氷の貴婦人

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第二章 キースの寄宿学校生活

幼馴染同士の会話1

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 まずは三人で乾杯した。
 一口飲んですぐにローラがパッと顔を上げた。

「美味しいわね。さすが幻と言われるだけある。どうやって手に入れたの」

 自慢そうな表情を隠しもせず、グレッグは言い放つ。
「秘密だよ」

 ローラ妃がサイラスと婚約した当時からの付き合いなので、彼女も幼馴染枠だ。

「それで、どんな話なの?」

「先にソフィのことを話そうか。
 彼女に家にキースが忍び込んだのは知ってるか?」

「うん。キースから聞いたよ。行動力あるね」

「その後、ソフィがランス家に来て、キースとの交流を勧めてきたんだ。もう自分は大丈夫だと。それで今日の昼の部でも子供と夫をキースに接触させた。
 自分は前に出ないつもりのようだけど、笑いかけていたよ。すごい破壊力で、キースの学友たちが巻き込まれた」

「そこは聞いたよ。夜会でも話題になっていたからね。氷の貴婦人に血が通ったって」

 あはは、と一緒に笑った。

「今までだって幸せそうに見えたけど、あんなにイキイキした様子は初めて……いや、久しぶりなんだ」

「そうか」

「キースの行動で、色々なことが動き始めたよ。
 それに、もう彼が学園に入学する年になったんだ。早いなあ」

「そうだな。ずいぶん経ったよな、あれから」

「心配してた学園での居場所も、見事に掴みとってくれた。キースに感謝だよ。
 ところで、ジョン王子って、行動がサイラスそっくりだな。入学式でいきなりキースに飛びついたって」

「やめてくれ。私達だって、あの時はびっくりしたんだ。
 アトレーにそっくりな彼を見て驚いているうちに、もうジョンはキースの袖を引っ張っていた」

 幻の酒を注ぎ足してくれながら、ローラが言う。

「まるで、あの頃のアトレーとサイラスを見ているみたいだったわ。キースは、あからさまに迷惑そうだったけど、ジョンは引く気がなかったわね。
 あの子、押しと執着心が強いの」

 目に見えるようだ。思わず、クフフと笑ってしまった。

「知ってる。今日もすごかったよ。僕は親友だって言い張って、他の友人達を追い払うんだ。
 それをキースが理解不能、ふざけてるのかなって感じで軽~く捉えていて」

「え、そんなことしているのか?
 周囲が困ってないか?」

「それが、そうでもないんだ。みんな慣れた感じで追っ払われていたよ」

 あはは、とまた笑い、でもローラは、後で締めとくわ、と怖いことを付け加えた。

「ここまではいいんだ。
 ソフィとキースは大丈夫なんだよ。
 問題は、アトレーとその家族だよ」

 ローラが、せっかくの良い酒は、いい話で飲もうと提案した。
 ローラ、やっぱり君は賢い。

 それで話はリデルのことに移った。

「どうもリデルがキースを気に入っているみたいなの。今日も大騒ぎして出かけたのよ。
 まだ、六歳の子供なのに、もっときれいにしないと、キースが他の女の子の所に行っちゃうって、うるさいこと!」

 昼間に見た光景だ。あれは傑作だった。

「リデル王女は、モートン家の子供たちがキースに挨拶している所に乗り込んできて、モートンの双子の娘と言い合いになったんだよ。その挙句、仲良くなって、他の女の子をキースから遠ざける協定を結んだようだ。三人で仲良く高笑いしてた」

「うわ~、何やってるんだ。あの子は」

「高笑いって、あの、おーほっほっていう、あれ?」

「そう。それ。君達のお子さんは、二人共濃いね。性格」

 ローラが、ワインを一本手に取り、コルクを抜いた。チーズを勧めながら、どれを飲むか訪ねてきたので、グレッグは新しいウイスキーを開ける事にした。

 三人で一緒にチーズを食べながら新しい酒の味を確かめる。
 これも、悪くない。

「二人してキースに執着しているのね? 全くもう。ご迷惑を掛けるわね」

「大丈夫。キースはね」

 
 グレッグは、ランス家とゲート家の面々が集まった時の事を話した。

「アトレーとマックスの様子を、俺が聞いたんだが、両家とも詳しくは知らない様子だった。ゲート伯爵達も、一度も領地を訪ねてもいないらしい。
 それで俺が訪問してみようと手紙を出したのだが、断られた。仕方なしに調査を依頼して、報告がこれなんだ」

 グレッグは懐から書類を出し、広げてからサイラスに渡した。

 読んでからローラに回す。

 読み終わったローラが報告書を折りたたみ、グレッグに返した。

「どう思う?」

 まずローラが言った。

「子供が生まれているのは知らなかったから、驚いたわ。おめでとうと言っていいのかしら」

「君たちの耳にも入っていないのか?
 ますます、嫌な感じだ」

 サイラスも考え込んでいる。

「この子供の籍はどうなっているのかな」

「うん、今それも調べさせている。どういう子供か不安だったんでね」

 グラスをテーブルに置いて姿勢を正してサイラスが言った。

「それなら僕の方で出生届をすぐに調べられるよ。公にどういう立場の子供かって事だけだけどね」

「ありがとう。助かるよ。
 突撃訪問も考えたんだけど、その前に、王家の思惑を確認しないとまずいと思ったんだ」

「それでは、今度はこっちの番だな。まあ、聞いてくれよ。もちろん他言無用だよ」

 ローラが、氷を持って来させると言って、部屋を出て行った。


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