32 / 210
今日からお前は私の従者だ
第31話
しおりを挟む「で、コイツを連れて帰ってきたと」
「はい、すいません」
悶々と先輩に怒られている。
原因は、そう、アイツ。
思いきって話してみたんだよね。
さっきのことを。
「人間だった頃の記憶がないんじゃなかったの?」
「ないですよ!」
「じゃ、なんでアイツはついてきたんだよ」
不思議だったのは、いつの間にか私の体が、「望月町子」に戻っていたことだ。
…いや、そこは重要じゃない。
先輩が言うには、下界で私が望月町子の姿になっているのは、一種の幻覚に近い状態。
天使間の間では「私」は勅使河原サユリであり、望月町子に見えているかどうかが重要ではない。
天使が下界にいる間は、魔法省が作った『レプリカ』という偽造人間の器を利用して、人間の社会へと潜入する。
レプリカたちは天使の魂が入るまでは普通に生活していて、それぞれが各々の住民となりながら、何気ない人生を送っている。
私が「望月町子」というレプリカに入り、人間社会に問題なく溶けこむことができるのはそのためだ。
レプリカたちはいわば人造人間みたいなもので、魔法によってその肉体が作り上げられている。
「望月町子」という人間は元々どこにも存在していない。
家族も住民票も、魔法省が一から作成して、存在そのものを“偽証”してる。
人間からしてみれば、レプリカと人間の区別はつかないだろう。
ちなみに夏木先輩は「門田葉子」というレプリカのデータを使っている。
…ただ、通常の生活ではレプリカをアップロードすることはなく、自分の姿で活動しているそうだ。
理由は、“めんどくさい”から。
問題なのは、なんでレプリカの中に入ってる私が、「勅使河原サユリ」の見た目に戻ったのかということだ。
原理上はあり得ない。
というか、もちろん天使に昇格すれば、レプリカの見た目そのものを自由に書き換えることは可能だが、今の私は魔法の使用が封じられている。
それなのに見た目が変化することなどあり得ない。
だから夏木先輩は私の言葉を信じてくれなかった。
可能性がゼロじゃないにしても、信憑性に欠けると。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる