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私とあなたの誓い直し
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それから日々は流れていき、
私たちは静かにその夜を迎えた。
部屋に入ると、
彼は何も言わず私を抱き寄せた。
深く唇を重ねる。
互いの体温が急速に高まっていく。
ネグリジェに手をかけた、
彼の手は震えていた。
――いつも私を守るために使われてきた手。
今は私を欲するために動いている。
彼は一瞬、動きを止めた。
そしてまっすぐに私を見る。
「……綺麗すぎて触れたら壊してしまいそうだ」
低い呟き。
私は微笑んで、
彼の首に腕を回した。
「壊さないで大切にしてください。これからずっと」
その言葉で、
彼の理性が切れた。
夜が明けていく。
彼は私を抱きしめたまま、
荒い息を整えた。
額を寄せ、
汗ばんだ声で囁く。
「……無事か」
ここで来るのが彼らしい。
私はぼんやりと笑って、
頷いた。
「はい……ふふっ、私は幸せ者です」
「そうか」
「そうですよ」
これから先、
何が起こるかは分からないけれど――、
それはまるで、
明日からの未来を、
体で誓い直すようだった。
目が覚めたとき、
最初に感じたのは――疲労だった。
嫌なものではない。
むしろ、じんわりと体の奥に残る重たい幸福感。
「……」
隣を見る。
アッシュ様がいる。
昨夜とは違い、
今度はちゃんと横になっている。
そして――寝ている。
それだけで胸がいっぱいになった。
昨夜のことを思い出す。
最初は相変わらずだった。
確認。
確認。
確認。
「……本当に大丈夫か」
「……痛くないか」
「……今は危険ではないか」
その度に私は笑って、
「大丈夫です」
「平気です」
「危険なのはあなたです」
そう答えた。
そうしたら――
ようやく彼は覚悟を決めた。
それから先は、
言葉が追いつかなかった。
静かで、
必死で、
不器用で。
でも確かに、
一晩かけて私を大切にしてくれた。
「……」
私はそっと体を起こす。
シーツの中で、
彼の手がまだ私の腰にある。
無意識だ。
守る癖が、
抜けていない。
「……アッシュ様」
小さく呼ぶと、
彼はすぐに目を開けた。
即応だった。
「……起きている」
寝起きなのに、もう副団長。
「おはようございます」
「……おはよう」
声が低い。
「昨夜は……」
私が言いかけると、
彼は一瞬視線を逸らした。
耳が、赤い。
「……無事だったか」
無事。
私は思わず笑ってしまった。
「ええ。とても」
「……そうか」
少し、安心した顔。
「では……」
彼は一拍置いて言った。
「……結婚生活において、
危険は――今のところ、確認されていない」
正式報告みたいだった。
「今のところ、ですか?」
「……継続調査が必要だ」
私は彼の胸に額を預けた。
「では私の夫として、これからもよろしくお願いします」
一瞬の沈黙。
それから、
彼の腕がぎゅっと回された。
「……こちらこそ」
短いけれど、
確かな返事。
騎士で、
副団長で、
語彙が足りなくて、
過保護で。
でも。
この人は、
一晩でちゃんと――
私の夫になった。
朝日は穏やかで、
部屋は静かで、
私たちはもう一緒だ。
危険はもう――ない。
少なくとも、
この腕の中では私は幸せだ。
私たちは静かにその夜を迎えた。
部屋に入ると、
彼は何も言わず私を抱き寄せた。
深く唇を重ねる。
互いの体温が急速に高まっていく。
ネグリジェに手をかけた、
彼の手は震えていた。
――いつも私を守るために使われてきた手。
今は私を欲するために動いている。
彼は一瞬、動きを止めた。
そしてまっすぐに私を見る。
「……綺麗すぎて触れたら壊してしまいそうだ」
低い呟き。
私は微笑んで、
彼の首に腕を回した。
「壊さないで大切にしてください。これからずっと」
その言葉で、
彼の理性が切れた。
夜が明けていく。
彼は私を抱きしめたまま、
荒い息を整えた。
額を寄せ、
汗ばんだ声で囁く。
「……無事か」
ここで来るのが彼らしい。
私はぼんやりと笑って、
頷いた。
「はい……ふふっ、私は幸せ者です」
「そうか」
「そうですよ」
これから先、
何が起こるかは分からないけれど――、
それはまるで、
明日からの未来を、
体で誓い直すようだった。
目が覚めたとき、
最初に感じたのは――疲労だった。
嫌なものではない。
むしろ、じんわりと体の奥に残る重たい幸福感。
「……」
隣を見る。
アッシュ様がいる。
昨夜とは違い、
今度はちゃんと横になっている。
そして――寝ている。
それだけで胸がいっぱいになった。
昨夜のことを思い出す。
最初は相変わらずだった。
確認。
確認。
確認。
「……本当に大丈夫か」
「……痛くないか」
「……今は危険ではないか」
その度に私は笑って、
「大丈夫です」
「平気です」
「危険なのはあなたです」
そう答えた。
そうしたら――
ようやく彼は覚悟を決めた。
それから先は、
言葉が追いつかなかった。
静かで、
必死で、
不器用で。
でも確かに、
一晩かけて私を大切にしてくれた。
「……」
私はそっと体を起こす。
シーツの中で、
彼の手がまだ私の腰にある。
無意識だ。
守る癖が、
抜けていない。
「……アッシュ様」
小さく呼ぶと、
彼はすぐに目を開けた。
即応だった。
「……起きている」
寝起きなのに、もう副団長。
「おはようございます」
「……おはよう」
声が低い。
「昨夜は……」
私が言いかけると、
彼は一瞬視線を逸らした。
耳が、赤い。
「……無事だったか」
無事。
私は思わず笑ってしまった。
「ええ。とても」
「……そうか」
少し、安心した顔。
「では……」
彼は一拍置いて言った。
「……結婚生活において、
危険は――今のところ、確認されていない」
正式報告みたいだった。
「今のところ、ですか?」
「……継続調査が必要だ」
私は彼の胸に額を預けた。
「では私の夫として、これからもよろしくお願いします」
一瞬の沈黙。
それから、
彼の腕がぎゅっと回された。
「……こちらこそ」
短いけれど、
確かな返事。
騎士で、
副団長で、
語彙が足りなくて、
過保護で。
でも。
この人は、
一晩でちゃんと――
私の夫になった。
朝日は穏やかで、
部屋は静かで、
私たちはもう一緒だ。
危険はもう――ない。
少なくとも、
この腕の中では私は幸せだ。
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