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幽霊でも…。
幽霊になっても
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どうやら、死んでしまったらしい…。
誰もいない夜の公園で、立ち尽くす女の人。長い柱の上で灯る街頭は、女をぼんやりと照らしていた。
「あぁ。おわってしまった。」
最近、楽しみが見つかり生きる意味を見出していた女は、人生の終了に悲観していた。
女は、仕事もぼちぼちで真面目に生きていた。貯金もして、結婚はしていなかったが好きな人が出来ていた。相手の自分を好きだという熱い眼差しは、今でも忘れられなかった。
すべてが順調だった。が、燃えるアパートに取り残されて亡くなった。その不規則な動きをする炎は、印象的だった。
「あぁ、どうしよう」
女は先の事を考えていた。死んだ事はしょうがない。しかし、これからどうしようか。天国への扉も今の所、開いていない。女は、思い出のあるこの街の中にいる。
とりあえず歩く事にした。公園に居ても仕方がないからだ。人のいる駅の方へ行こうか、そんな事を考えながら歩いていた。
見慣れた風景は、今となっては別の世界だった。風が吹いても感じる事はなく、落ちているゴミすら蹴ることができない。通り過ぎていく人の眼は、無関心そのものだった。
街頭が増え、店もたくさんある場所に来た。明るいその場所では、人は騒がしく動いていた。
「あぁ、この店。好きだったなあ。」
酒を呑みすぎて、怒られた場所。悲しく一人で呑んだ場所。それぞれの店を、独り言で思い出を語っていた。
「…。これ初めて見るなぁ。」
都会の真ん中で、一つ見たことのない店があった。比較的小さく、古そうだった。外にあるランプの火は、橙色でゆらゆらと揺れていた。
「なんだか、変わった店だな。ちょっと入ってみよ。」
その店は、人は全く寄り付かない雰囲気だった。もし生きていたら、こんな店は評価を調べる前に別の所へ行くだろう。
しかし幽霊なので、人の目を気にせず勝手に入ってみようと思った。気になったからだ。
「あれ?おかしい。」
壁を通り抜ける事が出来なかった。仕方なく、手で開ける事にした。
「いらっしゃいませ。」
ドアがキーと音を立てて開けられると、女店主と思われる人が出てきた。
「誰のこと?」
周りを見ると誰一人お客はいなかった。もちろん入ってくる人もいない。女を除いて…。
「あなた、亡くなった方ですよね?」
「あ、ハイ。そうです。」
~驚いた。幽霊を見る事のできる人がこの世にいるとは、思わなかった。
「ぜひ、あなたに食べてもらいたい物があります。ここへどうぞ。」
丁寧な喋りで、女をカウンター席へと誘導した。女は、そのまま黙って座った。
「幽霊でも、食べれます?」
「ええ。もちろん。私は、未来を予知する料理を作ります。」
「未来?」
人生が終わった女の人にとって未来などなかった。しかし、
「まだあります。あなたは死んでも、やることが残っています。」
「やること?わかりました。その料理食べてみます。」
「ありがとうございます。」
女店主は深々と頭を下げ、テーブルに水を置いた。不思議にそのコップも手に持つことができた。
厨房へと戻った店主は、金属の音を立てながら料理を作った。
「あぁ、そうか。死んだのか。」
まだ納得がいかない様子だった。そのため、まだこの世に魂が残っているのだろう、とも考えた。
「人生楽しかったですか?」
厨房からそう、質問が飛んできた。それに女は、
「はい、とても。特に趣味も最近見つかって。もっと生きていたかった。」
「…。そうですか。それは何よりです。」
そう答え、無言の空間となってしまった。
誰もいない夜の公園で、立ち尽くす女の人。長い柱の上で灯る街頭は、女をぼんやりと照らしていた。
「あぁ。おわってしまった。」
最近、楽しみが見つかり生きる意味を見出していた女は、人生の終了に悲観していた。
女は、仕事もぼちぼちで真面目に生きていた。貯金もして、結婚はしていなかったが好きな人が出来ていた。相手の自分を好きだという熱い眼差しは、今でも忘れられなかった。
すべてが順調だった。が、燃えるアパートに取り残されて亡くなった。その不規則な動きをする炎は、印象的だった。
「あぁ、どうしよう」
女は先の事を考えていた。死んだ事はしょうがない。しかし、これからどうしようか。天国への扉も今の所、開いていない。女は、思い出のあるこの街の中にいる。
とりあえず歩く事にした。公園に居ても仕方がないからだ。人のいる駅の方へ行こうか、そんな事を考えながら歩いていた。
見慣れた風景は、今となっては別の世界だった。風が吹いても感じる事はなく、落ちているゴミすら蹴ることができない。通り過ぎていく人の眼は、無関心そのものだった。
街頭が増え、店もたくさんある場所に来た。明るいその場所では、人は騒がしく動いていた。
「あぁ、この店。好きだったなあ。」
酒を呑みすぎて、怒られた場所。悲しく一人で呑んだ場所。それぞれの店を、独り言で思い出を語っていた。
「…。これ初めて見るなぁ。」
都会の真ん中で、一つ見たことのない店があった。比較的小さく、古そうだった。外にあるランプの火は、橙色でゆらゆらと揺れていた。
「なんだか、変わった店だな。ちょっと入ってみよ。」
その店は、人は全く寄り付かない雰囲気だった。もし生きていたら、こんな店は評価を調べる前に別の所へ行くだろう。
しかし幽霊なので、人の目を気にせず勝手に入ってみようと思った。気になったからだ。
「あれ?おかしい。」
壁を通り抜ける事が出来なかった。仕方なく、手で開ける事にした。
「いらっしゃいませ。」
ドアがキーと音を立てて開けられると、女店主と思われる人が出てきた。
「誰のこと?」
周りを見ると誰一人お客はいなかった。もちろん入ってくる人もいない。女を除いて…。
「あなた、亡くなった方ですよね?」
「あ、ハイ。そうです。」
~驚いた。幽霊を見る事のできる人がこの世にいるとは、思わなかった。
「ぜひ、あなたに食べてもらいたい物があります。ここへどうぞ。」
丁寧な喋りで、女をカウンター席へと誘導した。女は、そのまま黙って座った。
「幽霊でも、食べれます?」
「ええ。もちろん。私は、未来を予知する料理を作ります。」
「未来?」
人生が終わった女の人にとって未来などなかった。しかし、
「まだあります。あなたは死んでも、やることが残っています。」
「やること?わかりました。その料理食べてみます。」
「ありがとうございます。」
女店主は深々と頭を下げ、テーブルに水を置いた。不思議にそのコップも手に持つことができた。
厨房へと戻った店主は、金属の音を立てながら料理を作った。
「あぁ、そうか。死んだのか。」
まだ納得がいかない様子だった。そのため、まだこの世に魂が残っているのだろう、とも考えた。
「人生楽しかったですか?」
厨房からそう、質問が飛んできた。それに女は、
「はい、とても。特に趣味も最近見つかって。もっと生きていたかった。」
「…。そうですか。それは何よりです。」
そう答え、無言の空間となってしまった。
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