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第3章 『エルフ国編②』

第2話 「魔王様、元魔王と邂逅する」

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 姿を現したのは、ひとりの女魔族だった。

 露出が高めなローブをまとい、どことなく緩んだ瞳が印象的だったが。
 なによりも目を惹いたのは、その女が、宙をふよふよと飛んでいたことだろう。
 まあ、浮遊自体は別に不思議なことではなく。
 最上級に位置する高難易度の魔法というだけなのだが、この魔法は普通の魔法とは違い、術者との相性も関係してくるために、使用できる者はかぎられてしまう。
 白エルフ最強の魔導士であるドラギアでさえ、相性が悪いせいで、使えないのである。


 高難易度の浮遊魔法を難なく使うこの女の名はネミルといい……私が魔王の座に就く前まで、魔王の座にいた女である。


 私は目の前で浮遊する女を警戒して見据えながら、過去の出来事を思わず思い出していた。
 場の流れで周囲にお膳立てされ、気づいた時には、彼女と魔王の座を巡る戦いを繰り広げた時のことを。


「にゃはは~! やるねー君! いいヨいいヨ~♪ なんかもう、君になら魔王の座を譲ってもいいかにゃ~♪」


 その当時は、まだ私には本来の力があり、そして全力を尽くして戦った。
 にも拘わらず……その私を相手にしても尚、彼女には余裕があった。
 彼女は……本気を出していなかったのだ。


「正直言うとネ? 魔王とかいう堅苦しいの苦手だったんだよネ~♪ でも適任者がいなくってさ~仕方なくって感じ? でも、君なら安心できるかナ? ってことで──はい! 今日から君が魔王ネ! おめでと~! わ~パチパチ! 私も肩の荷が降りてパチパチ~♪」


 どこまでも明るかった彼女の態度が、いまでも鮮明に思い出せた。
 明るいというか……軽薄という言葉が、思い浮かぶが。

 そして私に魔王の座を後、彼女はふらりとどこかへ姿を消しており、私は今日、久しぶりに彼女の姿を目の当たりにした、という感じだった。


「んもう! 元魔王とか、そーいう堅苦しい呼び方、やめてくれないかナ? くすぐったいや」


 元魔王の女──ネミルが、すねたように頬を膨らませてきた。
 年齢不詳の彼女の外見は幼さが目立ち、その外見も相まってその態度は非常に可愛らしかったが……
 私は、苦い表情を隠せなかった。


「では、ネミル殿。いつから私に付きまとっていた?」
「相変わらずツレないネ~。頭が硬いのは治ってないのかにゃ? クレアの短所だネ♪」


 意味もなく空中でくるりと回った彼女は、その緩んだ目で私を見てくる。


「ちょうどお散歩中にクレアちゃんを見つけてネ~。クレアちゃんの”噂”は耳に入ってたから、ちょっと気になってさ~。っていうかさ? そっちの精霊ちゃんは私に気付いてたっぽいケド?」
「……アテナ。そうなのか?」
「はい。ちょうど黒エルフ領に入った頃合いだったかと」
「なぜ言わなかった?」
「聞かれませんでしたので」
「…………ああ。お前には、があったよな」
「素直さがモットーですので。、嘘は吐きません」
「まるで聞かなかった私が悪いみたいな言い方だな?」
「どう捉えるかは、クレア様の自由かと」
「……むう」


「アハハ~♪ やっぱ近くで見ると、クレアちゃんと精霊ちゃんのやり取りは面白いネ~」


 アテナを召喚したのは私が魔王として戴冠した後のため、彼女とアテナに面識はないのである。
 名前で呼ばれないことが気になったようで、アテナが抑揚のない瞳を浮遊する陽気な女へと向けた。


「ネミル様。私は”アテナ”と申します」
「そっか~。アテナちゃんネ! オッケーオッケー。覚えたよン!」


 再び空中でくるりと回る彼女へと、私は苦い表情をさらに苦くして……問うた。


「ネミル殿。私を……糾弾しに来たのか?」
「んにゃ? なんでそーいうこと言うのかにゃ?」
「……私が、貴女から譲り受けた魔王の座を、あっさりと奪われたからだ」
「ああ~~そーいうことネ」


 宙で胡坐を組んだネミルは、あっさりと答えてくる。
 あっけらかんとした口調で。


「魔王とかサ、ぶっちゃけ、どーでもいいんじゃないの?」
「……っ」
「魔王じゃないと、君は君じゃなくなるの? ってカンジなんだケド」
「いや……そういう問題じゃ……」
「クレアちゃん。君の欠点は考えすぎることだネ」
「…………」


 どこかで同じことを言われた気がする私は、思わず言葉を無くしてしまう。
 ちょいちょいっとアピールしてくるアテナのおかげで、すぐにどこで言われたか思い出したが。


「頭が誰になろうがさ、案外、国ってのはうまく回るもんだよ?」
「……だが。ブレア新魔王が優秀な王かは別の問題のような」
「だったら、クーデターが起こるだけっしょ」
「……っ」


 私は言葉に詰まる。
 あれやこれ考えていた私が、まるで馬鹿みたいじゃないか。


「私は……魔王の座に固執していたのだろうか……?」
「良くも悪くも、真面目すぎるからね~クレアちゃんは。私みたくもっと気楽に生きないと、そのうち疲れちゃうよン?」
「……貴女はもう少しだけ、真面目になったほうがいい気もするが」
「にゃはは~! 真面目ちゃんは長生きできないからネ~。私はもっと長生きしたいからぁ、ム~リ~!」
「貴女というひとは……」


 宙をくるくる回る陽気な彼女に、私はやれやれと溜め息。
 どうも彼女と話をすると、こちらのペースが乱されてしまう。
 

(長生きって、このひとは年齢不詳だからな……下手をしたら、ドラギアよりも生きてるんじゃないだろうか……)


 ネミルという女魔族は、いろいろと謎が多かった。
 彼女と接する機会もそれほどなかったために、私にとって彼女の印象は”胡散臭い”の一言だった。

 彼女は私が生まれる前からすでに魔王職に就いていた。

 建国時から今日まで魔王はすでに何代も変わっているものの、初代の魔王の名前が”ネミル”であり、数千年という時を経て、気まぐれで再び彼女が魔王に返り咲いた、という噂がまことしやかに囁かれていたりする。


(どんだけの長寿だって話になってくるがな)


 同姓同名だとは思うが……。
 魔族の寿命は人族よりは多少長いものの、せいぜいが100~110歳前後であり。
 長寿であるエルフ族ですら、数百歳が限界と言われているのだ。
 だからこそ、もしネミル目の前の女が魔族国の始祖本人なのならば、ある意味では、とんでもない存在ということである。


「まあなにはともあれ? 元気そうでよかったよ、クレアちゃん」
「……私を心配してくれていたのか?」
「まあね~。気に入った子が困った状態になってるって聞いたら、そりゃ心配するっしょ」
「気に入ってくれていたのか」
さんは好きだしネ」
「……そう言われると、さすがに恥ずかしいな」
「にゃはは~! ただまあ、クレアちゃんはもう少し肩の力を抜いたほうがいいと思うよン? これ、年長者からのありがたーい助言ね~」
「……いくつなんだ? 貴女は」
「ヒ・ミ・ツ! 乙女はね、秘密の数だけ綺麗になるんだよ~♪」
「理屈がわからないんだが……」
「んもう! 細かいことばっか言ってると、顔に小じわが増えちゃうよ!」


 少しだけ眉間にしわを寄せるネミルだが、言うほど嫌がっている様子はなく。


「ま、いいや! とりあえずさ、しばらくの間は暇つぶしでさ、君のこと見させてもらうネ♪」
「いやいやいや。なに世間話みたく言ってくるんだ? 私のプライバシーはどうなる?」
「んー……? をしている時は、ちゃんと気を遣って席を外すから安心していいよ。だから気にしないで──なっていいからネ?」
「……最初に表現を控えて言ったんなら、最後までそれを貫いてくれ……」
「にゃはは~」


 愉し気に笑ってくる彼女を前に、私は疲れた息を吐く。


(このひとは……苦手だな)


 私の気持ちを知ってから知らずか、ネミルはニカっと白い歯を見せてきた。


「ってことで! これからしばらくの間、よろしくね~♪」


 一方的に言うや否や、ネミルの全身がだんだんと色を無くしていく。


「ちなみに私ってば、こう見えてけっこう人見知りでさ! だから慣れ合いとか苦手でネ。影からこっそりと見させてもらうよン♪」
「……そういうのは、ストーカーと呼ばれることを知っているか?」
「にゃはは~! 私は違うよ~?」


 その言葉を最後に、彼女の姿は完全に見えなくなっていた。
 意識を集中するも、今度は気配すら感じ取れない。


「……アテナ。まだ彼女は近くにいるのか?」
「申し訳ありません、わかりません。今度は、ネミル様も本気で隠れられたようです」
「そうか……」


 嘘は言わないと言った以上、アテナが感知できないということは、もう私にも完全にわからないということだろう。
 視線すら感じさせないのだから、驚嘆ものである。


「……なんというか、いつ見られているのかわからないと、こう……そわそわしてくるな」
「そうですね。これではもう、クレア様と私の”イケナイ秘密の遊び”ができませんね」
「……いつそんな遊びをしたのか、まったく記憶にないんだが」
「おやおや。クレア様は恥ずかしがり屋さんですね。私に”あんなこと”をさせておいて」
「頼むから……いまは、意味もなく私を貶めないでくれないか? 見ているかもしれないネミル殿が真に受けたらどうするんだ」


 構わずに平常運転のアテナに、私は嘆息ひとつだった。



 ※ ※ ※


 その後私たちは、これといって何事もなく、街道を進んだ先にあるジャミンという街に到着していた。
 中規模程度の街であり、これといって特産品もないようで、いたって普通の街である。

 この街でも男たちから好奇の眼差しを向けられてくるのだが……気にしても仕方がないので無視をする。

 さすがに子供に石を投げられることもなく。
 私は修理屋に馬車を預けてから、アテナを伴って冒険者ギルドへと。

 黒エルフ以外の多種族の姿も見受けられ(さすが白エルフ族はいないが)、私が入った瞬間に場の空気がわずかにざわめいた。
 あからさまな下心の眼差しや、人族からの敵意の眼差しがあったものの、さすがにギルド内でもめ事を起こす気がないようで、誰も行動に移すことはなかった。


「やはりというか、さすがに魔族の冒険者はいませんね」
「まあ……そうだろうな」


 黒エルフも白エルフ同様に精霊を特別視しているので、その精霊を使役する魔族は受けが悪いのだ。
 そのため、よほどの物好きでもない限り、魔族がエルフ族国を訪れることは滅多にないのである。


「クレア様は物好きということですね」
「……まあ、否定はしないさ」


 室内にいる者たちの様々な視線を受けながらも、もはや大して気にしない私は、真っすぐに受付カウンターへと。


「この国での冒険者登録をしたい」


 私に対応する受付嬢は、じろりと私を観察した後、オーブを出してきた。


「では審査致しますので、こちらに手を」
「わかった」


 手を乗せるとオーブが光だす……その色は、青。


「ブラックリストには載っていないですね。では、他国で発行された冒険者カードをお持ちならば、ご提示ください。既存のランクと同等のカードを発行いたしますので」


 白エルフ族国の冒険者ギルドでも同じことを言われたなと思いつつ、私は冒険者カードを提示する。
 受付嬢の眼差しが一瞬だけ険しくなったのは、私が提示したカードの発行元が白エルフ国のものだからだろう。


「では、Cランクのカードを発行しますので、少々お待ちください」


 受付嬢はそう言うと、奥の部屋へと姿を消した。

 世界樹の件があるまでDランクだった私は、その世界樹の件での活躍が評価され、ランクがひとつ上がっていたのである。


「クレア様、今後の方針は?」
「とりあえずは、普通に依頼をこなしていく感じだな」
「王城に行かないのですか? そのほうが手っ取り早い気がしますが」
「いまの私は魔王じゃなく、一介の冒険者に過ぎないからな。簡単に王に会えるわけがないだろう?」
「そう言いつつ、実際はあまり会いたくないのですよね?」
「……まあ、な」


 黒エルフ王から熱烈な求婚を受けていた私は、正直なところ、あの男とは会いたくはなかった。
 外見こそ好青年然とした容姿ながらも、性格に少し難があるのだ、あの男は。

 当時は私のほうが強かったこともあり、しつこい求婚を跳ね除けられていたのだが……
 力関係が逆転してしまった以上、あの男が強引に迫ってきたら、いまの私ではどうなることか。

 前にドラギアに告げた”リスク”とは、このことを指していたのである。


(だが、私も世界樹の一件は気になってしまったからな)


 下手をしたら、白エルフ族国は壊滅的な打撃を受けていたのだ。
 そして、あの黒エルフが最期に呟いた切れ切れの言葉。
 別に魔族の私としては、白エルフ族国がどうなろうがそれほど興味はないのだが、これといって目的のない旅ということもあり、気になったので調査してみよう、という程度なのである。


(それにいざとなれば、森の魔女とドラギアから貰った魔道具もあるしな。逃げるだけなら難しくはないだろう)


 そんなことを思っていると、私の全身を見やるアテナが淡々とした口ぶりで言ってきた。


「クレア様は何かと目立ちますからね。魔族が嫌煙するエルフ領においては尚更でしょう。ですので、クレア様が自国領にいると気づけば、何かしらのアクションを起こして来るのは間違いないかと」
「……まあ、それが狙いでもある」
「やれやれ。ご自分がモテることを前提にした作戦とは。ずいぶんとご自分の事を高評価なさっておられるようですね。このアテナ、びっくりです」
「……私がナルシストみたいな言い方はやめてほしいんだがな」


 わざとらしく驚いた振りをするアテナに私が苦笑いをしたところで、受付嬢が戻ってきた。


「こちらが、黒エルフ族国での冒険者カードとなります」
「ん。確かに」


 こうして私は、黒エルフ族国でも冒険者として動けることになるのだった。



 ※ ※ ※

 ※ ※ ※



「……ん。ここは……」


 目を覚ましたダミアンは、ベッドに寝かされていた。
 確認すると、どうやら手当てを受けているようで、脇腹に包帯が巻かれていた。


「──っう……」


 だが魔法による治療や解毒は行われていないようで、彼は脇腹からの鈍痛に顔をしかめる。


(俺は、あれからどうなったんだろう……?)


 治療を受けていることから、あの黒ずくめ連中に掴まったということはなさそうだが……
 あるいは、情報を聞き出すまでは死なせない、といった理由かもしれないが。


(身体が重い……毒が抜けきってないのか……)


 やはり、自分はあの連中に掴まったのかもしれないと思った矢先。
 勢いよくドアが開かれたかと思うと、ひとりの狼少女が入ってきた。


「あ!? ようやく目が冷めたんだね!」
「……えーっと。君は……?」
「ウルだよ!」
「……いまって、どういう状況なんですか」


 警戒を怠らないダミアンは、思わず敬語になってしまう。
 そんな彼の態度をまるで気にしていないようで、狼少女──ウルがあっけらかんと説明してきた。


「ほんと、驚いたよ。アルペンと近くの街に買い出しに行っての帰り道でさ、君がよってたかって虐められてる現場に出くわしてさ。咄嗟に助けに入っちゃった」
「……そういえば。意識がなくなる前に、誰かの声を聞いたような……」


 ということは、ここは彼女の家なのだろうか? と思ったダミアンは、すぐに警戒感を強めた。


「まずい。俺と関わりがあることを連中に知られたら、無関係の君まで巻き込んでしまう……!」
「それは大丈夫ですよ」


 答えたのはウルではなく、室内に静かに入ってきたローブの女性だった。


「魔獣用に持っていた目くらましの魔道具を使ったので。だからあの怪し気な人達が、私の家に来ることはないと思います」
「えーっと、あなたは……」
「名前はアルペンっていうよ! こう見えてもこのひとさ、森の魔女なんだよ!」


 元気良いウルの説明を聞いたダミアンは、ようやく彼女達が何者かを理解した。


「クレアナード様が言っていたのは、あなたたちのことなんですね」
「えーー!!!? もしかして君って、クレアの知り合いなのっ?」
「驚きですね。世間は、意外と狭いもんですねー」


 お互いの自己紹介を簡単に終え。
 ウルから聞いた話だと、どうやら彼女はいま、森の魔女の厄介になっているらしかった。
 理由を聞くと、こんな森の中でひとりきりは寂しそうだったから、ということだった。
 森の魔女はどこか嬉しそうにウルを見ており、迷惑とは感じていない様子。


「っう……」


 ベットから降りようとするも、ダミアンは眩暈を感じてしまい、思わずバランスを崩す。
 咄嗟に駆け寄ったウルが彼の身体を支え、再びダミアンはベットへと。


「無理しちゃダメだよー? 君はあれから3日間眠りっぱなしだったんだしさ。身体が弱ってるんだから」
「え……っ、俺は3日間も寝てたんですか……!?」
「毒の影響でしょうね」


 森の魔女がダミアンの腕をとって脈を計る。


「ごめんなさいね、ダミアン君。私は治療系の魔法を使えないですから、あなたの傷をすぐに完治させることができなかったんです」
「……いえ。こうして命を救われただけでも、とても感謝しています」
「ねえねえ! ダミアンくん!」


 ウルが瞳をキラキラ輝かせながら、ダミアンへと身を乗り出してきた。


「クレアのこと聞かせてよ! あたしと別れてからどんな大冒険したのかさ、すっごい気になるよー!」
「大冒険というか、厄介な事があったのは確かだけど……」
「おーおーおー! やっぱクレアはすごいんだねー! 聞かせて聞かせてー!」
「ウルちゃん、あんまり無理言わないでください。ダミアン君はまだ病み上がりなんですから」
「え~~~~でもさ! やっぱ気になるよー」


 がっかりしたように項垂れる狼少女を横目に、ダミアンは拳を確認するように握り、ゆっくり開く。


(力が入らない……これじゃ、当分はまともに動けない、か……)


 早くクレアナードの下に戻りたい気持ちもあったが、先に雇い主マイアスとラーミアに報告もしなければならい上に……気になることもあったりする。

 なぜ、自分たち密偵が特定されたのか。

 可能性としては、こちらの陣営に内通者がいるということだろうか。
 だとしたら、そのことも含めて、雇い主に早く報告しなければならないだろう。

 自分の状態を確認するダミアンの様子に、森の魔女が優しい口調で言ってくる。


「君の体調が回復するまでは、この家を自分の家だと思ってゆっくり休んでください」
「……ありがとうございます。本当に助かります」
「いえいえ。意識が戻ったようですし、お腹も空いてるでしょう? でも病み上がりだから、消化のいいお粥で我慢してくださいね?」


 森の魔女は柔らかい微笑のまま退出。
 ウルはウルで、未練がましい視線をダミアンへと向けており。
 ダミアンは、小さく息を吐いた。


「やることもないし。クレアナード様の活躍、話すよ」
「お~~~!」


 瞳をキラキラさせたウルが、歓喜の声を上げていた。

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