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第1話
しおりを挟むあたしは沙也に話さなくちゃいけないことがあった。でもそう単純な話じゃないんだよ。そうやって口を閉ざすことができれば簡単なのに。いっそなにも話さずにすべてを終わりにしてしまうのも有りかもしれない。
学校の授業が終わって、放課後のサイレンがなった後、沙也の自転車の後ろに乗りながら家路についた。何から話そう。あたしはこの世にいちゃいけない存在なんだっていうこと。一種の亡霊のような存在なんだということ。そのことをまずは伝えないといけないのかもな。最初から全部話そうか。きちんと最初から最後まで口を揃えて説明して、彼女に打ち明けたいことがある。
心の踏ん切りがついてるかって?そういうんじゃない。ただ洗いざらい話したいという気持ちが、確かな感情を押し出してるってわけでもない。だけどこのままじゃダメなんだっていうこと。このまま見て見ぬふりはできないってこと。あたしは自分に正直でいたい。ウソをついたってしょうがないしね。自分に正直でいればいるほど沙也という存在から遠ざかる気がするけど、後戻りはできないんだ。そこに対する言葉の重みとか、あたしの言葉とか全部、ひっくるめて、もう同じ場所にはいられないんだよ。あたしたちは。そのことを全部話さなくちゃいけない。思い出したんだ。自分の存在を。自分に課せられた運命を。
ねえ、ナナ。
沙也はあたしのことをそう呼ぶ。でもね沙也、そんな人間どこにもいないんだよ。あたしは最初からこの世界に存在してなんかいなかった。
木村ナナという人間が、この世界に生まれ落ちたのは2001年、3月。奇しくも沙也と同じ年、同じ日に生まれたあたしは裕福な家庭に育った。生まれた街も、環境も、まるで違う私たちだけど、こうして今同じ場所に引き合わされて、こうして同じ時間を共にしているのは、あたしが思うに運命だったんだ。時々そう思う。あたしと沙也は出会うべくして出会った。あたしという存在がこの世界でどれだけ呪われていたとしても、沙也に出会えたこと、そのことの純粋な出来事は、あたしにとって美しい瞬間だった。まるで奇跡のようにさえ思えたんだ。
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