英国紳士の熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです

Episode00:kiss

Prologue

　なぜ、私はこの目の前の男とキスをしているのだろう。
　
　激しく情熱的にキスをする目の前の男、ジャン・ブラウン。
　
　普段は決して、貪るように女を抱きしめキスをするような男ではない。

　甘く香るコロンに飲み込まれて、溺れてしまいそうだ。
　
　真夏の夜は蒸し暑い。
　
　頬が熱いのは、気温のせいだけではなさそうだ。

　唇が離れて、荒く息をする。

「もうギブアップですか？」

　流暢な日本語で意地悪く笑う英国紳士とキスをする理由は、数日前に遡ることになる。