13 / 56
話し合いの結果
しおりを挟む
ランス伯爵はそこまで言ってから、今度はマーシャの方に向いた。
「マーシャは自分で勝手に生きろ。既にサウザン子爵家に嫁いだ時に離籍している。今後も関係を持つ気は無い。我が家に接近することを禁じる」
これには流石にマーシャも驚いた。婚家から離縁されるのは想定内だったが、実家は考えてもいなかった。
「なぜなの。ソフィだって結婚した時に離籍しているし、条件は同じじゃないの」
グレッグが怒鳴りつけた。
「同じじゃないだろう。お前はランス伯爵家の名にも泥を塗ったんだぞ。金輪際顔を見たくない」
「マックスは孫だし、甥よ」
「知らないね。誰の子かもわからない私生児など、我らは知ったこっちゃない」
「ひどい。アトレーの子よ。あの顔を見たら一目瞭然じゃない」
そこで、心底不思議そうに、グレッグがマーシャに尋ねた。
「お前、貴族社界に知れ渡るような真似を、なぜした?なんの為に?」
マーシャに代わってゲート伯爵夫人が答えた。
「キースより可愛いと、皆に言わせたかったのですって。それとアトレーの子供だと広めて、アトレーの後妻の地位を狙ったそうよ」
グレッグも、他の者も、しばし絶句した。
グレッグが頭を振りながら絞り出すように言った。
「馬鹿馬鹿しい」
「同感よ。それで失うものが、分からないほど馬鹿なのね。悪いけど、ランス家の教育を疑ってしまったわ」
「そうですね。こいつはソフィと違って昔からそんなだった。
だからアトレーにはソフィを紹介したのに、お前がそれほど悪趣味だったなんて知らなかったよ。
マーシャと生涯の恋人?好きにしてくれ」
ヒートアップする場とは正反対の、のんびりとした口調でランス伯爵が言った。
「ではこれで話しは終わリでいいな。サウザン子爵家への対応は、各々で行う。では、帰ってくれるかね」
背を向けかけた伯爵に向かって、マーシャが叫んだ。
「いつもソフィにばかり良くしてひどい。お兄様だってアトレーを私に紹介してくれたら良かったじゃないの。
私は田舎の子爵家に嫁がさせられたのよ。遊ぶ場所もないところに」
ランス伯爵が振り向いた。
「お前がそんなだからだ。何度も言い聞かせただろう。貴族社会のルールを学ばないなら、貴族の家に嫁がせられないと」
そして疲れたように言った。
「それでも、できれば貴族の家に嫁がせてやろうと、大丈夫そうな相手を選んだのに、何の意味も無かったな」
マーシャは怒りで真っ赤になって叫んだ。
「私は、アトレーと再婚するんだから。
後で後悔しても、孫には会わせてあげないわよ。それにゲート伯爵家のほうが格上なのよ、残念ながら」
溜息をついて、グレッグがアトレーに尋ねた。
「仕事、解雇されたんだろ。出世の道が閉ざされたな」
「ああ、昨日、解雇された」
「え、なぜなの?」
「君のせいだ。馬鹿は要らないそうだ」
グレッグが焦れたように言った。
「まだ理解していないのか。お前のやったことは貴族社会では認められないんだよ。もうまともな家からは相手にされない。たぶん子供達も厳しいだろうな。可哀想に」
「なぜよ。わからないわ。子供を洗礼式に連れて来ただけじゃない」
「すぐにわかるよ。お前はアトレーと子供を道連れに、貴族界から脱落したんだ。友人達も、もうそっぽを向いているだろうな。平民として働いたらどうだ」
「馬鹿な事言わないで!」
「もう良いだろう。早く出て行きなさい」
ゲート伯爵家の一同は追い出すように邸から出された。
伯爵夫人はこのままマーシャを置いて行こうと言ったが、泣き叫ばれて結局馬車に載せてしまった。マーシャだけならいいが、アトレーの息子が一緒だ。
「マーシャは自分で勝手に生きろ。既にサウザン子爵家に嫁いだ時に離籍している。今後も関係を持つ気は無い。我が家に接近することを禁じる」
これには流石にマーシャも驚いた。婚家から離縁されるのは想定内だったが、実家は考えてもいなかった。
「なぜなの。ソフィだって結婚した時に離籍しているし、条件は同じじゃないの」
グレッグが怒鳴りつけた。
「同じじゃないだろう。お前はランス伯爵家の名にも泥を塗ったんだぞ。金輪際顔を見たくない」
「マックスは孫だし、甥よ」
「知らないね。誰の子かもわからない私生児など、我らは知ったこっちゃない」
「ひどい。アトレーの子よ。あの顔を見たら一目瞭然じゃない」
そこで、心底不思議そうに、グレッグがマーシャに尋ねた。
「お前、貴族社界に知れ渡るような真似を、なぜした?なんの為に?」
マーシャに代わってゲート伯爵夫人が答えた。
「キースより可愛いと、皆に言わせたかったのですって。それとアトレーの子供だと広めて、アトレーの後妻の地位を狙ったそうよ」
グレッグも、他の者も、しばし絶句した。
グレッグが頭を振りながら絞り出すように言った。
「馬鹿馬鹿しい」
「同感よ。それで失うものが、分からないほど馬鹿なのね。悪いけど、ランス家の教育を疑ってしまったわ」
「そうですね。こいつはソフィと違って昔からそんなだった。
だからアトレーにはソフィを紹介したのに、お前がそれほど悪趣味だったなんて知らなかったよ。
マーシャと生涯の恋人?好きにしてくれ」
ヒートアップする場とは正反対の、のんびりとした口調でランス伯爵が言った。
「ではこれで話しは終わリでいいな。サウザン子爵家への対応は、各々で行う。では、帰ってくれるかね」
背を向けかけた伯爵に向かって、マーシャが叫んだ。
「いつもソフィにばかり良くしてひどい。お兄様だってアトレーを私に紹介してくれたら良かったじゃないの。
私は田舎の子爵家に嫁がさせられたのよ。遊ぶ場所もないところに」
ランス伯爵が振り向いた。
「お前がそんなだからだ。何度も言い聞かせただろう。貴族社会のルールを学ばないなら、貴族の家に嫁がせられないと」
そして疲れたように言った。
「それでも、できれば貴族の家に嫁がせてやろうと、大丈夫そうな相手を選んだのに、何の意味も無かったな」
マーシャは怒りで真っ赤になって叫んだ。
「私は、アトレーと再婚するんだから。
後で後悔しても、孫には会わせてあげないわよ。それにゲート伯爵家のほうが格上なのよ、残念ながら」
溜息をついて、グレッグがアトレーに尋ねた。
「仕事、解雇されたんだろ。出世の道が閉ざされたな」
「ああ、昨日、解雇された」
「え、なぜなの?」
「君のせいだ。馬鹿は要らないそうだ」
グレッグが焦れたように言った。
「まだ理解していないのか。お前のやったことは貴族社会では認められないんだよ。もうまともな家からは相手にされない。たぶん子供達も厳しいだろうな。可哀想に」
「なぜよ。わからないわ。子供を洗礼式に連れて来ただけじゃない」
「すぐにわかるよ。お前はアトレーと子供を道連れに、貴族界から脱落したんだ。友人達も、もうそっぽを向いているだろうな。平民として働いたらどうだ」
「馬鹿な事言わないで!」
「もう良いだろう。早く出て行きなさい」
ゲート伯爵家の一同は追い出すように邸から出された。
伯爵夫人はこのままマーシャを置いて行こうと言ったが、泣き叫ばれて結局馬車に載せてしまった。マーシャだけならいいが、アトレーの息子が一緒だ。
2,505
あなたにおすすめの小説
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
いくつもの、最期の願い
しゃーりん
恋愛
エステルは出産後からずっと体調を崩したままベッドで過ごしていた。
夫アイザックとは政略結婚で、仲は良くも悪くもない。
そんなアイザックが屋敷で働き始めた侍女メイディアの名を口にして微笑んだ時、エステルは閃いた。
メイディアをアイザックの後妻にしよう、と。
死期の迫ったエステルの願いにアイザックたちは応えるのか、なぜエステルが生前からそれを願ったかという理由はエステルの実妹デボラに関係があるというお話です。
【本編完結】アルウェンの結婚
クマ三郎@書籍&コミカライズ3作配信中
恋愛
シャトレ侯爵家の嫡女として生まれ育ったアルウェンは、婚約者で初恋の相手でもある二歳年上のユランと、半年後に結婚を控え幸せの絶頂にいた。
しかし皇帝が突然の病に倒れ、生母の違う二人の皇子の対立を危惧した重臣たちは、帝国内で最も権勢を誇るシャトレ侯爵家から皇太子妃を迎えることで、内乱を未然に防ごうとした。
本来であれば、婚約者のいないアルウェンの妹が嫁ぐのに相応しい。
しかし、人々から恐れられる皇太子サリオンに嫁ぐことを拒否した妹シンシアは、アルウェンからユランを奪ってしまう。
失意の中、結婚式は執り行われ、皇太子との愛のない結婚生活が始まった。
孤独な日々を送るアルウェンだったが、サリオンの意外な過去を知り、ふたりは少しずつ距離を縮めて行く……。
【完結】どうか私を思い出さないで
miniko
恋愛
コーデリアとアルバートは相思相愛の婚約者同士だった。
一年後には学園を卒業し、正式に婚姻を結ぶはずだったのだが……。
ある事件が原因で、二人を取り巻く状況が大きく変化してしまう。
コーデリアはアルバートの足手まといになりたくなくて、身を切る思いで別れを決意した。
「貴方に触れるのは、きっとこれが最後になるのね」
それなのに、運命は二人を再び引き寄せる。
「たとえ記憶を失ったとしても、きっと僕は、何度でも君に恋をする」
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる