公爵令嬢はジャンクフードが食べたい

菜花村

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57 公爵令嬢はビールを作る

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夏が終わり、海水浴シーズンが過ぎた頃、客足が少しだけ減り、スタッフの慣れも相まって、やっとリゾート地のドタバタが落ち着いてきた。

あれから、リゾート開発へ回ってきていた作業員達は全員、インフラ整備へと回した。

ここへ来る人たちがすごく増えたのに、道が狭いわデコボコだわで来るのが大変だったらしい。

私が来たときも確かに大変だった。

あと、香辛料や小麦粉の輸入がものすごく増えたので、輸送に便利で安心安全な道は必要だ。

という事で、近隣領からハンターを雇って、領周辺の魔物や魔獣、野獣を退治してもらった。

退治した魔物と魔獣と野獣は私が買い取り。

実験や新しい料理に使えるかなー。

大量の獣を一体ずつ小型の真空箱で保存して、男爵邸の倉庫に保管。

倉庫は獣でいっぱいになった。

食材を取りに来たコックが真空保存された魔物を見て気絶し、リッカにメチャクチャ怒られた。


さて、道路と獣対策はなんとか出来たけど、防犯対策はどうしよう?

男爵領に来る人たちの殆どが、リゾートに遊びに来るお金持ちの人か、大量の調味料や小麦粉を売りにくる商人さん。

こんなお金になりそうな人が沢山通るような場所、盗賊なら狙いたくなるよね。

一定区間ごとに交番みたいなのを作ってみようかな。

公爵領の自警団の人を派遣してもらって、交代で各派出所に5、6人ずつ待機してもらっておけば、何か問題が起きた時でもすぐ対策しやすいだろうし、犯罪抑止にもならないかな?



インフラ整備が完成した頃、改めて領地の情勢確認したんだけど…各地で貧富の差がかなり出来てしまった。

漁業を生業にしている漁師さんが多分一番充実していると思う。

漁礁に魚が住み始めて漁獲量が増えて、今まで見向きもしなかったワカメやイカがお金になるようになったもんだ。

漁に出ない家族達も、昆布を作る仕事が出来て良い事づくめ。


リゾート地で働く人達は、ピークは過ぎたものの相変わらす忙しそうで、お金があっても休日がなく、お金を使う暇がないくらい大変そうだった。

近隣領からの移住希望者が最近増えてきたので、その人たちをリゾート施設のスタッフにしようと思ってるけど、一人前の従業員になるにはまだまだ時間がかかるから、当面は人手不足だろうね。


インフラ整備に付いていた人達は、一旦仕事が終了。

近々港か塩田の開拓に向かってもらうようになるけど、今のところは定職がない状態。


港、塩田担当の作業員は、遅ばせながら元の配置で働いてもらう。

ただ、かなり後まわしにしていたから、完成の目処はまだまだ先。

それも終わると、ある程度の人は漁港や塩田で作業してもらうんだけど、全員がそうなるとは限らない。


うーん…これが今だけの状態なら問題ないんだけど、今後この状態のままだと…ヤバイよね?

次の対策もどんどん立てていかないとなぁ…



そこで思いついた。

というか、思い出した。

私、公爵家にいた時から作ろうと思ってたものがあったのに、すっかり忘れてた。

 急いで準備に取り掛かろう!



まずは大麦を用意。

大麦に着いた埃を洗い流して、大麦に水を含ませて発芽させる。

大麦が発芽したら、焙燥と呼ばれる乾燥と焙煎を合わせた工程で発芽を止め、低めの温風で麦芽を乾かした後、香りや色を付けるために熱風をかける。

完全に乾燥した麦芽は、袋に入れて手で擦り、麦芽根と麦芽を分離させて、麦芽根を捨てる。

この後、地球時間で1ヶ月ほど寝かせるんだけど、今回だけ時短で10日間。

精麦した麦芽は粗挽きにして温水と混ぜて、マイシェと言われるドロドロしたお粥状にする。

マイシェを攪拌かくはんしながら温度を上げていくと、でんぷんは糖化、タンパク質はアミノ酸に分解されて、液化していく。

これをろ過すると、麦汁と呼ばれる甘い麦ジュースが出来るのだ。

この時点ならアルコールがないので、私でも飲める。

全然苦くない。 めちゃ甘い。

この麦汁に、ビール特有の苦味の素であるホップを入れて、煮沸して殺菌をする。

殺菌した麦汁に、酵母菌を入れて糖分をアルコールと炭酸ガスに分解する主発酵と呼ばれる1段回目の発酵をさせていく。

因みに、主発酵の時に8~10度で約7日間程発酵させたものをラガー、15~20度で約5日間程発酵させたものをエールと呼ぶ。

今回作るのはエール。

少しでも時短するのだ。

と言っても、この時点で20日経過、いつもよりかなり時間食ってるよ。

主発酵が終わった若ビールと呼ばれるものを、樽に詰めて涼しい場所で30日程保管、これを後発酵と言うらしい。

後発酵が終わったらろ過して、やっとビールの出来上がり!

…完成まで全工程一月(50日)かかる。

ここへ来てすぐ思い出しときゃ良かったよ…



ビールを作るのに、インフラ整備担当の作業員に手伝ってもらっていた。

出来上がったビールを試飲してもらうために、インフラ担当の作業員と漁師さん達を呼び集める。

樽ごと氷水で冷やしておいたキンキンに冷えたビールと一緒に、炙ったスルメを用意した。

昆布と一緒にイカも乾燥してもらっていたのだ。

ジョッキに冷えたビールを入れて、スルメと一緒に皆んなに配ったら、ビールの完成祝いに乾杯!

「んぐっ、んぐっ、ぷはぁ!
な、何て喉越し!
よく冷えたこの冷たさと炭酸の刺激、後味のコクと苦味が、全身にしみわたる!」

「そうか?
なんか苦くて、俺は飲みにくいんだけど…」

「何言ってんだよ!
カラッカラの喉に勢いよく流し込んでみろ!
最高の気分になるぜ!」

「私は、ビールよりこっちのイカの方がいいねぇ。
干し肉よりも硬くて最初は驚いたけど、噛めば噛むほど旨い味が出てくるよ。」

「バカだなあ、一番旨いのは、この干しイカを肴にビールを飲むんだよ!」

初めてのビールは、割と好き嫌いが分かれるねえ。

ま、大人になるにつれて、ビールの美味しさをわかっていくんだよ。

でも私はあと八年飲めない。 長い。

因みに、リッカはビールが苦くて飲めず、ずーっとスルメをもしゃもしゃ食べていた。
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