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episode02:アダブランカ王国
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しおりを挟む「……それは」
「答えづらいのであれば、答えていただかなくて結構ですが……」
リーリエは、正直にミーナに今までの待遇の話をした。
幼い頃、母親が囚われている奴隷達を大量に解放したこと。
その件が王と第一王妃の逆鱗に触れたことによって、長い間幽閉され、ひどい暴力や罵詈雑言を受け続けてきたこと。
母が亡くなってから、その扱いはより一層ひどくなったこと。
結婚が決まっても、あのようなドレスしか着せてもらえなかったこと。
話を進める度に、ミーナの表情は悲しく歪んだ。
「なんてひどい……」
「王族じゃなかったら、とっくに奴隷になっているか、殺されている人生なのよ。私はこの結婚に感謝しているの。だから、少しでもこの国の役に立ちたいと思っていたのだけれど、反対派がいるのであればなかなか幸先が不安ね」
ミーナは肯定も否定もしなかった。
簡単に「大丈夫ですよ」と言うような人間でないことが分かり、信用できるとリーリエはミーナに対して感じた。
信用できそうだからこそ、自分の生い立ちを話してみようと思ったのだ。
きっとミーナだったら、王宮の中で勝手に言いふらしたりはしないだろう。
「私はてっきり……」
「てっきり?」
「身代わりの人間がボロ布を着せられて、アダブランカ王国に宣戦布告をしてきたのかと思っておりました」
「私でもそう思うわ。宣戦布告と取られていれば、私が殺されて自分たちの手間が省けると思ったのよ」
今更ながら、あの時クノリスが来てくれていてよかったとリーリエはホッとした。
あの場所にクノリスがいなかったら、命はなかったかもしれないのだ。
***
晩餐会は、大臣を含め数名で行われるとのことだった。
貴族たちを含めた、お披露目会は近いうちに開催されるとのことで、リーリエは上手くやれるか不安でいっぱいになった。
今夜の晩餐会には、どのくらい反対派の人間がいるのだろうか。
この城に着いてから、たくさんの新しい悩みが、リーリエの中に生まれている。
「うーん。なんか慣れないわ」
胸元に光る大粒の宝石がついたネックレスを指でいじりながら、リーリエは苦笑いを浮かべた。
湯あみを終えて全身ピカピカになった後、部屋がもう一つ出来そうなほど大きなクローゼットの中にあった大量の贈り物の中から、ミーナが全身コーディネートしてくれたのだ。
「お似合いですよ」
「ありがとう……」
コルセットを締められて、ふんわり広がった薄紫色のドレスの裾が歩くたびに揺れる。
晩餐会の会場に到着すると、リーリエの到着を待っていたアンドレアが、驚いたような表情でミーナによって磨かれた姫君を見ていた。
「お……王がお待ちです」
荘厳な扉が開くと、中には豪華な装飾がされた長いテーブルが設置されていた。
白いクロスの上には、豚の丸焼きやパン、果物などが所狭しと、置かれている。
隙間に設置されたキャンドルが、ゆらゆらと揺れていた。
「リーリエ姫。こちらへ」
クノリスがリーリエの姿を見つけると、自分の隣へ来るように、隣の椅子を差し示した。
大臣達は、リーリエを値踏みするように見ている。
グランドール王国の姫君はどのような程度のものか、今すぐにでも知りたいようだ。
グランドール王国では、違った視線を受けることが多かったが、値踏みされるようなことはなかった。
アダブランカ王国で、上手くやっていきたいリーリエにとって大臣達の視線には冷や汗を内心かいていた。
「では食事をはじめようか」
リーリエが席につくと、クノリスは赤ワインの入ったグラスを上に掲げて挨拶をした。
食事がスタートすると同時に、クノリスに大臣を紹介されて、リーリエは挨拶をする。
「グランドール王国より参りました。リーリエと申します。以後お見知りおきを」
全員が愛想よくリーリエに挨拶をしてくれたが、快く思っていない人間が何人かいることは一目瞭然だった。
中にはあけすけに「グランドール王国では、このような豪華な食事を食べられていたのかな?」と言って来る者もいた。
「確かに、こちらの晩餐は素敵ですね」とリーリエが笑みを浮かべて返すと、嫌味を言ってきた大臣は面白くなさそうな表情を浮かべていた。
クノリスは、反対派の大臣の視線など全く気にしていない様子で、目の前にある食事を楽しそうに食べている。
リーリエも続いて食べているが、長い間ろくな食事をとってこなかったので、既に満腹に近い状態だった。
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