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まずは名を名乗れ
第30話
しおりを挟む男は結局夏木先輩の家までついてきた。
さすがに門をくぐりはしなかったが、玄関を開けて中に入るまで、じっと私のことを見ていた。
怖いんだけど…?
一応確認はしたんだ。
家族の人ですか?
って。
でも違うって。
「友達」だったって言ってた。
友達だったら友達だったで怖い。
もしやとは思ったんだ。
もしかして、「恋人」だったりする…?と。
直接聞きはしなかったが、キスを要求してきたくらいだから。
でも違うぽかった。
だから怖いと思った。
男の口から出てきたワードは
「幼なじみ」
「学校の友達」
「10年以上の付き合い」
などなど
途中なるほどなって思うこともあったよ?
キスはともかく、なんで泣いてんのかとか、なんでそんなに喜んでるのかって、思い返してみたときに。
ってか門限ギリギリじゃん!
あっぶな!
夏木先輩はもう帰ってきてた。
厚底のスポーツサンダルの片っぽが、ひっくり返ったままになってた。
脱いだらちゃんと揃えればいいのに…
これから数学の宿題かぁ…
やなんだよなぁ
死んでまで勉強しなきゃいけないなんて
知識も身につけていくこともトレーニングの一環だから、と説明されたが、いかんせんやる気がない。
夜中はイメージトレーニングということで、ひたすら映像を見さされる。
昨日は山に行って森の囁きを聴きに行った。
坐禅を組んでコオロギの鳴き声に耳を澄ませたときは、一体何をさせられてるんだろうと思ってしまった。
突っ込んでもしょうがないから黙って言うことを聞いてる。
ただ、夜中にカラオケに行くことに疑問を感じるのは、果たして私だけだろうか?
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