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まだ、寝てたいんだけど

第33話

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 ザァァァ

 ザザーーーーッ…


 海の音が近くなる。

 耳のいちばん近いところで、泡が弾ける音が聞こえた。

 透明な水の色が、白波の向こうに消えていく。

 女の投げる球は次第に速くなっていった。

 パシッ

 パシッ

 という音が、しきりに高くなっていって。


 

 「いつの話や?」

 「なにが?」

 「千冬から教わったって」


 女のフォームは、アイツに似ていた。

 ハッとなったんだ。

 深いテイクバックに、オーバーハンドの投球フォームを見て。


 「昔のことや」


 だから、それがいつなんだよ。

 昔って言ったってどれくらい前だ?

 小学生の頃…とか?


 「ピンポーン!」

 「…あり得ん」

 「ん?」

 「俺はお前と会ってない」


 女は「そうやな」と、軽くあしらうように呟いた。

 とにかく腑に落ちなかった。

 教わったって、小学生のいつ、どこで?

 学校とか?

 それとも別の場所で?

 でも、他に会える機会なんてなくないか?

 アイツは、塾にも行ってなかったし。
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