SKY RUNNER -空の向こうへ続く風は-

じゃがマヨ

文字の大きさ
19 / 25
第1章 空の旅路へ

第15話

しおりを挟む


【第七班メンバー】


■ リーダー:ミリア・ブラスト

年齢:17歳/性別:女性/出身地:シヴァ大陸・辺境の浮遊要塞都市「アルスト=クラヴィス」
属性:氷(潜在)/武装:魔導槍《グラシエル・ランス》+軽量盾《フロストヴェール》
特徴:
 ・男まさりな口調で、ヤンキー気質。
 ・冷静沈着な戦術家。感情を表に出すことが少なく、常に状況を俯瞰している。
 ・元軍事都市の防衛部隊出身。スカイギルドに自ら志願して参加。
 ・高い機体操縦技能と空戦戦術理解力を持ち、若くして“リーダー適性”を与えられた。
 ・トレインとは試験前から何度か顔を合わせており、静かにライバル心を燃やしている節もある。

役割:班の牽引・進行管理・戦闘指揮全般。
キーワード:「命令ではなく、“導く”力で人を動かす」



■ ジーク・ハンロック

年齢:19歳/性別:男性/出身地:ボルカン大陸・雷都「オルド=ダスト」
属性:雷/武装:重式エアアーム《ヴォルトクラッシャー》
特徴:
 ・筋骨隆々、豪放磊落な雷属の戦士。力任せに見えるが、意外に仲間思い。
 ・元鉱山警備隊の副隊長。地形把握能力と破壊力に優れる。
 ・“空”への適応はやや粗削りだが、突発的な状況に強く、突破力は高い。
 ・トレインとは反対のタイプだが、意外とウマが合う。騒がしい兄貴分ポジション。

役割:前衛突破・障害除去・乱戦時の制圧。
キーワード:「風は読まん、でも感じるんだよ、こう……ビビッと!」



■ セラ・オルディアス

年齢:16歳/性別:女性/出身地:ルクス大陸・聖都「アレリア」
属性:光/武装:魔法帳《エリミナリア》/空間固定装置《クレアライト》
特徴:
 ・柔らかく穏やかな性格ながら、魔術に関しては極めて高い素養を持つ。
 ・浮遊島航路や神秘文献に詳しく、知識・分析・魔法解析の専門家。
 ・病弱な過去を持ち、肉体的にはやや劣るが、魔力制御と観察力で補っている。
 ・トレインにはやや警戒心を抱いていたが、彼の風の感応力を見て興味を持ち始めている。

役割:魔術支援・解析・情報収集。
キーワード:「見えない風にも、意味があるんです」



■ カイ・リューレンユク・ラングレー

年齢:18歳/性別:男性/出身地:ヴェントゥス大陸・低空都市「スルギア」
属性:風(操艇特化)/武装:双刃型操縦刀《エアロツイン》+補助機《スカイダンサー》
特徴:
 ・操縦特化型のエリートパイロット。風読みと空間制御に関しては抜群のセンスを持つ。
 ・スカイボード・エアライド双方に対応。飛行ルート最適化の名手。
 ・性格は気だるげで淡泊だが、任務になると一変して精密な動きを見せる。
 ・トレインの風感知力を高く評価し、内心「育てたい」気持ちを持っている。

役割:操艇統括・空中戦術補佐・回避誘導。
キーワード:「空は、読みきれないからいいんだよ」



------------------------------------------------------------


ノエルの声が静かに消えると、エア・ルーム全体に微かな振動が走った。
天井に浮かぶ風環(エア・サークル)が一段階低く回転し、床の石版が淡く光を帯びる。

「班別移動開始――指定ミーティングルームへ向かえ」

塔内の魔導音声が響いた瞬間、室内の壁面にそれぞれの班番号と名前が記された光の標が浮かび上がる。

「第七班、こちらです」
ギルド補佐官のひとりが、手を挙げて案内の導線を示した。

トレインは腰を上げ、風刻カードを確認しながら、その方向へと歩き出した。
視線の先には、すでに数人の人影が集まり始めている。

ミリア・ブラストが、真っ直ぐ立っていた。
その横には、銀髪の長身――ジーク・ハンロック。彼は大きな腕を組み、無言で他の参加者を見下ろしていた。
その斜め向かいには、緩やかに髪を束ねた少女、セラ・オルディアス。どこか気の抜けたような笑みを浮かべている。
最後に、一人だけやけに気だるげな様子で壁にもたれかかっている青年がいた。細身のフレーム、どこか空を見ているような眼差し。
——カイ・リューレン。

「全員、揃ったようだな」

ミリアが淡々と確認すると、補佐官が頷き、扉のひとつを開いた。

「こちらが、班ごとのブリーフィングルームです。必要な戦術地図と情報端末も揃っております。どうぞご自由に」

一礼し、補佐官が姿を消すと、重厚な扉が音もなく閉まった。

静寂が訪れる。

第七班、初めての“空域の密室”。

内装は質素ながら清潔で、中央には円卓があり、その上に試練用のホログラフ地図が投影されていた。
各自の名前が記されたパネルが、すでに配置されている。

トレインが席につくと、隣のジークがぐっと腕を組んだまま、ニヤリと笑った。

「おう、試験で見てたぜ。あんたなかなかやるな」

「……ありがとう。あんたも、派手だった」

「はっ、褒め言葉と受け取っとくぜ」

反対側では、セラが魔導端末を操作しながら穏やかに言葉を挟んだ。

「ここ、空気の流れがすごく安定してる……地下の風脈を利用してるのね。ギルドの制御術式、さすがだわ」

「……俺たち、空を走るんだろ?地上の話は今はいいよ」

壁際のカイが、ぼそりと呟く。

「でも大事よ?空に浮かぶものは全部、どこかの“根”を持ってる。忘れちゃだめ」

セラはやんわりと微笑む。
その横で、ミリアが淡々と割って入る。

「無駄話はあと。トレイン・フェザーネット、あんたが最後だった。——第七班、ここで初顔合わせだ」

彼女は視線を全員に向けた。

「私は、ミリア・ブラスト。基本的にはなんでもイケる口だ。戦闘と航法、両方任せてくれたらいい。
この班のリーダーとして、必要な采配は私が下す。異論は?」

「ねぇよ」

ジークが即答する。

「私は異論よりも提案が好きだわ」

セラが微笑む。

「……適当にやって、ひとまずは落ちないようにするよ」

カイが肩をすくめる。

ミリアは目を細めた。

「よし。じゃあ、まずは“島No.17”からのアプローチを確認する。
航路、地形、気圧変動、敵性情報……セラ、調べてくれ。
ジーク、突入ルートの選択肢と戦術配置、頼む。
カイ、風脈の経路スキャンと航行補助。
トレイン、あんたは全体の風の流れを感じて、異常兆候があったら即報告」

全員が、無言で頷いた。

風が、彼らをひとつにしようとしている。
この小さな部屋が、これから空を翔ける五人の“第一の甲板”になるのだと、誰もが感じ始めていた。

「……さて」

ミリアが立ち上がり、風の地図を指差す。

「まず、全体のルートを可視化するぞ」

ミリアが中央の円卓に備えられた魔導端末に手を触れると、ホログラフの投影が更新された。空中に浮かび上がったのは、5つの島とその周囲の空域を示す立体マップ。島々にはそれぞれ番号が振られており、薄いラインで航路が繋がっている。

「これが第七班の試験ルート。順に、No.17、21、08、03、そして最後に“封印指定”の島……」

「封印指定って、何が出るかまだ伏せられてるんだっけ?」

セラが指先でその最後の島を回転させながら尋ねた。

「そう。ギルドの規定で、試験中は非公開。到達時に“開示”されるらしい。つまり、どんな課題かも、その場になるまでは不明だ」

「試されるのは、臨機応変さってことか」

トレインが地図をじっと見ながら呟く。

「あるいは運かもね」

カイが壁にもたれたままぼそりと言う。

「でも運って、結局は“対応力”の別名だし」

「……言い得て妙ね」

とセラが静かに頷く。

ジークが腕を組み直して、地図を指差した。

「で、最初の島——No.17。ここは“風食地帯”って記録されてるな。空域の気流が激しく崩れる場所だ。
たぶん、試されるのは“飛行安定性”と“探索”。俺が先に降りる」

「私もついて行くわ」

セラが手を挙げた。

「植物の密集地みたい。あたし、感知魔法も使えるし、地質や魔力流の分析は得意」

「よし、ふたりで初動班を組んでくれ」

ミリアが頷く。

「僕は、風脈のサポートをしながら上空に残るよ。島の周囲の流れが読めれば、次の島へのルートが組みやすい」

カイの声は淡々としていたが、その内容は正確だった。

「……カイ、お前本当は結構考えてるだろ」

ジークがふと笑う。

「見た目、やる気なさそうなのに」

「そう見せてるほうが、敵にも味方にも余裕ができるからね。ほら、こうして今も、ちょっとだけ安心したでしょ?」

ジークが鼻を鳴らし、笑いをこらえるように肩を揺らした。

トレインも自然と笑みを浮かべる。

「……なんか、意外とバランスいいかもな、この班」

「意外、じゃなくて必然よ」

ミリアが一言。

「試験の班分けはランダムじゃない。“風の導き”と、“ギルドの意思”が混ざってる」

「そういうもんなのか……」

トレインがぽつりとつぶやくと、「そういうものなのよ」セラが柔らかく重ねた。

「きっと、この出会いも試練のひとつ」

その言葉に、ふと空気が静まる。

それぞれが互いに視線を交わし、確認するようにうなずいた。

ミーティングルームの窓の外では、風柱が青白い螺旋を描きながら、天頂へと吹き上がっている。

ここから始まる試練。

5つの島、未知の空域、そして“封印された最後の島”。

けれど今、五人の間には確かに“風”が流れ始めていた。

それはまだ微かな、けれど確実な“旅団の胎動”だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

合成師

あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。 そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...