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幽霊でも…。
〜2
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大体二十分経ったとき、料理は出てきた。とても不思議だった。入ってから誰一人、店に入ってこない。それだけ人気がないのか、それとも…。
「お待たせしました。かぼちゃのスープです。」
どんなに派手な料理かと思ったら、スープかよ!そう思った。
「これだけですか。」
「はい。これだけで、あなたの進むべき道がわかります。もしかしたら、この現世の悔いが見つかるかも。」
「早く、成仏したいですね。」
女はそっけない態度をとった。
スプーンを掴んだ。これも触ることができた。
一口、黄色い物をすくって飲んだ。ドロっとしていなかった。サラリと口当たりが良く、そして甘かった。
「美味しい。」
思わずそう言ってしまった。女主人は笑っていた。
「良かったです。」
そう言って、厨房へと戻ってしまった。女は、スプーンを使わずそのまま飲んだ。
すると、底に不器用に切られたかぼちゃがあった。大小様々なかぼちゃだった。
しかし、女は何か思い出した。
~過去の話。
女は、今あの人の家にいる。あの人とは、お互い付き合っている男性のこと。今、とても楽しい。あの人の為に、料理を作っているからだ。
鍋の中に、味噌汁の具として豆腐人参、かぼちゃなどを入れていた。
料理は苦手で不器用に切っていた。しかし、私は本気で作っている。味は悪くても、気持ちさえあれば十分。そう思っていた。
「そうだった。あの人のお陰で私は楽しく、人生送れたんだった。もっと、彼を幸せにしてあげれなかった。」
やっと気がついたのか、というような顔をした女主人は、
「お勘定はいりません。後は、好きなようにしてください。無事に、成仏できる事を祈っています。」
そう言ってもう一杯水を、曇りのあるコップに注いだ。その中で、透明な氷がカランと音をたてた。
「ありがとうございます。」
目的が見えたように、進むべき道が一本になった。あとは簡単だ。
女は立ち上がり、カランとドアを開けた。あのランプをもう一度見たかった。優しい光を。
しかし、もうその場は空き地だった。
夜は、まだ長い。
’~あの人
「はぁ疲れた。」
男は、ため息混じりに、黒い服を脱いでいた。
そこには、若い女の人がいた。テーブルには、お酒の缶が沢山置いてあった。
「今日先輩の、葬式でしたよね。」
そういった。
「そうだよ。悲しいもんだ。あんなに仕事が出来る人が、ポックリ逝ってしまうなんて。
俺、あの人から沢山の事を教えてもらったのに。」
男は悲しそうだった。突然、冷気が漂い、ブルッと震え、
「今日は寒いな。」
と一言。
「私もですよ~。あんないい人が死ぬなんて。思わなかった…。」
若い女はそう言い、男は風呂場に行った。
いつの間にかその場に女幽霊がいた。
女は、幽霊となってあの人に会いに来たのだった。
「みんな私のことそう思っていたの。てか、どうしてあいつがいるの?」
その若い人は、女の仕事の後輩だった。美人で、態度から彼を狙っているに違いなかった。
すると後輩は、周りをキョロキョロし始めた。何かを探している様子だったが、タオルを首に掛けた男が風呂からあがってくると、態度は変わった。
「なんか変な部屋だね。視線感じる。変わった事ない?」
「そういえば、前は物の位置が変わってたり、靴が無くなったりしてるんだよね。でも、今はそんな事ないな。」
「もしかして、先輩が部屋に入ってきた事ある?」
「あぁあるよ。前に誕生日、祝ってもらって、味噌汁とか朝ごはん作ってくれた。まあ、普通に美味しかったけど。」
男は笑っていた。後輩は、そうだったの、と舌打ちを軽くしていた。女幽霊はそれに気がついていた。多少苛立ちがみえた。
「そうそう。先輩、なんだか僕に好意をよせていた気味だったな。」
「え?そうだったの?」
後輩は驚いていた。
「祝ってくれる時、無理やりだったし、映画行こうって誘ったのも先輩だし。僕は、その気なかったのに。」
「断れば良かったんじゃない?」
後輩は、頬を可愛く膨らませた。それに男は無視して、
「先輩だし、断れなかった。仕事頑張ってるし、息抜きとしていいかなと思って。」
「優しいんだね。」
後輩は男を褒めた。
女は、呆気に取られていた。本当は、私の勘違い?お互いに好きだと思っていたのは、私の思いすごしだった。でも、今だにあの人が好きだ。悲しかった。
すると、インターホンが鳴った。
男は出た。すると、あいては警察官だった。一人は先輩というようなずっしりとした雰囲気だった。もう一人は、新人というような若い人だった。
「すみません、夜分に。分かった事がありまして、先日亡くなった有村さんの事なんです。」
「先輩がどうしたんですか?」
「有村さんの自宅からあなたの写真が大量に見つかりまして。
つまり、盗撮されていました。心当たりありませんか?」
「!マジですか?」
「お待たせしました。かぼちゃのスープです。」
どんなに派手な料理かと思ったら、スープかよ!そう思った。
「これだけですか。」
「はい。これだけで、あなたの進むべき道がわかります。もしかしたら、この現世の悔いが見つかるかも。」
「早く、成仏したいですね。」
女はそっけない態度をとった。
スプーンを掴んだ。これも触ることができた。
一口、黄色い物をすくって飲んだ。ドロっとしていなかった。サラリと口当たりが良く、そして甘かった。
「美味しい。」
思わずそう言ってしまった。女主人は笑っていた。
「良かったです。」
そう言って、厨房へと戻ってしまった。女は、スプーンを使わずそのまま飲んだ。
すると、底に不器用に切られたかぼちゃがあった。大小様々なかぼちゃだった。
しかし、女は何か思い出した。
~過去の話。
女は、今あの人の家にいる。あの人とは、お互い付き合っている男性のこと。今、とても楽しい。あの人の為に、料理を作っているからだ。
鍋の中に、味噌汁の具として豆腐人参、かぼちゃなどを入れていた。
料理は苦手で不器用に切っていた。しかし、私は本気で作っている。味は悪くても、気持ちさえあれば十分。そう思っていた。
「そうだった。あの人のお陰で私は楽しく、人生送れたんだった。もっと、彼を幸せにしてあげれなかった。」
やっと気がついたのか、というような顔をした女主人は、
「お勘定はいりません。後は、好きなようにしてください。無事に、成仏できる事を祈っています。」
そう言ってもう一杯水を、曇りのあるコップに注いだ。その中で、透明な氷がカランと音をたてた。
「ありがとうございます。」
目的が見えたように、進むべき道が一本になった。あとは簡単だ。
女は立ち上がり、カランとドアを開けた。あのランプをもう一度見たかった。優しい光を。
しかし、もうその場は空き地だった。
夜は、まだ長い。
’~あの人
「はぁ疲れた。」
男は、ため息混じりに、黒い服を脱いでいた。
そこには、若い女の人がいた。テーブルには、お酒の缶が沢山置いてあった。
「今日先輩の、葬式でしたよね。」
そういった。
「そうだよ。悲しいもんだ。あんなに仕事が出来る人が、ポックリ逝ってしまうなんて。
俺、あの人から沢山の事を教えてもらったのに。」
男は悲しそうだった。突然、冷気が漂い、ブルッと震え、
「今日は寒いな。」
と一言。
「私もですよ~。あんないい人が死ぬなんて。思わなかった…。」
若い女はそう言い、男は風呂場に行った。
いつの間にかその場に女幽霊がいた。
女は、幽霊となってあの人に会いに来たのだった。
「みんな私のことそう思っていたの。てか、どうしてあいつがいるの?」
その若い人は、女の仕事の後輩だった。美人で、態度から彼を狙っているに違いなかった。
すると後輩は、周りをキョロキョロし始めた。何かを探している様子だったが、タオルを首に掛けた男が風呂からあがってくると、態度は変わった。
「なんか変な部屋だね。視線感じる。変わった事ない?」
「そういえば、前は物の位置が変わってたり、靴が無くなったりしてるんだよね。でも、今はそんな事ないな。」
「もしかして、先輩が部屋に入ってきた事ある?」
「あぁあるよ。前に誕生日、祝ってもらって、味噌汁とか朝ごはん作ってくれた。まあ、普通に美味しかったけど。」
男は笑っていた。後輩は、そうだったの、と舌打ちを軽くしていた。女幽霊はそれに気がついていた。多少苛立ちがみえた。
「そうそう。先輩、なんだか僕に好意をよせていた気味だったな。」
「え?そうだったの?」
後輩は驚いていた。
「祝ってくれる時、無理やりだったし、映画行こうって誘ったのも先輩だし。僕は、その気なかったのに。」
「断れば良かったんじゃない?」
後輩は、頬を可愛く膨らませた。それに男は無視して、
「先輩だし、断れなかった。仕事頑張ってるし、息抜きとしていいかなと思って。」
「優しいんだね。」
後輩は男を褒めた。
女は、呆気に取られていた。本当は、私の勘違い?お互いに好きだと思っていたのは、私の思いすごしだった。でも、今だにあの人が好きだ。悲しかった。
すると、インターホンが鳴った。
男は出た。すると、あいては警察官だった。一人は先輩というようなずっしりとした雰囲気だった。もう一人は、新人というような若い人だった。
「すみません、夜分に。分かった事がありまして、先日亡くなった有村さんの事なんです。」
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「有村さんの自宅からあなたの写真が大量に見つかりまして。
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「!マジですか?」
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