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バトルフェスティバル 地区予選編①
第60話
しおりを挟む「リオンは今試合中」
「場所は?」
「座標3163」
「よし、行くか」
へ?
“行く”って?
夏木先輩は私の右手を掴み、チャットポッドを手のひらの上に展開させた。
相変わらず便利すぎる。
ホログラムの画面情報だけがポンっと3d形式で飛び出てきて、まるでそこに実物があるかのように、どの角度からでも自由自在に見られる。
人間界にもいずれこの技術が投影されるんだろうか?
ほえーと感心してると、座標情報の“インストール完了”のメッセージが。
「行くぞ」と再度言う先輩。
掴まれた右手から何かが流れてくる。
なになになになに
痛みは全くない。
ただ、ビリビリするというか、血管の中を電気が通っていく感覚が、あっという間に全身に広がった。
広がるや否や、体が宙に浮く。
怖かったら目を閉じててもいいぞ?と、優しい口調で言われた。
どういうこと!?
疑問に思うのも束の間だった。
空気が振動する気配を感じたのは。
ドンッ
地面の抉れる音。
バチィンッという稲妻の咆哮。
視界が急旋回したように、唐突な変化と振動に見舞われる。
さっきまでいた会場は遥か後方まで遠ざかっていた。
高速で飛翔する先輩の体の、——後ろで。
「ひゃはッ」
「えええええええええええ」
地面を蹴る。
翔ぶ。
一歩一歩は、“走行”しているとは言えないほど大きく、広かった。
先輩が地面に足をつけるたびに土が舞い上がった。
そこに「足跡」は無い。
あるのは、先輩の跳躍によって深く掘り出された“地面”だけで、足跡と呼ぶにはあまりに荒々しい「痕跡」だった。
地雷が地面の中で弾けたように土が飛散し、粉々になる。
会場はすでに見えなくなっていた。
数秒が経つ頃には。
先輩の体には電流のような青い光が不規則に入り乱れ、触ると感電しそうなほど、立体的な脈動が表層化していた。
まるで「雷」が、人の体の周りを飛び交ってるみたいだった。
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