欲にまみれた楽しい冒険者生活

小狸日

文字の大きさ
264 / 581

264龍神

しおりを挟む
ドレイク船長が龍神に祈ると言うので拓は神殿に行くと思っていたが、やって来たのは港を見下ろせる丘。
そこには巨大な黒い球体が設置されていた。

球体に向かってドレイク船長以下、船乗り全員が目を閉じ航海の無事を祈った後は、コップに酒を注ぎ一気に飲んだ。
拓達も同じ様に酒を飲んだのだが

「ゲホゲホ・・・」

アルコール度数が高過ぎて拓は思いっきりむせてしまい、全員から笑われていた。
これで祈りの儀式は終わりとなり、拓はドレイク船長から黒い球体についての伝説を聞いた。

その昔、この海には龍神が住み着き、船を出せば沈んでしまうほど荒れていた。
人々が祈ると神の使いが現れ、龍神を鎮めるために龍の玉と呼ばれる漆黒の玉を与えらた。
龍の玉を龍神に捧げると、龍神は大人しくなり海に平和が訪れた。

「この球体は、龍の玉をイメージされて作られた物と言われている。
 この町の船乗りは、龍の玉に航海の安全を祈る様になったんだ。」

面白いのは、他の港でも同じ様な龍神の伝説があり、名前は違うが球体を使って鎮める所まで同じらしい。

「船乗りは港を回るからな、それで伝説が広まったんじゃないか。」

確かにドレイク船長の言う通りなのかもしれない。
以前、ラムーの遺跡でも龍は力の象徴として使われていたので、この世界では一般的な話しみたいだ
そうであるなら、伝説は定着し易かっただろう。
拓は自分の考えをまとめると、丘の上からの景色を眺めていた。


ドレイク船長の船が出向を見送りビーチで皆で寛いでいると、海賊に襲われた船が何とか港へ逃げてきたとの話が聞こえてきた。
エチゴが直ぐに商人の繋がりで情報を入手してくると、かなり港に近い所に現れている。

「この辺は、小島が多いですからね。何処かの島に隠れていたのでしょう。」
「ドレイク船長の船は大丈夫でしょうか?」
「何とも言えません。朝早くに出向したので、もう通信は届かないでしょうし。」

襲撃に失敗した海賊船が、新しい獲物を見つけたとしたら・・・

「エチゴさん、ドレイク船長の航路は分かりますか?」
「航路予定は提出されていると思いますが・・・分かりました商人の伝手を使ってみます。」

エチゴは何も聞かず、直ぐに拓の為に情報を仕入れてくれた。
残念なことに、船が海賊に襲われた近くの海を通ることになっていた。

「気を付けろよ。」「無茶をするんじゃねぇぞ。」

ガラとレオに見送られ、拓はダイフクを頭に乗せて姿を消すと海の方へと飛んだ。
拓が全力で飛んでいると、船が2艘ジグザグに走っているのが探索魔法に引っ掛かる。

「奴等の方が足が速い。直線航路を取るな、島を回って港に戻るぞ。」

ドレイク船長が声を上げ、海賊船を近づかせない様に船を操っていた。

手加減無用。
拓は空から好き放題に火の玉を打ちまくった。
いきなり空から大量の火の玉が打ち込まれた海賊船は、ドレイク船長の船を追う余裕は無くなった。

「龍神だ。龍神が襲ってきた。」

燃えている荷物の沈下に動き回る海賊たちの前に突然現れた巨大な龍。
海賊船は収集の付かない騒ぎになった所に、大量の水の玉が放たれ海賊が海へと落ちていく。

拓は混乱に乗じ姿を消したまま船内に入り込むと、金目の物をアイテムボックスに収納しつつ火の玉を打ち込んでいた。
龍神の姿を見て戸惑っていた海賊達も、至る所から火の手が上がるのを見て次々と海へと飛び込んだ。
拓は可能な限り金目の物を収納し、最後に船の動力部となる巨大な魔道具を何とか外して収納すると脱出し空から燃える船が沈むのを眺めていた。

ドレイク船長も少し離れた所に船を止め、海賊船が沈んでいく様子を見ていた。

「本当に龍神が居たって言うのかよ。」
「本当に居たんだよ。龍神様が助けてくれたんだ。」

中には祈り出す船乗りまで出てきた。


問題ない事を確認し、拓は皆の元に戻って来た。

「拓、大丈夫か?」
「俺は大丈夫。ドレイク船長の船も問題ない。もう少しすれば捕まえた海賊を連れて港に戻って来る。」

ガラに答える拓の話しを聞いて、誰も拓が何をしたのかを聞かず、ただ全員が無事だった事を喜んでくれた。
問題は、回収してきた海賊船の中にあった金目の物。
金は良いとして、問題は品物の方だった。
普通であれば、海賊を退治した者の持ち物になり、元の持ち主は買い取ることになる。
ただ、今回の場合は拓が退治したことを名乗らない限り、通常の方法は使えない。
それどころか、拓が持っている事が知られると、窃盗罪に問われる可能性が有る。
そして、持ち帰って来た動力源となる魔道具だが、欲しいのは魔力を蓄積する部位を魔道具を制御する部位
独立した物を組み合わせているみたいで、簡単に分解する事が出来た。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

気絶したと思ったら闇落ち神様にお持ち帰りされていた

ミクリ21 (新)
BL
闇落ち神様に攫われた主人公の話。

ある国の皇太子と侯爵家令息の秘め事

虎ノ威きよひ
BL
皇太子×侯爵家令息。 幼い頃、仲良く遊び友情を確かめ合った二人。 成長して貴族の子女が通う学園で再会し、体の関係を持つようになった。 そんな二人のある日の秘め事。 前後編、4000字ほどで完結。 Rシーンは後編。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

溺愛極道と逃げたがりのウサギ

イワキヒロチカ
BL
完全会員制クラブでキャストとして働く湊には、忘れられない人がいた。 想い合いながら、…想っているからこそ逃げ出すしかなかった初恋の相手が。 悲しい別れから五年経ち、少しずつ悲しみも癒えてきていたある日、オーナーが客人としてクラブに連れてきた男はまさかの初恋の相手、松平竜次郎その人で……。 ※本編完結済。アフター&サイドストーリー更新中。 二人のその後の話は【極道とウサギの甘いその後+ナンバリング】、サイドストーリー的なものは【タイトル(メインになるキャラ)】で表記しています。

処理中です...