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第8話 大戦じゃよ
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「魔王様、どうされますか? ここに拠点作るのやめます?」
「いや、やめない。助けるぞ」
「どうしてですか? それこそ、アルバート王国なる国に作った方が得では無いですか?」
「この町のある国、シルバ王国は大国じゃ。そしてアルバート王国は小国じゃ。なんで攻めるのだと思う?」
「分からないです。大国の方が勝機がありそうですけどね。武力に差がありそうです」
すると、魔王は歩き出し、住宅の方へと戻っていった。
ついていくといきなり立ち止まり、背を向けながらまた話し始めた。
「魔王アルファは人間との調和を目指しておる。そのためにまず、人間に複数の魔物を差し出したんじゃ。魔物と言うのがどう言うものなのか、また、人間にどれほどの利益を与えるのかを教えるためにな」
「その利益はどう言った内容ですかね」
「武力じゃ」
風が吹いた。風上にはギルドがあり、少しだけ声が聞き取れそうだった。
「理性のある魔物と人間の精神的な違いはほぼ無い。しかし、力の差が大きすぎる。持っている国にとってはある種の爆弾になるのじゃ」
「なるほど。国にあげているんですね、魔王アルファは」
「そうじゃ。そして、シルバは貰えなかった」
「武力が既に強大だからですか?」
「いいや、国の繋がりだろうな」
彼女は振り返り、麦わら帽子を脱いでからこちらを向いた。大きなツノが月夜に照らされる。
「大戦じゃよ」
「なるほど...魔王アルファには和解する気なんて無いんですね」
「横の繋がりが多い国には仲間がおる。逆もまた然りじゃ。大国が小国に叩かれたとなると、周りの国は黙っていないじゃろうな...」
「でも、そんなことしたらアルバート王国が潰されそうですね。本人達も気づかないことはないと思いますが」
すると魔王はこちらへ近づき、弱い力で腹パンをしてきた。
「もし、お主の様な奴が国におったら、国王はどうすると思う? 大陸一つが潰されるのじゃぞ?」
にやけ顔を見せてきた。
「ふふ、聞いていたんですね」
「勿論だとも。それで、どうすると思う?」
「攻めますね。他国の魔物なんかよりも強いでしょうし」
彼女は小さく頷たかと思うと、両手を腰に当て、胸を張ってきた。
「我が僕よ、妾達の最終目標はなんじゃ?」
「世界征服です!」
「その通り! では、ここで魔王アルファに人間を根絶やしにされて黙っていられるか!」
「いいえ!」
「ここに宣言しよう! 魔王シルクは魔王アルファに正式に敵対する!」
これで良いのか? いや、これで良いんだ。俺らの目標は世界征服。魔物だけの、文化のないもぬけの世界なんていらない。
やってやろう。みとけよモサ、お前の上司をぶっ潰してやる。
「そうだなぁ、宣戦布告と言うからには承認者が必要だな。なぁ、ローゼ?」
ローゼさん? 魔王の視線の先には、口を大きく開き、書類を地面に落としているローゼさんの姿があった。
え、みられてたの? なんで魔王は何も触れなかったの?
「あの、えっと...本当に魔王だったんですか...?」
「だから言っておったろうに。本物の魔王じゃと」
「でも、ずっと麦わら帽子被ってましたし...」
彼女はひたすらアワアワしている。書類の存在も忘れ、一つ一つの紙が風に飛ばされている。
「安心せい、この町は妾達が守る。だから、その代わりお主には魔王軍に入ってもらう」
「「は?」」
助けるのは分かる。でもなんで魔王軍に入る必要が? ローゼさんはちょっと学のないだけの普通の人間だぞ?
「え、いや。なんでですか? 私、強くありませんよ」
「ふふ、それはな...」
魔王はいきなりハッとしたかの様な顔をし、固まった。そして、少しモジモジしたかと思うと
「少し寂しいからじゃよ...」
「「え?」」
「いや、魔王様。寂しいからってそれは...」
「いいじゃろ! お主少しだけ真面目すぎるんじゃよ。他にも話し相手が欲しいのじゃ」
「はぁ...」
「それに、いずれ召使いも必要になるのじゃろうし、ローゼが第一号ってことにすれば良いじゃろ」
魔王はローゼさんに数回ウインクして見せた。ローゼさんは困惑し、開けている方がどんどん大きくなっていた。
「まぁ、えっと。今の魔王軍は小さいですけど、今後大きくなるつもりなんで。今は給料とかないですけど、部下が増え次第給与も渡そうと思っているんで。あ、えっと...あと、福利厚生も結構良かったりするかもしれないんで。割と良い物件だと思いますよ」
俺は早口でそう言った。
「は、はぁ...」
「だめ、ですか...?」
「いや、少しびっくりしました。だって、いつも可愛がっていたシルクちゃんが魔王様で、その魔王様が私たちを救おうとしてくれて、それで、私を魔王軍にスカウトしているんです」
彼女は地面に落ちている残り少ない資料を拾い上げ、こちらを向き直した。
「素直に嬉しいです。ありがとうございます」
「じゃあ、来てくれるんじゃな!?」
彼女は確かに笑顔だった。でも、目が死人のそれだった。
彼女の資料を持つ手の力は弱く、一枚がこちらに飛んできた。俺はその資料を掴み取り、書かれている少ない文字に目を通した。
敵軍内容 魔物三体
全員魔王幹部クラスの模様
「いや、やめない。助けるぞ」
「どうしてですか? それこそ、アルバート王国なる国に作った方が得では無いですか?」
「この町のある国、シルバ王国は大国じゃ。そしてアルバート王国は小国じゃ。なんで攻めるのだと思う?」
「分からないです。大国の方が勝機がありそうですけどね。武力に差がありそうです」
すると、魔王は歩き出し、住宅の方へと戻っていった。
ついていくといきなり立ち止まり、背を向けながらまた話し始めた。
「魔王アルファは人間との調和を目指しておる。そのためにまず、人間に複数の魔物を差し出したんじゃ。魔物と言うのがどう言うものなのか、また、人間にどれほどの利益を与えるのかを教えるためにな」
「その利益はどう言った内容ですかね」
「武力じゃ」
風が吹いた。風上にはギルドがあり、少しだけ声が聞き取れそうだった。
「理性のある魔物と人間の精神的な違いはほぼ無い。しかし、力の差が大きすぎる。持っている国にとってはある種の爆弾になるのじゃ」
「なるほど。国にあげているんですね、魔王アルファは」
「そうじゃ。そして、シルバは貰えなかった」
「武力が既に強大だからですか?」
「いいや、国の繋がりだろうな」
彼女は振り返り、麦わら帽子を脱いでからこちらを向いた。大きなツノが月夜に照らされる。
「大戦じゃよ」
「なるほど...魔王アルファには和解する気なんて無いんですね」
「横の繋がりが多い国には仲間がおる。逆もまた然りじゃ。大国が小国に叩かれたとなると、周りの国は黙っていないじゃろうな...」
「でも、そんなことしたらアルバート王国が潰されそうですね。本人達も気づかないことはないと思いますが」
すると魔王はこちらへ近づき、弱い力で腹パンをしてきた。
「もし、お主の様な奴が国におったら、国王はどうすると思う? 大陸一つが潰されるのじゃぞ?」
にやけ顔を見せてきた。
「ふふ、聞いていたんですね」
「勿論だとも。それで、どうすると思う?」
「攻めますね。他国の魔物なんかよりも強いでしょうし」
彼女は小さく頷たかと思うと、両手を腰に当て、胸を張ってきた。
「我が僕よ、妾達の最終目標はなんじゃ?」
「世界征服です!」
「その通り! では、ここで魔王アルファに人間を根絶やしにされて黙っていられるか!」
「いいえ!」
「ここに宣言しよう! 魔王シルクは魔王アルファに正式に敵対する!」
これで良いのか? いや、これで良いんだ。俺らの目標は世界征服。魔物だけの、文化のないもぬけの世界なんていらない。
やってやろう。みとけよモサ、お前の上司をぶっ潰してやる。
「そうだなぁ、宣戦布告と言うからには承認者が必要だな。なぁ、ローゼ?」
ローゼさん? 魔王の視線の先には、口を大きく開き、書類を地面に落としているローゼさんの姿があった。
え、みられてたの? なんで魔王は何も触れなかったの?
「あの、えっと...本当に魔王だったんですか...?」
「だから言っておったろうに。本物の魔王じゃと」
「でも、ずっと麦わら帽子被ってましたし...」
彼女はひたすらアワアワしている。書類の存在も忘れ、一つ一つの紙が風に飛ばされている。
「安心せい、この町は妾達が守る。だから、その代わりお主には魔王軍に入ってもらう」
「「は?」」
助けるのは分かる。でもなんで魔王軍に入る必要が? ローゼさんはちょっと学のないだけの普通の人間だぞ?
「え、いや。なんでですか? 私、強くありませんよ」
「ふふ、それはな...」
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「少し寂しいからじゃよ...」
「「え?」」
「いや、魔王様。寂しいからってそれは...」
「いいじゃろ! お主少しだけ真面目すぎるんじゃよ。他にも話し相手が欲しいのじゃ」
「はぁ...」
「それに、いずれ召使いも必要になるのじゃろうし、ローゼが第一号ってことにすれば良いじゃろ」
魔王はローゼさんに数回ウインクして見せた。ローゼさんは困惑し、開けている方がどんどん大きくなっていた。
「まぁ、えっと。今の魔王軍は小さいですけど、今後大きくなるつもりなんで。今は給料とかないですけど、部下が増え次第給与も渡そうと思っているんで。あ、えっと...あと、福利厚生も結構良かったりするかもしれないんで。割と良い物件だと思いますよ」
俺は早口でそう言った。
「は、はぁ...」
「だめ、ですか...?」
「いや、少しびっくりしました。だって、いつも可愛がっていたシルクちゃんが魔王様で、その魔王様が私たちを救おうとしてくれて、それで、私を魔王軍にスカウトしているんです」
彼女は地面に落ちている残り少ない資料を拾い上げ、こちらを向き直した。
「素直に嬉しいです。ありがとうございます」
「じゃあ、来てくれるんじゃな!?」
彼女は確かに笑顔だった。でも、目が死人のそれだった。
彼女の資料を持つ手の力は弱く、一枚がこちらに飛んできた。俺はその資料を掴み取り、書かれている少ない文字に目を通した。
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