COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

じゃがマヨ

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霊術院出のエリート

第194話

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 「私たちも動こう」


 夜月は真琴たちと連携を取るための配置と行動手順の確認を行った。

 通常の任務では、偵察部隊と地上部隊が同じフィールド内で行動することはほとんどない。

 大規模な戦闘時であったり、市街戦や地上戦での任務時には連携を取ることも珍しくはないが、少なくとも彼女たちにとっては、実戦で共に行動することは今回が約1年ぶりの出来事だった。

 管制塔内で定期的に行われる『模擬戦闘』以来だった。

 一緒に“組む”のは。


 元より、偵察部隊には「偵察」という専任の管轄がある。

 今回は他県への応援要請も兼ね、防衛庁直轄の【近畿中部防衛局】は臨時で各所の対応を行っていた。

 急遽夜月や真琴がチームを組んだのもそのためだ。

 それほどの【危険性】が、今回の任務にはあった。


 「ったく、東堂のヤツめ」

 「さかもっちゃんカリカリしすぎ~」

 「そうは言ってもだな…。アイツには“ルール”ってもんがないのか?」

 「まあまあ。結果クリーチャーは撃破したわけだし、いいんじゃない?」

 「そういう問題じゃないと思うぞ?何かあったら、責任はお前にも降りかかってくるんだぞ?」

 「あれ?私の心配してくれてるの?」

 「そういうわけじゃ…」

 「照れちゃって~」


 名古屋ジェッツ、ひいては東堂キョウカの評判はあまり良くない。

 しかしその「実力」は、誰もが認めるところでもあった。

 チームを率いる統率力に、生まれ持った魔力総量の“高さ”。

 遠距離から近距離までの多彩な戦闘スタイルは、「個」の部分に於いても際立った側面を持っている。

 将来の“クラス5入り”(五位以上の天使たちのこと)は手堅いと言われているほどの逸材だった。

 それは坂本もわかっていた。

 とはいえ、統率の乱れは事故につながる可能性もある。

 坂本が懸念している部分は戦闘時の緊急性、及びイレギュラーな事象に際する対応について、綿密な打ち合わせを行う必要性があるのではないか?という点だった。

 今回の案件が急遽決まったものであるとは言え、すでに緊急時の行動マニュアルは配布されている。

 手順に沿った行動を行うことこそが、もっとも危険から遠ざけられる方法であると同時に、効率よく目的を達成できる道筋になると感じていた。

 そうは言っても、協力できる状況ではないことは明白だった。

 その部分に苛立ちを隠せなかったのだろう。

 渋々、夜月の“提案”に賛同した。

 2チーム編成での各人員の配置と、待機位置。

 チャットポッドで城内の地図と3dマップを出力し、該当する箇所にマーカーをつけた。

 チャットポッド内のネットワークを確立するシステム、『ゲルダ』。

 チャットポッドはあくまで「媒体」に過ぎず、あらゆるネットワークトポロジー(接続形態)を確立できる電子媒体に過ぎない。

 文部科学省の開発エリアにある「システム技術開発局」が開発した『ゲルダ』というシステムは、クラウドネットワーク形式であらゆる「通信」を可能にできる電子ポケットを導入していた。

 この独自のシステムを用いれば、自由自在に天使間と情報を共有することが可能だ。

 世界の情報は管制塔のデータベース(ワールドサーバー)に様々な形式で保存されているし、またそれらを拡張しながら、意のままに電子媒体上のデータを取り扱うことができる。

 名古屋城内のマップも、名古屋市交通局が網羅する各エリア内の土地情報も、ノートに自由にペンを走らせるように自在に操作でき、チャットポッドを通じて【編集データ】を共有できる。

 夜月はまず城内の情報を可視化するためにホログラフィック上で立体映像を展開し、全ての角度からそれを閲覧できるように各メンバーのチャットポッドへと互換ファイルを送信した。

 夜月がつけたマーカーはそれぞれのメンバーへの画面(チャットポッド内の保存領域)にもリンクされ、オンライン上で情報を共有できるクラウドシステムを経由し、立体的な情報間のやり取りをシームレスに構築していた。

 チームの連携には、情報共有の具体性と「タイムラグのなさ」が重要になる。

 「戦闘」という局面に於いては、その部分はより顕著に必要な項目となるだろう。

 『ゲルダ』はあらゆる局面に対して対応できる高度なオンラインシステムを有しており、地上で活動する天使の間では必須のツールとなっていた。

 夜月は作戦を各メンバーに伝達した後、真琴に「狙い」を定めるように指示をした。

 それは真琴の持つ能力と、彼女のギア、——「烈火の玉風」を、作戦の基軸に据えたからでもあった。

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