公爵令嬢はジャンクフードが食べたい

菜花村

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85 公爵令嬢は舞踏会を企画する

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先日、私の作った化粧品で夜会に出たお母様は、貴婦人方の間で噂になったそうな。

ただ、私が手作りした化粧品だからどこにも売っておらず、美を独占したいお母様も入手先を内緒にしていた為、誰も化粧品を入手出来ずにいた。

『どうせまたフランドール嬢が新しく開発したんでしょう!?』という声がどこからか上がり、化粧品の商品化の声が男爵領へ殺到。

デビュタントが終わっていた事もあって、お茶会や夜会の招待状の数も半端じゃない。

大方、化粧品を手に入れたい淑女の皆様と、それを商売にしたい紳士の皆様からなんでしょう。

情報収集も大事な仕事だと分かってるけども、これ全部出てたら領主業に支障が出るわ。

とりあえず、パーティに出るメリットのないものはをざっくりお断りして、出るものを吟味。

あ、ダンスパーティーは、行かなきゃ人生終わる程のよっぽどのものじゃない限り断固拒否。

てな感じで、ぼちぼちパーティーに参加しつつ、化粧品についてはあしらっていた。



「デビュタントも終わったのだし、そろそろフランが主催するパーティーがあってもいいと思うんだが。」

お兄様の結婚パーティーの為に公爵家に帰り、早々にお父様にそう言われた。

「その前に、お兄様の結婚パーティーが先でしょう?
それが終わってから考えるでもいいじゃないですか。」

「それはもう3日後じゃないか。
今からフランのパーティーを準備しておかないと。
何かこう、フランらしい奇抜なアイデアはないのか?」

「私らしいと思うものを、お父様が見繕えばいいじゃないですか。」

「違うんだよ、もっと斬新な、新しいパーティーがいいんだよ!
フランなら、考え付くだろう?」

なんだよこの大きな子供は。

そんな事言ったって、最近社交界デビューしたばかりの私が、パーティーの常識やら斬新さやら分かるわけないでしょうが。

俺の記憶でも、貴族のお付き合いなんて興味ない分野だったし、服装やら髪型やら化粧やらの文化や歴史程度しかわからない。

無茶ぶりにも程がある。

「レイジの結婚パーティーが終わるまでに考えておいてね。」

お父様ぁ!?



お兄様の結婚パーティーは無事終わった。終わってしまった。

そして、ここからが本当の戦い。

マリア様が我が家に来た。

一応、最低限の常識は持ち合わせてる人ではあるんだけど、いかんせんプライドが大気圏ぶっちぎってるから、やたらと上から目線なんだよなぁ。

あぁもう早速お母様とバチバチするなよ。

王家だとか爵位だとか年齢だとか絡むから、余計めんどくさくなるんだって。

一旦そういうの無しにして、皆んなが同じ立ち位置で物事を見る事が出来ないのかね。

……あ、閃いた。

今のタイミングで思いつくの絶対場違いなんだけど、パーティーの企画が閃いてしまった。

というより思い出した。

いい案が出来たから、お父様かお兄様どっちか早く帰ってきてー!



「なに、仮面舞踏会だと。」

「はい、参加者は仮面や被り物で変装をし、お互いが誰かわからない状態にしてしまって、階級や地位をこの舞踏会に限ってなくしてしまうんです。」

「仮面を被った状態でパーティーとは、フランはまた変わった事を思い付いたなぁ。」

その変わった事を要求したのはお父様でしょうが。

あと、この世界には仮面舞踏会がなかったのが新発見。

「誰か分からない状態と言っても、仕草や声、体格で相手が誰かは分かってしまうだろう?」

「はい、バレますね。」

「じゃ何のために仮面をつけるんだ?」

「仮面の本来の目的は『普段の顔を隠す事』。
『この仮面をつけている間は、無礼講で、今日の私のことは不問にしてくださいね』といった記号にするんです。
権力争いや社交界の汚い部分を全て無くし、しがらみのない状態でパーティーを楽しむのです。」

「ほぉ、ただ単に仮面を被るだけじゃないのか。」

「それに、仮装してパーティーに参加するだなんて、楽しそうだと思いませんか?」

「絶対楽しい! 即採用だ!」



早速招待客を厳選して招待状を送ったところ、返事は全員参加。

むしろ、どこから情報が漏れたのか「なぜ招待状がないの!?」と嘆く者すら勃発した。

次に、パーティー用のコスプレ衣装、いや、仮面とかつらの調達。

金属製のアイマスクに、私の髪の色と違うかつらを用意した。

料理食べたいし。

因みに、ドレスやその他諸々も調達済み。

お母様とマリア様もすごく楽しそうに準備してた。別々で。

いや、うん、分かるよ、楽しみなのは。

ただ、家族で一番ワクワクしてるのがお父様って!



パーティー当日、人が続々集まって来た。

各々で準備したマスクが、結構個性的で面白い。

フルマスクタイプの人が結構多かったけど、ご飯食べる時は外すのかな?

「皆様、お集まりいただき、ありがとうございます。
本日は仮面舞踏会。
普段の自分の顔を隠し、地位や身分をなくした上で、お互いに無礼講でパーティーをお楽しみください!」

私の挨拶でパーティーが始まる。

私の仮面は、桜をモチーフにした金属製のデザインマスク。

花あたる部分に、シャンパンガーネットを所々あしらっている。

もちろん、手作り。

髪の毛は真っ白のショートボブのかつら。

そしてここ重要。

15センチの厚底ヒールとパット入りドレス。

全力で仮装してます!

周りの反応はかなり良い。

特に、仮面と胸。

そりゃあ、どちらも素材にこだわってますから!

「俺とそんなに背が変わらなくてびっくりした。」

「もはや別人の域ですね。」

「フランちゃん先生、本気すぎて面白ーい。」

「フラン様、とてもお綺麗です!」

リリーちゃん、ありがとう。君だけが私の味方だよ。

4人も各々にお面をつけて来ていたけど、私ほどガチではなかった。

ちょっと恥ずかしくなってきたよ。

しばらく5人で話をして、ロナウド王子と一緒に挨拶まわりをした。


「パーティーは楽しんで頂けてますか?」

マリア様に話しかけた。

本音を言うと絡みたくないんだけど、こう言う場だからこそ出来る会話もあると思って、勇気を出した。

「ええ、とても。
こういった変なパーティー、参加させて頂いたの生まれて初めてですわ。」

『変な』は余計だ、まったくもう。

「フィアンマ家にいらしたのなら、この程度で驚かれても困りますわ。」

ちょっと言い返してみる。

「フィアンマ家というより、奇行の発端は全て貴女ですわよね?」

確かにそうだけど!

「レイジ様から全てお聞かせ頂いてますわ。
腐った魚で料理をお作りになったり、露出の多い衣装を来て海で遊ぶ蛮行を流行らせたり。」

魚醤と海水浴をネガティブ変換するとこうなるのか!

「あと、チョコレートをお作りになったり。」

ん?

「チョコレートは、もっと量産出来ないんですの?」

「原材料のほとんどを輸入に頼ってますし、制作に手間もかかっているので……」

「そう、せっかく誉めてさしあげようと思いましたのに、残念ですわ。」

ほ?

「本日の料理の中に、雲の飴はありませんの?」

「綿菓子の事でしょうか。
それでしたら、明日にでもお作り致しましょうか?」

「是非お願いしますわ。」

なんだか今日、いつもより穏やかだな?

「其方の殿方が、フランドールの婚約者?」

「ご挨拶が遅れて申し訳ございません。
アースフィールド王国第三王子、ロナウドと申します。」

「レイジ・フィアンマの妻、マリアですわ。
この場は無礼講とフランドールも仰ってましたわ、堅苦しいのは無しにしてくださいな、ロナウド殿下。」

マリア様ってこんな人だったっけ?

「フランドール、レイジ様に劣らない素晴らしい殿方に見染められて、良かったですわね。」

「「みそっ……」」

「まぁ、貴方なら問題ないとは思っていましたけど。
わたくしだって、貴女の事認めておりますのよ?」

と、扇子で口元を隠しながら仰ったマリア様。

……顔が隠せるこの場だから言ってくれたのかな。

「私も、お兄様を一途に想い続けるマリア様を尊敬しています。
ずっと、お兄様を支えてあげてください。」

「当たり前でしょ?
分かりきった事を言わないで頂けるかしら。」

プライドが強くて、口が悪くて、相手を見下して。

常識があって、人を認める事が出来て、素直になれない。

なんだか、昔のロナウド王子を見てるみたい。



「フランの義姉、なんか嫌なヤツだな。」

完全な同族嫌悪だよ、それ。
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