同士、それなりの距離の取り方は分かっている。
熱さを警戒したクロカミがポテトフライを少しだけ齧る。ほこ……、と割れた断面から湯気を上げたポテトを見下ろしながら、もぐもぐやっている。
「旨いかよ」
残りのポテトフライも口に運んだクロカミに声をかければ、視線がこちらを向いた。黒々とした瞳が、拓己の姿をとらえる。
「あぁ。染み渡るようだ」
「そりゃよかった」
大げさ、とカホが笑う。丹羽沢ものんびりと微笑んでいる。正確に意味が分かるのは拓己とクロカミだけだ。
これが、居酒屋「たく」の日常である。
2025/05/31
「なん……だ、よ、あれ……」
それは、今し方まで行われていた行為でもあるし、一瞬、流れ込んできた男の感情に対してでもあった。そんなことがあるわけないはずなのに、触れた所から流れ込んできた、という表現するしかなかった。
それから、男との性交だ。生憎と拓己は17歳で童貞を捨ててからこれまで、女性との行為しか経験はない。自分で尻の穴を開発する趣味だってなかったし、男となんて想像したこともなかった。なのに、だ。
「何だよ、何で……!」
明らかに和姦ではなかった。どう見積もっても、無理やりだった。
なのに拓己の体は、まるで経験豊富な女性のように男の指で悦んだ。そこに違和や苦痛など一切なく、ただひたすらに快感だけを叩き込まれた。それが、どれだけ拓己の精神を削ったか、自尊心を打ちのめしたか。
最中は与えられる快感とそれを受け取ってしまう混乱でロクな抵抗もできなかったが、終わってみれば理性と共に怒りがこみ上げるてきた。
「なんなんだ、お前……!」
起き上がって怒鳴り散らしても、すぐ側で胡坐をかいて座っている男は涼しい顔をしている。更に怒鳴ってやろうと口を開きかけたが、男のチンポを受け入れて善がり狂っていたのを思い出してしまう。それこそ、まるで女のように。
「…………ッ!!!俺はっ!そんなんじゃねえ!ふざけんなよアンタ!なんであんな……ッ!」
「…………」
思い返した拓己に襲い来る羞恥心に、唸りながら頭を掻き毟って呻いた。
ほんのさっきまで顔も知らなかった男に襲われ、あっさりと抵抗を封じられた。嫌だと喚き散らしていたくせに、指一本で陥落させられた。あられもなく声を上げて、はしたなく強請りさえした。
「我は、この地に祀られた土地神だ」
「……は?」
男の静かな声は、荒れ狂う拓己の意識にするりと滑り込んできた。混乱と怒りに振り回される精神に染み入るような、深い声だった。だがその内容は突拍子もないもので、その特異さが拓己に怒りを忘れさせたと言うのもある。
「なに……?何だって?」
「土地神。祠に祀られていた存在。そちが壊した祠の主」
言葉に感情は籠っていなかった。事実を述べるような口調。胡坐をかいた片方の膝に肘をついて、男は拓己をただ眺めている。
「信じられるかよ、何訳のわかんねえこと……」
「お前が信じようと信じまいと構わぬ。我は長くこの地に縛られていた。力を失い、長く眠っておった。このまま朽ちて消えるであろうと思うておった。だがお前が、祠を壊した。目も覚めようもの」
「あれはわざとじゃ……ッ」
ずぅん……、と空気が重く冷たくなる。それは、祠の屋根の部分が崩れた後と同じ、息の詰まりそうな重さだった。空気自体が、拓己を拒絶して攻撃しているような感覚だった。
「そちが、祠を壊した」
実際に、怒っているのは男だ。男の放つ怒りが、拓己を攻撃している。弁解をしようと口を開いても、かひゅ、と喉が情けない音を放つだけだった。
「このまま朽ち果てるだけと大人しく眠っておった我を、そちが叩き起こした」
「あ……」
「我には祠の中以外で存在を保つ力はほとんど残されておらなんだ。朧に見える先に、祠を壊したそちが立っていた」
膝立ちになり近寄ってきた男の手が、動くことすらできない拓己の下腹部に当てられる。先程触れ合っていた時よりも、僅かに暖かい、けれど人の体温としては低い男の手。ぐ、と押し込まれ、感じるのは疼くような陶酔感だった。
「ぁう゛……♡」
「供物としてそち受け取ることで、少しは力を取り戻せた」
男の口元が皮肉げに歪むのを見て、かぁっと拓己の顔が熱くなる。衣擦れの音をさせながら拓己から離れた男は、また胡坐をかいて座る。
「我は神だ。神との和合は人間に途方もない法悦を与えるものだ。そちがどうというわけではない。そういうものだ」
「そういう、もの……って言われたって」
ふ、と空気が軽くなる。途端に口から滑り出た声は、掠れていた。男は両腕を組み、少しばかり眉根を寄せる。困ったようなその表情で、ぐっと人間らしさが出る気がした。
「言わぬのも気の毒だから言うが……」
「何だよ」
「神力の種を植え付けた」
「シンリキノタネ?」
気まずそうに己の顎を擦る男が、拓己の下腹を指さした。また何かされるのではと破られたTシャツを掻き合わせて身を丸める拓己に、男がため息をつく。
「何もせん。言った通り、我には力が足りぬ。人の子が飢えるのと同じだ。お前から力を取り戻した時に、勢い余ってな。我の力が減った時、種の力が発動し供物が我に神力を与えるよう働きかけるモノだ」
「それってつまり……」
「神との和合を求めるようになる。ええと……発情、する」
できるだけ拓己にもわかりやすく、という気遣いだろう。だがその直接的な言葉は、大きな衝撃でもって拓己をぶん殴った。
「発情……って、何だよそれ」
「名を失い、来歴も忘れたが、我は神だ。その神の寝所を荒らした報いは受けてもらう」
「わざとじゃ……」
「知らぬこと。荒魂となり八つ裂きにされても良かったのか」
そう言われると、拓己は黙るしかない。祠の屋根を壊してしまった瞬間の、重苦しい冷たい空気を思い出したからだ。あれは目の前の神だと名乗る男の、膨れ上がる怒りだったのだと今では分かる。
「それは……、いや、壊したのは悪かったよ。でも、その発情……?ってのはさ、また別の話で……」
「先程の和合で少しは回復した。これ以上減ることがなければ、そうそう種が反応したりはしない。あとはそうだな、少しずつ回復して我の力が満ちれば種も取り除けようぞ」
「回復って……」
つい、と男が顔を反らして立ち上がった。いや、反らしたわけではなく、今いる休憩室から出て店の厨房の神棚を見に行ったようだった。ちょうど休憩室の入り口の上にある神棚をしばらく見ていたが僅かに頷くと、拓己を振り返った。
「ここに、我を祀り毎日拝め」
「は……?」
「信仰心は我の力。そち一人では心許ないが、この神棚に祀られればこの店の中が我の社となる。訪れる者が参拝者となり、神力も戻りが早くなるだろう」
つまり、壊した祠の代わりに拓己の店をこの自称神様の社にすると言うのだ。訪れる者、というのは客のことだろう。
「っは!?何勝手なこと言ってんだよ」
「それ以外に何か策があるのか。我は和合でも構わぬが……?」
「いや、そ、それは……、っそうだ!うちの神棚には近所の神社でもらったお札とか飾ってんだよ!ほら、神様はもういるからさ」
もう一度、男が神棚を見る。カタン、と小さな音を立てて、何もしていないのに札が落ちてきた。男がそれを拾い上げ、拓己へ見せる。
「慈悲深いお方よ。我が力を失っていくのを気にかけてくれておったようだ。快く譲ってくれるのだとか」
「っく……」
「この札はちゃんと返しておくようにな」
とうとう拒否できる材料がなくなり、拓己は大きくため息をついた。
祠を綺麗にしようと思ったのが発端とは言え、自分が祠の屋根を破壊したのは事実だ。例え、朽ちかけていた祠が元々あと少しの力で崩れるほどに脆くなっていたとしても、最後の一手を打ったのは自分だ。
「わかった。わかったよ。アンタの力が戻るか、祠の修理が終わるまでの間だ」
「それで構わん」
どうやって祀ればいいのだと聞けば、祠の中の石を神棚に備えろと言う。その石が、神の核なのだと言う。崩れたとはいえ、祠の中に手を突っ込むことに抵抗感がある拓己に、男は本人が良いと言っておると言ってのけた。
「……これでいいか?」
新しく他の神様を祀るのだから、と簡単に神棚の掃除をして水と塩も新しいものに取り換えた。拓己の拳ぐらいの大きさの石は、小さなしめ縄が巻かれている。
「へえ……」
神棚に鎮座すると、何となくそれっぽく見えるから不思議だ。柏手を打って手を合わせ、大変申し訳ありませんでしたと謝罪を伝える。
「そういうのは直接言って構わんぞ」
「え!?何、聞こえんの?」
「我は神ぞ。我に祈る声が聞こえんでどうする」
「あぁ……」
そうか。神様に、願いの言葉は意外と届いているのか。ふとそんなことを考える。
「そちが悪意を持って祠を壊したとは思うておらぬ。運が悪かった、それだけだ」
「ほんとにそう思うよ。……ま、これからよろしくな」
「あぁ」
満足げな男は、みすぼらしい狩衣を着ているくせにやけに品のある笑みを浮かべていた。
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居酒屋「たく」には、最近新しい常連客が増えた。17時の開店時間にはすでにカウンターの一番端の席に座り、閉店時間までいる男。店主と気安く話をしたり、勝手に店の奥へ消える所を見るとどうやら店主の個人的な知り合いらしいと言うのが他の常連の見解だった。
クロカミのことである。
「ほら、クロカミ」
「おぉ。いただこう」
コトン、と小さな音を立てて、クロカミの前に皿に盛られたおでんが置かれる。ガラスのコップが入った升を置き、そこへ一升瓶からなみなみと酒を注ぐ。キラキラと店の照明を反射させる透明の液体を、男はジィッと見つめていた。
「……はい、どーぞ」
「うむ」
コップから溢れた升が一杯になり、コップにも表面張力で酒が盛り上がるほどになみなみと注ぐ。男は大仰に頷いて見せるが、頬を緩めてコップに顔を近づけた。
「ん……」
ずずっと啜った日本酒を飲み下し、酒精に目を細める。いそいそと割り箸を手に取り、更に盛られたおでんの中から卵にかぶりつく。
「んん……っ」
旨そうに目を細めてもぐもぐやっていたかと思うと、またコップに口を付ける。ごくり、と酒を煽って大きくため息をついた。満足げに緩んだ口元に、黄身の欠片が残っている。
「んむ」
「美味いかよ」
「あぁ。供物はしかといただいた。だがあれも欲しい、鳥の揚げたやつと芋の揚げたやつ」
「神のくせに俗っぽくなっちゃって」
クロカミは素知らぬ顔で、よく出汁の染みた大根を一口大に切り分け辛子を乗せて頬張っている。
その顔は、普段拓己が見ている客の顔と何ら変わりなかった。期待に満ちた顔で料理を、酒を口に運び、顔を輝かせて咀嚼する。嚥下して、ため息をつく。そのため息が満足そうであればあるほど、拓己のやる気になった。
そんな客たちと、クロカミは同じ表情を浮かべて料理と酒を口に運ぶ。やけに人間臭いその姿に、拓己の警戒心はすっかり薄れてしまった。最初に出会ったあの日から、クロカミが一度も触れてこないのもある。彼が言った通り、神力の種が発動することもない。
「ゆっくり食ってろよ」
「んむ」
仕込んでおいたポテトフライをフライヤーに投入すると、高温の油が音を立てて沸き立つ。軽く突いて油の中を泳がせ、均等に熱が通るよう調整しながら待つ。
業者の冷凍ポテトではなく、毎日拓己が自分で生のジャガイモを準備している。拍子木切でなく、くし形切りだ。下味をつけて薄く片栗粉をまぶしているから、外はパリパリ中はホクホクだ。
「米も欲しい。炊いたやつだ」
「神様なんだから、生の方がいいんじゃねえのかよ」
「生身で食うなら炊いた方が美味い」
最初は、酒と米、塩を神棚に供えていた。クロカミも何も言わなかったので、それでいいんだと思っていた。もちろんそのお供えは今もやっているが、こうしてちゃんと料理と酒をクロカミに出すきっかけとなったのは拓己が社を壊して3日後のことだ。
料理の仕込みをしていた拓己を、クロカミは今と同じ場所に座ってぼんやり眺めていた。おでんに入れる具材を用意し、ついでに出汁の追加をしようと味見をした時にクロカミが『それは美味いのか?』と聞いてきた。
そう言えば、クロカミは元々岩だったと言っていた。供えられたものはそこから神力を吸収するだけで、食べたり飲んだりの概念はなかったのだと言う。だったら試しに食ってみるかと、日本酒とおでんを出したらそれを大層気に入ったらしい。
そこから、クロカミは店の営業時間はカウンターの隅の席に座って何かしら食べながらちびちびと日本酒を啜っている。
「お。今日もクロカミさんが一番乗りだねぇ」
「いらっしゃいませ、丹羽沢さん」
「たくちゃん、いつもの頼むよ」
「はい!かしこまりました!」
引き戸を開けて暖簾をくぐってきたのは、常連の丹羽沢という老人だ。70代も後半に差し掛かるはずなのに、しっかりとした足取りで拓己の店に週3回ほど通ってくれている。
クロカミが住み着くまで、拓己の店の一番乗りは大抵丹羽沢だった。17時に開店する拓己の店に来て晩酌をし、18時頃には自宅へ帰り20時には就寝するのだとか。これが人生の楽しみなんだよ、と目じりの笑いジワを深くして言われれば、拓己も料理人冥利に尽きるというものである。
丹羽沢はクロカミとは違って出口に一番近いカウンター席に座り、拓己の出したおしぼりで手を拭いている。その間に、拓己は小鉢と煮魚、そしてクロカミに出したのと同じ枡酒を出した。
これが丹羽沢の「いつもの」だった。
「くろかみさんもいつもの、かい?」
「ああ。揚げた鳥と芋も頼んだ」
そして驚くべきことに、クロカミは他の人間にも見えるし、しかも拓己が思っていた以上に友好的に会話をしている。最初に丹羽沢がクロカミに話しかけた時、拓己はひっくり返りそうになるほど驚いた。
取り憑いた人間にしか見えないのがセオリーじゃないのかとか、色々思うことはあったが一番はクロカミが汚れた狩衣で店のカウンターに座っているのが気になった。現代の服とは違う上、薄汚れた格好なのは非常にいただけない。服を着替えられるのかどうかを確認し、すぐさま新しい服を渡した。
「鶏のから揚げかぁ。若いってのはいいねぇ。俺ぁもう胃がもたれて駄目だなぁ」
なので今クロカミは、シンプルな白Tシャツに黒いスウェットとサンダル姿だ。長い髪はゴムで縛っている。およそ神様の着ている服ではない。だが背に腹は代えられない。
ちなみに、元々クロカミが来ていた服はどこかへ消えてしまった。曰く、あれは神力の一部で作ったものらしい。拓己はよく分からないが、実体がないのだとか。
クロカミが所望したポテトフライをフライヤーから上げて油を切っていると、ガラリと大きな音で引き戸を開ける人物がいた。
「たくちゃーん!お腹空いたよぉ!」
「いらっしゃい」
「チキン南蛮定食一つ!」
入ってきたのは常連の女・カホだった。左右に一席ずつ空けて丹羽沢とクロカミの間の席に座る。隣の椅子に小さな、何も入っていないようなブランド物のバッグを置いた。シンプルなワンピースを着ているが、髪の毛は夜会巻きに結い上げ、キラキラとしたラメが振りかけられている。スマートフォンを取り落としてしまうのではと思うような長い爪で、器用に操作していた。
「はい、お水」
「ありがとぉ」
オフィスビルの一階に店があるが、ほど近い場所には歓楽街があった。彼女はそこのクラブで働いている。同伴のない出勤前に時々立ち寄り、夕食を食べてから店に出るのだそうだ。そういう需要があるため、拓己の店では定食メニューも用意していた。
「クロカミ」
「んん」
和紙を敷いた器に揚げたてのポテトを盛り、上から軽く塩を振る。湯気を立ち昇らせるそれをクロカミの前に置き、隣にケチャップとマスタードの小皿も添えた。ちくわをもちもちと頬張っていたクロカミが、視線だけで皿を追いかけていた。
「冷まして食えよ」
「…………」
「クロカミさん猫舌だもんねぇ」
拓海とクロカミのやり取りを見ていた女が、スマホに視線を落としたまま言う。拓己はそのまま下処理をした鶏肉をフライヤーに投入してから、同時にカホの注文したチキン南蛮定食の調理を始めた。
「クロカミさんいっつもいるよねー。仕事とか何してんの」
「…………」
神だ、と言わないようには言い含めている。クロカミ自身も、あまり多くの人間に知られるのを良しとは思わないらしい。
そこまで興味のなさそうなカホが、それでもクロカミの返答を待つために視線をスマホから上げた。クロカミはと言えば、箸でポテトフライを突き刺しふうふうと息を吹きかけている。
「……、管理人だ」
「管理人?」
「そう」
「ふーん……?」
分かったような分からないような、カホはそんな顔をしていたがそれ以上問い詰めようとはしていなかった。常連同士、それなりの距離の取り方は分かっている。
熱さを警戒したクロカミがポテトフライを少しだけ齧る。ほこ……、と割れた断面から湯気を上げたポテトを見下ろしながら、もぐもぐやっている。
「旨いかよ」
残りのポテトフライも口に運んだクロカミに声をかければ、視線がこちらを向いた。黒々とした瞳が、拓己の姿をとらえる。
「あぁ。染み渡るようだ」
「そりゃよかった」
大げさ、とカホが笑う。丹羽沢ものんびりと微笑んでいる。正確に意味が分かるのは拓己とクロカミだけだ。
これが、居酒屋「たく」の日常である。
2025/05/31
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