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終章.嘘つきたちの本音。

13.意思疎通も一方通行

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 わたしはセキの肩を押して、毛足が長いラグマットの上に押し倒す。跨ったまま、セーターもインナーババシャツも一気に脱いでブラだけになった。気分はアマゾネスである。
 セキのシャツも一気にぬがせてアンダーウェアをめくりあげて、見えた肌に抱きついた。

 無駄なく引き締まった筋肉と全面ピッタリくっつけれないのが残念だけど、今は我慢してあげよう。
 胸に耳を寄せると、早くなってる心臓の音が聞こえて、全身の緊張がほぐれる。
 しばらく抱き合ったのち、セキのスキニーパンツを脱がしにかかり、ボクサーパンツへ手を伸ばした。確かな固さの棒状のものを少し撫でてからボクサーブリーフを下ろすと、固くなった雄の肉が勢いよく飛び出した。
 こうなってるくせに涼しい顔しやがって。

「きゆ、落ち着いて」
「興奮してるからムリな相談」

 準備万端な屹立を、ショーツをずらして濡れはじめたばかりのそこへあてがう。3週間ぶりのセキの熱が当たるだけで、トロトロ愛液が滴るのがわかる。

「傷つくかもしれないから、だめだよ」
「なにを、いまさら」

 セキがわたしの腰を掴んで阻止しようとした。くちくちと丸い先と蜜口が軽く擦れるのがよくて、ゾクゾクと腰の奥に熱が溜まる。
 ああ、早くこれで貫かれたい。気持ちよくなりたい。

「……クリスマスプレゼントってことにして、しようよ……んっ」
「プレゼントは別に用意してあるよ。持ってくる、から待ってて」
「いーやーだー。待ってあげない」

 ぐっと先っちょをぐずついた蜜口に挿入いれると、ぶわりと身体の熱があがる。でも、ちょっと、キツくて、いたい。なんのこれしき。これまで出入りしてたんだから、入れ!

「こら、きゆ。だから……、ちゃんとほぐしてないからだよ」
「今すぐ、セキがほしいの」

 感情が変に高ぶって、身体のどこそこがうずうず疼く。身体の準備ができてないうちにしたから? わかんない。

「あげるよ。だから、落ち着いて。そのまま、こっちにおいで」

 セキは上半身を起こしてソファに背を預ける。そして、両手でわたしの手をすっぽり包む。キスが早くほしいのに、額、瞼、頬、鼻の先にばかり、キスを繰り返す。

「俺だってきゆとしたいよ。甘えて、甘やかせてからにしようって思ってたんだよ」
「相談なかった」
「相談ってほどのものじゃないでしょ。それに話したら一蹴するのは目に見えてたしね」
「どうしてそこまでするの? いじわる。けち。出し惜しみ。いけず」

 セキが微笑う。よく目にする不穏さが滲み出ている笑顔だ。性格の底意地の悪さが滲み出ている笑み。普段の通りの時任世基氏である。
 こんなセキは、だいたいド変態プレイを強要してくる。

「我慢させた方がいいかなって」

 ようやくくちびるにキスをされ、ちゅっちゅっと軽く啄むキスを繰り返された。
 こんなキスじゃなくて、お弁当を持って行った日にした、あのストレートなキスがほしい。とはいえ、わたしからするのはイヤだ。勝ち負けじゃなくて。セキの手のひらの上に転がされてるみたいだから。

「せき……、ん、」

 わたしから舌を伸ばしてセキの口内をまさぐる。はぁっと息継ぎをすると、セキがわたしの口内をまぐり、お気に入りのポイントを丹念に舌で擦る。

「本心から俺をほしがって」
「……はぁ……ほしいよ、セキが」
「そんなんじゃ、だめだよ」

 背中に回ったセキの手が器用にブラをはずす。重力に逆らわなくなった乳房を強めに捏ねられて、痛くて、でも気持ちがよくて、わたしは長く息を吐きながら声をあげる。
 ピンと勃った乳頭ごと引っ張られた快感で、ぶるぶる背中がこわばる。

「ん。ん、ぁ……あっ、ふ」

 とろとろのなかに、にゅっとセキの熱が入って──、瞼の裏がチカチカ点滅しはじめた。
 もっと、もっと。感じたい。セキにしてもらうこと、ぜんぶ。感じたい。

「よいしょ、と」

 おっさんくさい掛け声がかかると、わたしを抱きしめたままセキがさらに上体を起こす。そうしながら、わたしの腰を持って、これ以上深く挿入しないようにする。
 恨みがましく見下ろすと、乳房に埋もれたセキはご満悦そうに目元をゆるませていた。

「やわらか……」

 ささやかなおっぱいで申し訳なるくらい、セキは少しのまるみにキスを繰り返す。嬉しそうに、大切そうに、繰り返される。……調子が狂うな。

「ねぇ。もっと。して。セキの頭を抱えたくなるくらいの」
「そのご注文には対応できません」
「なんでそんな言い方で拒否んの?」
「今は俺が癒されたいって、言ったよね? ただ抱き合うのもいいものだよ?」
「後でいいじゃん」
「だめ。きゆがそういう態度のうちは、リクエストには応えないよ」

 ちゅっちゅっと軽いキスを繰り返し、時々甘噛みをする。快感的には物足りない。それでもわたしは、腟内なかにあるしっかりとした雄肉を締めあげて、小さな官能を味わう。

「きゆ。寂しかった?」
「なにが?」
「俺は寂しかったよ。こんなに離れるのは珍しくないのに、生きてきたなかで一二を争うくらいに、この1週間は寂しかったよ」

 ぎゅっと腰を掴んでいたセキの手が、腰とお腹を撫でまわす。ショーツの縁を指がゆっくりとなぞられて、腰と背筋がぴくんぴくん反応する。
 なぜかドキドキする。入れるものはもう入れちゃってるのに。

「好きな人が目の前にいて、愛を告白したのに、意思疎通が叶わない、なんてさ。悲劇っぽくない?」
「意思疎通が叶わない?」
「そうだよ、きゆ。俺はきゆが好きだって言ったのに、返事をもらえてない。可哀想でしょ」
「……それは」
「都合がいいセフレ? 自慰の続き? 譲の代わりのまま? 俺は非建設的な関係を続けたくない」

 ごくゆっくりセキが腰を動かして、なかの浅いところをくぷくぷ擦る。いい所の手前ばかり固い雄が襞をめくるのが、うらめしい。

「……あぁ、あ。ん……そこじゃなぁい、いっ」
「セックスする前に話をしたかったのにな」
「やぁだ、セキ。ちゃんとして……あ」
「話にならないでしょ? これじゃ。セックスをしながら話をしたくないって言ったのは、きゆだよ?」
「もう。した後でいいじゃんっ……ひぁっ、……──!」

 乳首を噛まれて全身に快感が回り、軽くイってしまった。

「よくない。愛を語ることとセックスは別」
「ほぼ同義語じゃん……あっ、あっ、や」

 びしょびしょのアンダーヘアに隠れている、鋭敏になったクリを指で扱かれ、わたしは思いっきり仰け反った。
 気持ちいい、きもちいい。でも、お腹の奥が切ない。ばか。セキのばか。

「同義語じゃないよ。きゆはこれまで好きじゃない男と代わりのセックスしていたから、倫理観が壊れてるんだよ」
「あ……ぁぁぁっ、失恋した、よ。今は、せき、だけ……、セックスもオナニーもしてない、よ」
「セックスとオナニーは違うでしょ?」
「うう、んんん。もう、後にして。奥にガツガツして」

 涙目で睨むと、セキは柔らかな目の奥をギラギラさせて、

「だめ」

 とのたまう。
 セキだって、中途半端に入れてるから苦しいはずだ。根比べ? コンクラーベ?

「きゆ。俺はきゆが好きだよ。身体だけじゃなくて、全部が好きで愛しいんだよ」
「あっ、ああっ」

 きゅうっと締まる。なかにセキがいるのがハッキリわかる。固くて熱いのが、入り口をみちみちにしている。ここからとけちゃいそう。

「セックス中の戯言じゃない、真剣な気持ち。きちんと話したい」
「おねが、ぁ、やめ、……い……」

 なにもされてないのにイってしまいそう。ガツンとイくんじゃなくて、じわじわ上り詰める感じ。考えを放棄するような快感とは対極で、否が応でもセキのことを意識してしまう。




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