夏色グラビティ 〜この声がキミに届くまで〜

じゃがマヨ

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昨日までの世界

第13話

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机の引き出しを探ると、いくつかのアルバムが見つかった。

"高月家の思い出"と書かれた表紙。

進也は、静かにページをめくった。

──そこには、家族の写真が並んでいた。

幼い頃のさやか。
兄の直哉。
父親の雅弘。

そして──

母親。

進也は、母の姿をじっと見つめた。

──穏やかな表情の女性。

だが、違和感があった。

──写真が、ある時期から"母だけが消えている"。

最初の数ページには、母親がいる。
だが、あるページを境に、"母親の姿だけがなくなる"のだ。

まるで、意図的に存在を消されたかのように。

「……」

進也は、無意識のうちにページをめくる手を止めていた。


アルバムを調べたあと、進也は母親の部屋だった場所を探すことにした。

──現在は、物置になっていた。

父親が「もう使わない」と言っていた部屋。

進也は、その部屋の奥にある古い机の引き出しを開けた。

──そして、そこに封筒を見つけた。

封筒は、やや黄ばんでいた。

手書きの文字がある。

「高月 雅弘へ」

──父親宛の手紙。

進也は、喉の奥が詰まるのを感じながら、ゆっくりと封を開けた。


「雅弘へ」

「この手紙を読んでいる頃には、私はもう家を出ています」

「突然いなくなってしまって、ごめんなさい」

進也は、息を呑んだ。

やはり、母は"何も言わずに消えた"わけではなかった。
父親が言っていた「置き手紙はなかった」という話も、違っていたのか?

「私は、このままここにいることができません」
「でも、子供たちのことは、お願いしたい」

──子供たちのことを"お願いする"?

「さやかには、まだ言えないことがある」
「いつか、彼女が本当に自分の夢を見つけた時、その時こそ伝えるべきことがある」

進也の心臓が高鳴る。

──"伝えるべきこと"?

「私は、ずっと歌が好きでした」

進也の目が、驚きに見開かれた。

──母親も、歌が好きだった?

「でも、それが幸せにつながるとは限らない」
「さやかには、自分の道を見つけてほしい」

──何を意味している?

進也は、手紙を強く握りしめた。

(母親は、何を"隠していた"んだ……?)


進也は、最後の一文を読んだ。

「さやかが、本当に歌いたいと思った時、その歌を"誰のために"歌うのか、考えてほしい」

手が、震えた。

──"誰のために"?

進也は、ノートの中に書かれていたさやかの言葉を思い出す。

「私は、歌で誰かを笑顔にしたい」

──"誰か"とは、一体、誰だったのか?

進也の胸の奥に、得体の知れない不安が広がっていく。

(俺は……もっと知るべきだ)

母親が、何を隠していたのか。
さやかが、本当に歌いたかったものは何なのか。

進也は、決意した。

(もう少し、この手紙を調べよう)

"何か"が、まだ隠されているはずだ。
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