天才美少女に造られた万能魔導兵器になった俺!

こどもじ

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閑話:とろとろ牛乳プリン

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「うう、不安だよぅ……失敗して、捕まっちゃったりしたらどうしよう……」

普段からも薄暗い自室の中で、レラちゃんは落ち着かなさそうにうろうろとしながら不安げにそう呟く。

あの後、例のダルトンとか言うドワーフの言ったとおり、秘書官を名乗るモノクルのえらく賢そうなお姉さんが訪ねて来て、その後みっちりと謁見での礼儀作法を叩き込んでくれた。

あんな美人なお姉さんがあの暑苦しいおっさんの秘書をしてるとか、まさしく美女と野獣だ。良い人だと思ってたのになんだかだんだん腹が立ってきたぞ!

王様との謁見も平然とセッティング出来るとか言ってるし、あのドワーフのおっさん実はかなり偉い人なのかも知れない。

護衛総長とか言ってたか。この国の将軍的な役職なのかも知れないな。

ちなみに、礼儀作法のお勉強だが、レラちゃんはとんでもなく優秀だった。

王宮の二〇項目以上もある細かい謁見の作法を、わずか一回通りで説明して実演して見せただけで、完璧にやりこなしてみせたのだ。

秘書官のお姉さんもこんなに教え甲斐のない生徒は初めてだと、苦笑交じりに絶賛していたほどだ。

やはりこの子は天才なのだろう。記憶力が並の人間のそれじゃない。

ちなみに俺も一応と言うことで勉強させられたが、これも一発で覚えられた。

何せ俺はロボだからね。覚えようと思ってじっとお姉さんの動きを見ていたら、勝手にモーションキャプチャーという謎機能が発動して、動作全てをデータ化して記録してしまった。

あとはデータを俺が任意のタイミングで再生するだけで、それを再現するように手足が勝手に動いてくれる。

ロボ、チート過ぎる。これさえあればカンニングだって、ダンスの振り付けだって楽勝だろう。

やったことないが、この機能があれば、恐らくはあの難しいマイケルジャクソンの振り付けだって一度見ただけで完璧に再現出来るはずだ。

お姉さんはもはや驚きを通り越して呆れていた。そして、ちょっと自信を失ってて可哀想だった。

既に二人ともお作法は完璧だ。

なら何故、レラちゃんはこんなにも不安そうにうろうろしているのかというと、この娘がノミの心臓であがり症と言うことに他ならない。

元々臆病で気が小さいというのもあるが、それに加えてまたしても大勢の前で、しかも今回はこの国の重鎮たちが見守る中で喋らなければならないと言う事実が、レラちゃんの精神に強いストレスを与えているのだろう。

まあでもこれは無理もない。

まだこんな小さな子が、国の偉い人たちの前で何があったのか説明しなさいとか、前世の日本で例えるなら、小学生が国会で参考人招致されるようなもんだろう。

レラちゃんは賢くても精神はまだまだ子供なのだ。そりゃあガチガチにもなるはずだ。

いっそなにも状況が分からないお馬鹿なお子様ならよかったが、レラちゃんは下手に聡い分より一層緊張してしまうという悪循環に陥ってしまっているのだ。

なんとかして元気づけてあげたい。俺になにか出来ることがあるのだろうか。

と、俺がうろうろするレラちゃんを見守りながら、心の中で頭を悩ませていると――

『――承認しました。主人の精神状態安定の為、安全セーフティから創造クリエイトモードへと状態を移行します』

「な、何っ!? 急にどうしたのっ!?」

急に俺の口が動き出し、体に纏っていた光が普段の緑色から青色へと変化した。

レラちゃんはびっくりして、その細長い耳をビクンと逆立てさせている。

ええ!?

なんなんだよこの体は一体! 前にもあったがたまに急に動き出すよな!?

……ひょっとして俺か? 俺が、レラちゃんのことを何か元気づけてあげたいって思ったから、勝手にそれに応じた機能が動いたのか?

そう問い掛けるも答えはなく、代わりに視界を埋め尽くす、新たな項目がずらりと表示された。

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創造クリエイトメニュー

大分類

・工作

・調理

・芸能・芸術

・建築

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……こらまたざっくりとした項目だな。

いや、これどれか選んだら、その下にツリーが展開されるのか。

もし、こいつがこれで「レラちゃんを元気づけろ」という意図で勝手に開いたとしたらだ。

選ぶのはまあ、調理か芸能が穏当だろう。

「ううん……なんで急に動き出したんだろう。コアの部分に未解析領域ブラックボックスが多すぎて、僕だけじゃよく分からないよ……。こんな時父さんが生きてたら……」

そう言ってレラちゃんは、更に落ち込んでくすんと涙ぐむ。

おい、事態が悪化してるじゃないかっ!

ええい、くそっ。じゃあ調理だ! 美味しいもの食べて喜ばない奴はいない!

何か良さそうなもの出てくれよ!

俺はそう願いながら、調理の項目を選ぶ。

そこには、前菜・副菜・メインディッシュ・デザートなどの様々な項目が並び、その中で俺は、迷わずデザートの項目を選んだ。

女の子が喜ぶのは甘い物だ! これは間違いない!

しかし、材料はあるのだろうか……。

そう俺の脳裏に不安がよぎった瞬間、目のレンズが勝手にカシャンと入れ替わり、部屋の中をぐるぐると見回してサーチし始めた。

……てかこれってX線か? 戸棚とかの中身が全部透けて見えてるんだが……。

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使用可能食材

・牛乳 1L(200ml×5)

・卵 5個

・野菜 キャベツ ラディッシュ

・果物 いちご ラズベリー

・肉類 なし

・砂糖 約50g

・塩 約150g

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ポヒュ、という間抜けな音と共に、部屋の中の食材のみをサーチした結果が表示される。

そして、その後ろから、再び新たなポップアップが表示された。

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創作推奨デザート

・とろとろ牛乳プリン(季節の果物を添えて)

栄養価:162kcal/100g

予測調理時間:3分38秒

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マジ? 三分って……プリンってそんなに簡単にできるもんなの?

その俺の疑問に誰も答えることなく、視界の右端下から吹き出しのポップアップがポヒュっと飛び出した。

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これより、約十秒後に調理を開始します。画面にガイドラインが表示されますので、それに従って調理を行って下さい

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待て待て! いきなりそんなこと言われても出来ねえよ!

俺は、その見えない相手を心の声で慌てて制止したあと、ひとまず落ち着こうと深呼吸をする。

とりあえず、目的を確認しよう。これは、明日に王様との謁見を控えて、そわそわして不安で泣きそうになっているレラちゃんに、元気になって貰うためのものだ。ここまではOK。

そして、その為に美味しいものを食べて喜んで貰おうと重い、それで選んだ料理が牛乳プリン。これも良いだろう。テンプレとして女の子は甘い物が大好きだからだ。

ただ、それが本当に作れるのかという謎が残る。

ガイドラインが表示されるとは言うが、それは一体どれぐらい詳細に作り方を解説してくれるのか分からない。

本当に自慢じゃないんだが俺は前世ではカップ焼きそば以外の料理なんてほとんど作ったことがない。

失敗するととんでもないダークマターが完成する可能性すらあるぞ。それは大丈夫なのだろうか?

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疑問に対する解答:問題ありません。創造クリエイトモードのガイドラインは、対象の効率的な創り方を逐一指導すると同時に、誤った行動を取る前に自動的に動作を修正するオートナビゲーションが働きます。本機の仕様上、ガイドラインに反して行動することは不可能です。

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つまり、動きは勝手に修正するから、わざと失敗しようとしても出来ないようになってるって訳か。

何事も絶対はないだろうがそれなら安心だ。

そんなことをしている間にレラちゃんは、先ほどからぐるぐると部屋の中を見回したり、謎の行動を繰り返す俺を前にして半泣き状態で怖がっている。

これはまずい……!

事態は一刻を争う。失敗は許されない。

ここでゴチャゴチャと考え込む時間があるなら、早く美味しいものでレラちゃんを笑顔にさせてあげるんだ!

よし、やるぞ!

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これより調理を開始します。表示されるガイドラインに従って行動して下さい

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了解!

そう脳内で答えた瞬間、俺の視界に最初の行動を指定したポップアップが表示される。

まず第一に、戸棚に置いてある牛乳を確保せよとのこと。

レラちゃんはミルクが大好きだ。常にガラス瓶五本ほどは戸棚の中に常備しており、朝起きたら必ず一瓶開けることを、俺はここでの短い生活の中でも既に理解していた。

そして俺はその牛乳瓶を二本取り、底を外側に向けて両腕でひたすらぶん回す!!

これは、遠心力を駆けて乳脂肪と水分を分離させているのである。いわば遠心分離機だ。

こちらの世界の牛乳はどうにも少し成分が薄いらしく、こうでもしなければ到底お菓子の原料にはならないらしい。

「あっ、や、やだっ! やめてよぅっ! そんなことしたら飲めなくなっちゃう!」

後ろでレラちゃんがあわあわしながら泣きそうな声を上げている。

ぐっ、我慢だっ!

俺の計算によると、これが出来れば絶対にレラちゃんは喜んでくれる!

その為に、この場は心を鬼にしてひたすら牛乳を回す!

しばらくしたら、俺の尋常じゃないスイング力によって、乳成分と透明な水分が瓶の中で綺麗に分離される。

俺はそれを機械特有の完璧な精密動作により、スプーンで生クリームと乳成分だけを掬い上げ、ちょうど良さそうなサイズの小さな陶器に移し替える。

そして卵一つ、砂糖15gを同じ器に投下して、スプーンで混ぜる。 その際、気泡が入らぬよう注意する必要があるという。

ここまでの使用時間52秒。

なかなかのタイムだ。これは、予測調理時間を下回ることになるか?

後ろでレラちゃんが半べそをかいてるが気にしない! 後できっと喜んでくれるから大丈夫だ!

そして火を通す。

俺には蒸し器など必要ない。

使うのは、俺の両目から出すことの出来る電磁波である。

破壊デストロイモードの中の兵装ランクDの中にあった、"電磁波照射"の応用だ。

俺は、電波の周波数を自由に変えることで、ただの電波から人体に極めて有害なガンマ線に至るまでありとあらゆる電磁波を出すことが出来るらしい。

先ほど部屋の中をX線でスキャンしたのもこれの応用だ。

今回使うのは、電子レンジで使われているのでおなじみの"マイクロ波"だ。

マイクロ波は、物体中の水分子を振動させ、その摩擦で内部から熱を発生させることが出来る。

電磁波照射は、本来は相手を睨み付けるだけで内側から崩壊させる恐るべき攻撃兵器だが、出力を極小に抑えることで電子レンジ代わりにも活用出来るのだとか。

ガイドラインさんがそう言ってるんだから間違いない。

なので俺は、器の中に入っているプリンの素をひたすら睨む。 目から軽くレーザーポインターを出しつつ、瓶をくるくるまわしながらまんべんなく全体を睨みつけた。

この辺りからレラちゃんは、泣くのをやめて興味深そうに俺の作業を眺めていた。

徐々にプリンの素が固まり、ほんのり暖かくなってきたところで電磁波を停止させる。

次に、俺の両腕に通っている兵装冷却用の冷媒配管に器を近づけて、プリンを器ごと急速冷却し始める。

ちなみにこの配管の温度は-273.15℃という凄まじい冷たさで、普段はまるで頸動脈のように手の外装の内側に隠れている。今回はガイドラインさんが勝手に手の外装を取り外して出してくれた形だ。

温かいまま食べても美味しいだろうが、やっぱりプリンは冷やしてこそだ。

全体の温度がひんやりとしてきたあたりで皿に盛り付ける。

平皿の上に器を被せて、中のプリンをぷるんと落とす。

その横に、水で洗った甘酸っぱいカットフルーツを見栄え良く添えて、完成!

タイムは――3分38秒!

くそっ、機械の限界を超えることは出来なかったか……。

しかしすごいな。こんなことまで正確に予測出来るのか。恐るべし超古代文明。

「あ、あの……」

俺が一人立ちすくんだまま感心していると、後ろで若干怯えた様子でレラちゃんが話しかけてくる。

しまった、自分の世界に入りすぎて思わず当初の目的を忘れてしまった……!

幸いながら、今はレラちゃんは不安より先に興味が勝って泣き止んでいるようだ。

ならば渡すのは今しかない!

俺はそう決意し、ひざまずいてレラちゃんにプリンの乗った平皿を差し出す。無論、食べやすいように横にスプーンを添えてである。

「え? これを、わたしに?」

『…………』

その問い掛けに、俺は無言でコクリと頷く。

レラちゃんはそれを受け取ったあと、プリンにスプーンを差し込んで、そのひと欠片を恐る恐る口へと運ぶ。

その瞬間――

「――――っ!?」

レラちゃんは口元を抑えながら、驚きの表情で俺の顔とプリンの乗った平皿を交互に見返した。

ちなみに、プリンは半生でとろとろの状態である。表面はぷるんと綺麗に固まっているが、ひとたびスプーンを入れて中を割ってみると、奥から半熟とろとろのプリンの素が流れ出て、横に添えてあるラズベリーやいちごの果実に絡みつく。

まるで銀座の高級洋菓子店のような出来映えだ。あんまり甘い物が好きじゃない俺ですら美味そうに見える。戦闘ロボットやめてパティシエに転職しようかな。

マイクロ波で全体に一度火は通してあるので雑菌など衛生的にも問題は無い。俺の料理に死角はないのだ。

「おいっしいっ! 何これっ!? 甘くてとろとろでふわふわで……こんなの食べたことないよっ!? なんてお菓子なの、これっ?」

『牛乳プリン、と名称されています。そばに添えてある果物も一緒に絡めて食べるとより美味しく召し上がれます』

そうロボ語で返す俺に、レラちゃんは「へえ!」と感心しながら、横のラズベリーを掬い上げて、プリンと一緒に口に運ぶ。

その瞬間、目を瞑ったまま体を仰け反らせ、レラちゃんは幸せの世界へ飛び立った。

よしよし、どうやらとてもよろこんで貰えたようだ。

元々牛乳が大好きなレラちゃんだからこそ、このプリンはとても気に入ってくれることだろう。

しかし、俺を造ったはずのレラちゃんが、俺の中に存在していた料理のレシピを知らないというのもおかしな話しだ。

まあ、レラちゃんは自分で「設計図通り組み立てただけ」って言ってたし、未解析領域ブラックボックスが多いという中身のデータまでは把握仕切れていないのだろう。

だとするのなら、俺の兵装の中に核兵器なんぞが積まれていたのも納得出来る。こんな天使がそんな恐ろしいものを嬉々として作るはずがない。

だとすると俺の頭の中身はすべて、超古代文明人の持つ知識の集大成ということだ。恐るべし超時空ニホン人……!

「……あ、もうなくなっちゃった」

レラちゃんは、そう切なそうな声を上げながら、綺麗に空になった皿を眺めてスプーンをくわえる。

ごめんね? おかわりあげたいけど、これ以上は多分カロリーオーバーになるから。ロボとしてご主人様の健康を損なう訳にはいかないからね。

俺のその気持ちが伝わったのか、レラちゃんはふう、とお腹を押さえて満足げに溜息を吐くと、空になった食器を置いてきらきらとした目をこちらに向けた。

「すごいねっ、トリムルティ! 橋や建物を造れるのは資料で知ってたけど、こんな美味しいお菓子まで造れちゃうなんて。でも、突然どうしてこんなことを……?」

そう困惑しながら聞いてくるレラちゃんに、俺は無言のまま顔をじっと見上げた。

「……ひょっとして、僕を元気づけるため?」

そうはっとした顔で聞き返すレラちゃんに、俺はこくりと小さく頷く。

それを見たレラちゃんは、にへら、と嬉しそう頬を緩ませ、そのまま俺の首に飛びついてきた。

「ありがとうっ! ……えへへ、いい子だね、トリムルティは……よしよし」

そう言って頬をすりよせながら頭をなでなでしてくるレラちゃんに、俺は心の中で得も言われぬ感情にとらわれながら嬉し恥ずかしさにのたうち回った。

本来ならば、子供に子供扱いされるのは屈辱以外のなにものでもないはずなのに、一体なんだこの高揚感はっ!

これがバブみの力というのか!?

体がロボットになったから、精神までそれに引きずられているのだろうか?

いくら可愛い子に褒められて嬉しいとはいえ、前世ではここまでの高揚感を感じることなど無かったはずだ。

だが、今はどちらでもいい。今ここに在るのは、現代社会に疲れた男たちが望んで止まない心のオアシスだ!

今はただ、この癒やしの中で身を委ねていたい……!

その後も俺は、レラちゃんのご褒美なでなでを全身で存分に楽しんだ。

俺の元気づける作戦もかなり上手くいったようで、レラちゃんはその日、とてもリラックスした状態で明日に備えてぐっすりと睡眠を取ることが出来たのであった。
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